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少女と魔族と聖剣と  作者: ぺんぎん
第十七章

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ゲーム

 

 ダズマは顔をしかめている。そしてノマへ視線を送った。


「ノマ、大丈夫なんだろうな?」


「セキュリティは完璧です。問題はありませんな」


「ならば良い。では姉上。戦おうか。私の一方的な攻撃になるだろうが、少しは楽しませてくれ」


 少しだけダズマが不安そうに見えた。


 おそらくだけど、ダズマは魔力供給の原理を知らないんだろう。だから不安になってノマに聞いた。


 私も原理は知らない。でもアビスちゃんを信じてる。フェル姉ちゃんが言った通り、五分ですべてを解決してくれるはずだ。


「ならゲームをしよう。五分以内に私を殺せるかどうかのゲーム。それ以上時間を掛けたら貴方が死ぬ。弟だからって手加減はしないから本気で来た方がいい」


 ダズマは少しだけ驚いた顔をしたがすぐにニヤリと笑った。そして手に持った魔剣で攻撃してくる。


 最初の攻撃よりもはるかに強くて速い。でも、それだけだ。私を殺すのは無理。


「姉上。防御するのはいいが、本当に魔力の供給が切れると思っているのか?」


「疑う理由はない。すでにカウントダウンは始まっている。後四分だけど、余裕をみせていてもいいの?」


 まだまだ手加減していると思う。でも、この程度なら今より倍強くなったとしても私を殺すには至らない。


「根拠のない自信は持たない方がいい。その方が絶望しないぞ?」


「それはそのまま貴方に返す。自信があるなら時間が経つまで攻撃しなければいい。貴方は不安に思っている。もしかしたらと言う気持ちがあるから、時間内に私を殺そうとしている」


 さらに攻撃が荒くなった。でも、逆にさばくことが楽になった。力任せの攻撃なんて私には効かない。


 一つ一つ丁寧に攻撃を防御する。それを続けるだけ。


 魔力が供給されなくなればダズマの身体が治ることもない。アビスちゃんからの連絡が来るまでこれを続ければ私の勝ちだ。


「あと三分」


 大体の時間だけど、あとそれくらいだろう。大して怖い攻撃でもないから時間を長く感じることもない。ソドゴラで勉強している五分の方がもっと長かった。


 ダズマが少しだけ嫌そうな顔をしてからバックステップで距離をとった。


「仕方がない。ここからは本気でやらせてもらおう。時間を気にするほどではないが、これはゲームだからな。五分以内に倒せなければ私の負けになってしまう。『身体ブーストオメガ』『超高速演算起動』『虚空領域接続』『未来予知展開』『限定世界規則改変』」


 魔素の身体を持っていると使えるというスキルだ。インテリジェンス系の相手が何人か使っていた。でも、似ているようで似ていないスキルだ。その上位スキルなのかもしれないけど、未来予知って言った? レオって人も使っていたけど未来が見えるってこと?


 少しだけ警戒しよう。


 そう思った直後にダズマが目の前にいて剣を振りかぶっていた。


 防御しようと思う前に体が反応したんだと思う。その攻撃をフェル・デレで受けた。


 でも、強い。ふんばっていられない。というよりもこれは受けたままじゃ駄目だ。衝撃を逃すために後ろへ跳ぶ。


 力に逆らわず後方へ。


 あまりにも急だったから防御が完璧じゃなかった。それに攻撃が強いから受けたフェル・デレの腹部分が私の顔に当たった。口から血が垂れてきたことが分かる。


「どうだ? 残り三分、いや二分か。たったそれだけの時間だが、私の攻撃に耐えられると?」


 ダズマがニヤニヤしながらそんなことを言った。


 確かに急すぎて攻撃を受けきれなかった。でも、この程度で私に勝った気になっているならそれまでだ。


 ダズマの方を見つめながら口元の血をなめとってから床に吐いた。


「それが本気ならやっぱり貴方は私に勝てない」


「フッ、それは負け惜しみか? 今の一撃が連打できないとでも?」


「連打でも同じ事。私をあの程度しか吹き飛ばせないなら、大して変わらない」


 この程度の攻撃ならミノタウロスさんの方が強かった。速さだってアラクネ時代のルノス姉さんの方が速い。それでもあの頃は私が子供だったから皆は本気は出していなかったはずだ。


 アビスで戦った皆の方がもっともっと強い。あれから三年以上戦っていないけど、今なら分かる。皆は私のために相当手加減をしてくれていた。


 あそこにいる皆と比べたら、ダズマなんてランキング外だ。


 それに私にも勝てない。残りは二分もない。なら少し本気を出そう。


 改めてフェル・デレを構える。


「こちらも本気を出す。【天上天下】【唯我独尊】【三界皆苦】【吾当安此】」


 制限時間は三分。でも、アビスちゃんが魔力の供給を止めるまであの二分。信じているからこのユニークスキルを使える。


 ダズマが魔剣を振りかぶって攻撃してきた。でも遅いし、弱い。


 さっきとは違って吹き飛ばされることもない。攻撃の衝撃で床にひびが入っているけど、それだけだ。


「馬鹿な! なぜ私の攻撃を受けられる!」


「理由は分かっているはず。さあ、後一分。タイムリミットはすぐそこ。もっと本気を出すといい」


 単純に私よりも弱いという理由だ。それを理解したんだろう。ダズマの攻撃がさらに荒くなった。強いし速いけど、それだけだ。


 それ以上に強く速い私の防御は崩せない。オリスア姉さんならこの状態の私にだって勝てるのに。


 さっきダズマが使っていたスキル……未来予知って言ってたけど本当かな。


「貴方と違って未来予知はできないけれど、どんな風に見えているの? 私が倒れている未来は見える? それとも貴方が倒れている未来が見える?」


「くそ! くそ! くそ!」


「王族の言葉として相応しくない。恥を晒さないで」


 ダズマはまともに剣の修行なんてしたことがないんだろう。知識も経験もすべて誰かの物を奪っただけ。自分で考えて手に入れたものがないからこの程度なんだ。


 少しだけ同情する。私と同じような境遇だったらもっと別の人生があったはずなのに。それこそ私なんかよりもはるかに王の器があったのかもしれない。


 でも、そうならなかった。私の暗殺はラーファがやったことだ。でも、疑問に思うことだってできたはずだし、何年か経った後にそれが間違いだったと思えることもできたはず。でも、そうはしなかったし、今は私を殺そうとしている。


 そう思うように教育されたのかもしれないけど、あまりにも悲しい存在に思える。


 ……同情はここまで。私を殺せれば幸せになれたかもしれないけど、今の状況がダズマの未来を物語っている。仮定の話なんて意味はない。


「アンリ、アビスから連絡があった。もうダズマへ魔力は供給されない」


 フェル姉ちゃんの声が聞こえた。


 さすがアビスちゃんだ。五分よりも短い。頑張ってくれたんだろう。


 そしてダズマは驚きの顔だ。


「ノマ! どういうことだ!」


「どうやら相手の方が優秀だったようですな。一日は掛かると思っていましたが、まさか本当に五分で終わらせるとは」


「馬鹿な……! いや、嘘だ! コイツらはハッタリを言っているだけだ!」


 ダズマは慌てているけど、ノマがずいぶんと軽く言っている。どうでもいいような言い方だ。もしかしてまだ奥の手がある……?


「フフフ、ハハハ! 姉上! あの魔族は嘘を言っている! 私を殺そうとすれば国民が死ぬぞ!」


 まだそんなことを言っている。味方の言葉を信用できないなら味方でもなんでもないのに。ダズマとノマにはそんな信頼関係もないんだ。


「私は信じているけど、貴方がそう言うなら試してあげる」


「試すだと? 試して国民が死ぬかもしれんのだぞ!」


「【劣化・紫電一閃】」


 かなり力を制限した紫電一閃。ダズマの右頬を少しだけ斬る。これなら魔力の消費があったとしても平気だろう。そんなことをしなくても魔力は供給されないけど、ダズマに分からせる。


 魔素の身体だから血は出ないけど傷は治らなかった。つまりそういうことだ。


「馬鹿な! 馬鹿な! なぜ治らない! なぜ魔力が供給されない!」


「これで分かった? 貴方に魔力は供給されない。ゲームは終わり。五分以内に私を殺せなかった貴方の負け。ルールに則って貴方を殺す」


「お、おのれ……!」


 恐怖に怯えているのかダズマが後退する。でも、逃すつもりはない。


「止めよ」


 私とダズマの間にラーファが割り込んできた。


「アンリ、そしてシャスラ。マユラの暗殺を命じたのは妾じゃ。この者は関係ない」


 ……この者? 自分の子供であるダズマをそう言った?


「復讐するなら妾にじゃろう?」


「貴方にも復讐するけど、貴方の息子も生かしておくつもりはない」


「怖いの。じゃが、できるかの?」


 背筋がぞくっとした。直後にラーファの背中側から大量の鎖が飛び出して襲ってくる。


 ユニークスキルのおかげで助かった。反応が遅れたけど後ろに躱せた。でも、そろそろ時間が危ない。ここで動けなくなったら危険だ。ダズマを殺してはいないけど、今のうちにスキルの使用を止めよう。


 それにしてもこの鎖はなんだろう? たぶん、魔法で作られた鎖だとは思うんだけど、それがこの玉座の間に大量にあふれ出して触手のように動いている。


 ダズマとノマを守っているように動いているからラーファの意思で動かしているとは思うんだけど。


「ノマ、その者を連れて逃げよ。妾は奥の手を使おう」


「……よろしいのですか?」


「構わぬ。良い夢を見た。夢はいつか覚めるものよ。だが、夢の果てに多くの者を道連れにするつもりじゃ。巻き込まれる前にお主の拠点へ逃げるが良い……いままで大義であった」


「勿体なきお言葉。では、いつかまたお会いしましょう」


「……そうじゃな。いつかまた会おう」


 ラーファとノマが会話をしているけど、何を言っているのか分からない。今生の別れのような言葉だし、ダズマが蚊帳の外だ。それに奥の手?


「は、母上! 何をおっしゃっているのですか! 奥の手ですって? ノマ、何のことだ!」


 なぜかラーファは息子であるダズマの方を見ない。それほど緊迫している状況でもないのに言葉もかけないなんて。それに一瞬だけフェル姉ちゃんを見た?


 直後にダズマが意識を失うように倒れた。


 背後にいたノマが何かをしたみたいだ。そして倒れたダズマを肩に担ぐ。


 まただ。ノマはフェル姉ちゃんを見ている。


 ラーファもノマも私よりフェル姉ちゃんを気にしている?


 あれ? ノマの姿が薄くなって……?


 フェル姉ちゃんが何かに気付いたのか、動こうとしたらラーファの鎖が邪魔をした。


 次の瞬間にはノマもダズマもその場にいなかった。まさか転移魔法?


 しまった。まんまと逃げられた。早く追わないと。ヴァイア姉ちゃんじゃあるまいし、転移魔法はそこまで遠くに行けないはずだ。


「お主ら全員、妾が相手をしよう」


 大量の鎖がこの部屋にいる全員を襲うように向かってきた。


 ラーファはダズマのためにここに残ったんだろう。それも命懸けで。


 その気持ちは何となく分かる。私の母マユラも命懸けで私を助けてくれた。だからと言って手心を加えるつもりはない。


 ここで禍根を絶とう。


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