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少女と魔族と聖剣と  作者: ぺんぎん
第十七章

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救援要請

 

 王都マイオスまであと二日というところの町で進軍を止めた。


 これ以上近づくなら王都での戦いを意識しないといけない。英気を養ってもらうためにも今日の夜はここで宴会だ。でも、それは戦ってくれる人達の話。幹部の皆は全員が集まって最終的な意識合わせをする。


 それにアビスちゃんが調査したという結果を聞くことになっている。


 どんな結果になったのか聞くのが怖い。


 今までフェル姉ちゃんの力を借りることを渋ってきた。でも、絶対に必要になったということになれば堂々と救援を依頼できる。調査結果次第ではあるけれど、必要となったら私は大喜びしそう。


 皆が空き家に集まっていつもの会議が始まった。


 特に問題ない。前々から状況や作戦などは何度も確認している。今日は最終確認をしただけだ。


 そして最後の問題というか確認。フェル姉ちゃんが必要かどうかの話だ。


「アビスちゃん、報告をお願い」


「はい、トラン王国のことを色々確認しました」


 少しだけつばを飲み込んだ。


「まず間違いなくフェル様のお力が必要でしょう。博士と呼ばれる人物が第三世代の人族かどうかはまだ判明していませんが、どう見てもゴーレム兵は一から作り上げていますし、王都にはその製造場所らしきところがありました。相手は神の技術を持っていると考えて間違いないかと」


 部屋の雰囲気が明るくなった気がする。フェル姉ちゃんの力を借りることが絶対に必要だということになったからだろう。


 正直なところを言えば、叫びだしたいくらい嬉しい。でも、皆の手前、そんなことはできない。それにこの件に関してはアビスちゃんを疑いたい。私のために嘘をついている可能性を否定できないからだ。


「それは間違いない?」


「間違いありません。メイドギルドの皆様や魔物部隊の力を借りて王都や周辺を調べてもらいましたので情報の正確さを疑う必要はないでしょう。神と同等の技術を持ってどんなことをしたのかまでは分かりませんでしたが、ゴーレム兵や魔素の身体を作る以外にも色々とやっています」


「でも、いままで私達は全ての主要都市で勝ってきた。相手に神の技術があるならもっとボロ負けしていたと思う」


 いままでの戦いで負けはない。重症者はいるけど、それはマナちゃんのおかげでなんとかなった。はっきり言って普通に人族と戦争するよりもはるかに被害は少ないと言える。


「憶測でしかありませんが、王都で確実にアンリ様を倒すために罠を張っているかと思われます」


「罠?」


「はい。この戦争の勝利条件。それは相手にもあります。アンリ様を確実に殺すための罠が王都にはあるのでしょう。絶対に逃げられないようにするといった目的があるのかもしれません」


 確かにそれはあるかもしれない。


 ダズマは私を殺さない限り勝利とは言えないはず。だから最初の方は私を狙ってきたんだと思う。でも、それが無理だと分かったから戦い方を変えたのかもしれない。


 主要都市での戦いに勝利していて、さらに被害は少ない。調子に乗って王都へ攻め込むと思っている可能性はある。そこでガツンとカウンターという作戦。


 ダズマはトラン王国でゴーレム兵を失っても特に問題ないと考えているんだろう。だから攻め落とした主要都市を奪還することもなく放置している。それともゴーレム兵を派遣できない程、王都に戦力がないと見せているのかもしれない。


 それを考えると王都での戦いで神の技術をふんだんに使った罠があると考えるほうが妥当なような気がする。


「アンリ様はここまでフェル様の力を借りずに戦ってきました。最後の最後に頼るというのは気が引けるかもしれませんが、相手が何をしてくるか分からない以上、対策をしておくのは間違いではありません。それがたまたまフェル様だけだったということです」


 珍しくアビスちゃんが熱く語っている。それだけでも結構厳しいという状況が分かる。いままでは相手に手加減されていた。だからこそ被害も少なく勝てたと思うべきなんだろう。


 皆が真剣な目で私の方を見ている。少なくとも私の決定に従うということだ。


 なんのために王になるのか。それを間違えちゃいけない。


 うん、決めた。


「あの人に救援要請をして」


 明らかに皆は喜んでいる。


 私がそう判断したことが嬉しいのか、フェル姉ちゃんが来てくれることが嬉しいのかは分からないけど、どちらにしても嬉しそうにしているのは間違いない。


 でも、問題はある。


「ただ、救援要請を出してもあの人が実際に助けてくれるかどうかは分からない。スザンナ姉さんはこの三年間、手が空いたときにずっとソドゴラに行っていた。今まで説得していたと思うけど、それでも助けに来てくれたことはない。今回も同じようにダメかもしれないから過度な期待はしないで」


 これは自分に言い聞かせている言葉だ。期待をしすぎるとその後の落胆も大きくなる。でも、皆はどこ吹く風だ。そんなことない、って顔をしている。なんで?


「えっと、聞いてた?」


 アビスちゃんが頷いた。


「もちろん聞いておりました。ですが、フェル様がアンリ様の本当のピンチに駆け付けないなんてことはないと思いますよ」


 その言葉に皆が頷く。フェル姉ちゃんの評価がいいのか悪いのか分からないけど皆はそう思っているみたいだ。


「可能性がある以上、その対策をしないわけにはいかない。明後日に王都へ攻め込むのは変更しない。ここでこちらが怯んだとなれば皆の士気に影響がでる。勝ち続けているからこその勢いを落としたくない」


 これに関しては皆も真剣な顔で頷いてくれた。決戦は二日後。それは決定事項だ。


「あの人が来ない、もしくは時間に間に合わないという可能性もある。私達だけでも勝てるような作戦をお願いしていたけど、それは大丈夫?」


「はい、作戦はあります。相手のゴーレム兵も魔素の身体を持つ相手もその原動力は魔力。その魔力の供給源を絶つことを優先したいと考えております」


「供給源を絶つ?」


「はい。トラン王国の国民は地下に閉じ込められて魔力を吸い取られています。それは神の技術によるものです。私ならその供給源を絶てるでしょう。そうすればゴーレム兵などは動けなくなりますし、弱体化を図れます」


 作戦は考えてくれていたみたいだ。でも、それならフェル姉ちゃんの力はいらないような気がするけど。


「もしかしてあの人なしでも大丈夫?」


「相当な被害を覚悟するという作戦ですね。そもそも閉じ込められている場所が現時点では分かりません。それにそこを守る戦力もあるでしょう。アンリ様達がおとりとなって戦っている間に潜入するような作戦ですので、被害は今までの比ではないかと」


 それは困る。犠牲なく戦いに勝つなんて虫が良すぎる話ではあるけど、それでも被害は少ない方がいい。


「分かった。それはあの人が来なかった時の作戦だけど、もっと煮詰めて欲しい。救援要請を出すことは決まっても可能な限り当てにはしない。でも、被害もできるだけ抑えたいから」


「承知しました。それと救援要請はスザンナ様にお願いしましょう。近くにいらっしゃるようですし、念話よりも直接お願いした方がフェル様も折れやすいと思いますので」


「今までもお願いしていたみたいだけど、大丈夫かな……?」


「大丈夫でしょう。今回は神――というよりもその技術を持つ人族が絡んでいることが間違いなく分かりました。神とフェル様には因縁みたいなものがありますので、まず間違いなく協力してくれるかと。それにさっきも言いましたが、アンリ様が本気で助けて欲しいと言ったのなら、絶対に駆けつけてくれます。賭けてもいいですね」


 フェル姉ちゃんはそんな風に思われているんだ?


 私も心の奥底ではそんな風に思っている。どんな事情があったとしても本当にピンチになったら駆けつけて問題を解決してくれる。そんなヒーローみたいな感じだ。


 助けを求める。ただ、それだけの行為なのに、なんでこんなに心が楽になるんだろう。絶対に助けてくれると決まったわけじゃない。でも、そう信じることができる。


 それに戦ってくれなくたっていい。そばにいてくれるだけで私はなんでもできる。それこそ神すら斬れる気がする。


 ソドゴラから王都マイオスまで結構な距離はあるけど、転移門とスザンナ姉さんの水竜がいればかろうじて間に合うはずだ。


 最後の戦い、フェル姉ちゃんの前で無様なことはできない。今までの私の成長を見せつけよう。


申し訳ないのですが、少々お休みをいただきます。

次回更新は5/10(月)になりますのでよろしくお願いします。


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