大ブランド
ニャントリオンの建物は結構大きくなった。三年前よりもかなり大きい。というか、二階建てになってる?
アンリ達が村を出る前に結構ブレイクしていたし、クル姉ちゃんのドレスもすごく評判が良くてルハラの支店でもかなりの売り上げだって聞いたことがある。もう大ブランドって言えるくらいになったのかも。
でも、以前のディア姉ちゃんを知ってる立場としてはちょっと感慨深い。もっとお仕事に適当な感じだったのに。
「ここがニャントリオンの本店ですか。結構な大きさですね」
レイヤ姉ちゃんが建物を見上げている。
「アンリ達が村を出る前はもう少し小さかったんだけど、いつの間にか大きくなってた。かなり昔はもっと小さい雑貨屋さんだったんだけど」
「そうなんですか。ああ、そういえば、アンリ様達はここを村って言ってましたけど、町じゃないんですか? 人もたくさんいますし、建物も多くて大きいですよね?」
「村と町の線引きがどこまでなのかはアンリにも分からないけど、アンリとしてはどうしても村って感じが強いかな。それにここに住んでいる人は少ないと思う。多いのは冒険者さん達」
冒険者さんを村の住人って言っていいかどうかは微妙なところ。大体の人は妖精王国に泊っているだろうし。
「そういうものですか。でも、冒険者が多くなれば商売をする人も増えて、住む人も増えていくと思いますよ。もしかしたら町どころか都市くらいまで大きくなるかもしれませんね」
「それはちょっと楽しみ。アンリがこの村のトップを受け継ぐときは都市くらいになっていて欲しい。村長や町長じゃなくて――なんだろう、市長かな?」
「なるほど。いつかアンリ様がここのトップになるんですね。アンリ市長――いい響きですね」
うん、悪くない。なら目指すは最強の都市。そしてここを人界征服するときの拠点にしよう。
……おっといけない。まずはディア姉ちゃんに挨拶だ。それにガープ兄ちゃんにも挨拶しておかないと。
ニャントリオンの建物に入る。
ここも冒険者さん達でいっぱいだ。
「いらっしゃいませ! ニャントリオンへようこそ! なにかお探しですか? これなんかどうでしょう? 流行りの革グローブです。超いけてますよ!」
ウサギの獣人さんかな。アンリよりもちょっと大きいくらいの獣人さんが流れるように装備を売りに来た。
でも、残念。アンリ達の目的は買い物じゃない。挨拶回りとレイヤ姉ちゃんの案内だ。
「買い物じゃなくてディア姉ちゃんに会いたいんだけど」
「店長ですか? 店長は忙しいのでしばらくは作業部屋から出てきませんよ。お昼か夕食の時くらいしか出てこないので、そのころに来ていただければ会える可能性はありますが、難しいかもしれませんね。あ、でも、会えたとしても無理やりな仕事の依頼はダメですよ。予約が数ヶ月先まで埋まってますから、横入りはできません」
「うん、そんなことはしないから安心して。ならガープ兄ちゃんはいる?」
「副店長ですか? ええと――」
「アンリとスザンナか?」
ガープ兄ちゃんが二階から階段をおりてきた。ガープ兄ちゃんは相変わらず老け顔だ。でも、あの頃から変わっていないから、そろそろ年齢通りなのかな。
「ガープ兄ちゃん、久しぶり」
「ああ、久しぶりだな――ここはもういいから他の客の対応をしてくれるか」
ガープ兄ちゃんがそう言うと、ウサギの獣人さんは頭を下げてから、他のお客さんの所へ行っちゃった。装備の説明や補助をしているみたいだ。
「昨日、妖精王国で二人が帰ってきている話を聞いたんでな。二人ともこの三年でずいぶんと変わったから、知らなかったら気づかなかったかもしれないな」
「うん、アンリはずいぶん背が伸びたと思う」
「私はもう背は伸びてないけど?」
スザンナ姉ちゃんが不思議そうにそう言った。確かにスザンナ姉ちゃんの背は三年前と変わっていないと思う。ずいぶんと変わったって言ってるけど、三年前とそんなに変わってはない気がする。
「背ではなく雰囲気が変わったと言うことだ。村にいたころは少しあどけない感じもあったが、今はそれがない。アンリを守らなくてはいけないという責任感がそうさせたのかもしれないな。あの頃よりも大人になったと言うことだ」
「……なんだろう。そう言われるとすごく嬉しい気がする」
珍しい。あのクールなスザンナ姉ちゃんがすごく照れてる。
「それで、そちらの人は?」
ガープ兄ちゃんはレイヤ姉ちゃんの方を見ている。ディア姉ちゃんならルハラで会っているから知っているけど、ガープ兄ちゃんは初対面だった。ここはしっかり紹介しておかないと。
「傭兵団『紅蓮』の傭兵でアンリ達の同僚。今はソドゴラ村の案内をしているところ」
「レ、レイヤです! よろしくお願いします!」
「ガープだ。ニャントリオンで副店長をしている。革製品が必要ならいつでも買いに来てくれ」
「は、はい! そのときはよろしくお願いします!」
ガープ兄ちゃんはレイヤ姉ちゃんに軽く頷くと、アンリの方へ視線を戻した。
「さて、三人で買い物に来たわけではないんだろ? ディアに会いに来たのか?」
「うん。でも仕事が忙しいって」
「そうだな。しばらくは部屋にこもりきりだろう。夕食は妖精王国でフェル達と一緒に食べると思うから、挨拶ならそのときがいいと思うぞ。ここ最近は寝る間も惜しんで仕事をしているほどだからな」
その言葉にすごく違和感があるけど、ディア姉ちゃんは本気で今のお仕事を頑張っているんだと思う。なら邪魔しちゃいけない。
「なら夕食を妖精王国で食べるように調整する。ディア姉ちゃんにも伝えておいて」
「分かった。伝えておこう」
その後、ガープ兄ちゃんと少し村のことを聞いて店を出た。
よし、次はローズガーデンに行こう。リエル姉ちゃんに挨拶するのもあるけど、まずはマナちゃんに会いに行こう。




