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少女と魔族と聖剣と  作者: ぺんぎん
第十六章

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畑とダンジョン

 

 マナちゃんと別れてから、村の東にある畑にやってきた。


 畑もずいぶんと広くなった気がするけど、ピーマンを作っているところだけは殲滅したい。そこにトウモロコシを植える。アンリのパラダイス計画はいつか実行しよう。


 そんな風に畑を見ていたら、畑仕事をしていたベインおじさんがアンリに気づいた。他のおじさん達と一緒にアンリ達の方へ来てくれた。


「アンリちゃん。おかえり。ようやく帰って来たんだな。あんまり、村長やアーシャさんに心配をかけちゃだめだぞ」


「ただいま。大丈夫。子供には旅をさせた方がいいって昔の偉い人は言ってた。そんなことよりも、悪いことは言わないから、ピーマンづくりをやめて。それはそのうち犯罪になる。アンリが法律を変える」


「いや、ならないから――いや、アンリちゃんならやれるのか……?」


 ベインおじさんが腕を組んで考えこんじゃった。これは五割くらいアンリジョークなんだけど。


「えっと、そろそろアビスちゃんのダンジョンへ行くね?」


「ああ、うん。アビスなら大丈夫だとは思うけど気をつけてな……そろそろ誕生日だし、無理をしちゃダメだぞ?」


「うん、気を付ける。それじゃベインおじさん達も畑仕事頑張って」


 ベインおじさん達は笑顔で片手を上げながら、畑の方へ戻っていった。


 なぜかレイヤ姉ちゃんはベインおじさん達の後ろ姿を見てる。


「レイヤ姉ちゃん、どうかした? もしかして紹介した方が良かった?」


「え、あ、いえ。そういう訳ではないのですが、少々気になりまして。あの方達って本当に畑仕事をしているだけなんですか? 筋肉の付き方が農夫というよりも戦士ですよね?」


 レイヤ姉ちゃんが何を言っているのか分からないけど、ちょっとだけ思うところはある。


 ベインおじさんは昔、双剣のベインと呼ばれてた。でも、それは内緒だ。とくにルハラ出身のレイヤ姉ちゃんに言うのはちょっと問題があるかも。


「えっと、もともとこの村の周辺ってすごく危険だったから、村の皆が戦えるようにしてた。その時に体を鍛えた名残かも」


「ああ、なるほど。境界の森と言えば、危険の代名詞でしたからね。でも、それは十年くらい前の話で今は安全とか聞きましたが」


「それはフェル姉ちゃんのおかげかな。あの頃フェル姉ちゃんが森に来て、あっという間に森の四天王を配下に置いたから」


 正確にはジョゼちゃんがやったみたいだけど、ジョゼちゃんもフェル姉ちゃんの配下だから似たようなものだと思う。


「フェルさんですか。魔族の方は色々と規格外ですけど、フェルさんはさらに規格外のようですね」


「うん。元魔王だし、規格外すぎると思う」


 あれ? レイヤ姉ちゃんが止まっちゃった。


「どうかした?」


「あの、フェルさんって元魔王なんですか?」


「うん。魔王だったけど、今は魔神って言われてる。神殺しの魔神。たぶん、今の魔王さんもフェル姉ちゃんには従うくらいには偉い魔族」


「……そんな方に私は喧嘩を売ったんですね」


「あれは仕方ないと思う。アンリも狙われていたし、レイヤ姉ちゃんは正しいことをしたと思う。誰か連絡をよこしてくれればもうちょっとスムーズに話が終わったと思うけど」


 レイヤ姉ちゃんがしょんぼりしていると、スザンナ姉ちゃんがレイヤ姉ちゃんの肩に手を置いた。


「終わったことを反省するのはいいけど、気にしてたらダメ。今後気を付ければいい」


「そ、そうですね。あまり張りつめても良くないでしょうし、もう少し肩の力を抜こうかと思います」


「それがいいと思う。これからアビスちゃんのダンジョンへ行くから少し潜ろう。浅い階層ならそれほど危なくないから」


 アンリも昔は浅い階層でも危なかったけど、今はもう平気なはずだ。本格的に潜るのはもう少し時間が経ってからにして、今日はちょっとだけだ。


 ダンジョン入口にある小屋にはバンシー姉ちゃんとシルキー姉ちゃんが入場の手続きをしていた。


 アンリに気づくと二人とも笑顔になる。


 二人に挨拶して手続きを終わらせてからダンジョンに入った。


「あの、先ほどの方達は、なぜアンリ様のことをボスと呼んだんですか?」


「何を隠そう、アンリは魔物さん達のボスとして君臨してる」


 色々と事情があってのことだけど、間違いじゃないはず。真のボスとして認められるときが来るといいんだけど。


「なんというか、すごい、という感想しか出てこないんですけど」


「でも、これらはほとんどがフェル姉ちゃんのおかげかな。そもそもアビスちゃんを造ったのもフェル姉ちゃんだし」


「アビスちゃんと言うのはこのダンジョンのことですよね? ……え? ダンジョンを造った?」


「うん、そう。レイヤ姉ちゃんには紹介しておくね。アビスちゃん、いる?」


「もちろんです。初めましてアビスです。よろしくお願いしますね、レイヤさん」


 レイヤ姉ちゃんは今日、何度も動きが止まる。そしてギギギって音がする感じで首を動かし、アンリを見る。


「ダンジョンがしゃべったんですけど……?」


「うん、アビスちゃんは最強で最高のダンジョンだから、お話するくらい余裕」


「はい、お任せください。もっともっとここを拡張して、自他ともに認める最強で最高のダンジョンになってみせます」


 すごい意志を感じた。


 アンリも負けないように絶対にフェル姉ちゃんに勝つという意志を持とう。


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