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少女と魔族と聖剣と  作者: ぺんぎん
第十六章

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帰宅

 

 フェル姉ちゃんが何の遠慮もなく家に入った。


 アンリ達もそれに続く。ちょっとだけ緊張するけど、ここはスザンナ姉ちゃんを見習ってクールにいく。


「ただいま」


 アンリがそう言って家に入ると、スザンナ姉ちゃんも「ただいま」って言って中に入った。レイヤ姉ちゃんは「お邪魔します」と言って入った。


 家の中にはおじいちゃんとおかあさん、それにおとうさんが立ったまま出迎えてくれた。


 三年ぶりのおじいちゃん達。おじいちゃんはちょっとだけ老けた感じはするけど、あの優し気な笑顔は以前のままだ。ちょっと前までは念話でやり取りしてたけど、久々に会うと少しだけ緊張する。


「おかえり、アンリ。それにスザンナ君」


「うん、おじいちゃんただいま」


「ただいま帰りました」


 おじいちゃんがゆっくり近寄ってきて、アンリを抱きしめた。アンリも背が高くなったからかな。おじいちゃんは腰を曲げることなくアンリを抱きしめてる。以前のおじいちゃんなら膝を地面につけた感じで抱きしめてくれたけど。


 アンリもおじいちゃんの背中に手をまわした。うん、おじいちゃんの匂いだ。すごく安心する。


 たっぷり一分くらい抱き合ってから、おじいちゃんが離れた。そして笑顔のままアンリを見つめる。


「アンリ、よく無事だったね。それとスザンナ君、ありがとう。アンリを守ってくれていたのだろう?」


「アンリは強いから自分で身を守れる。私は大したことをしてない」


「それでもだ。本当にありがとう……ところで、そちらの方は?」


 おじいちゃんがレイヤ姉ちゃんを見て不思議そうな顔をしている。


 レイヤ姉ちゃんはビシッと敬礼した。


「初めまして! 傭兵団『紅蓮』の団員でレイヤと言います!」


 それだけじゃ足りないと思う。情報を追加しないと。


「私とスザンナ姉ちゃんの同僚。傭兵団の中でダンジョン攻略のパーティーを組んでる」


「ああ、そうでしたか。アンリの祖父です。いつもアンリ達がお世話になっております」


「い、いえ! お世話になっているのは私の方でして……その、頭をお上げください!」


 おじいちゃんは頭を上げると、今度はフェル姉ちゃんの方を見た。


「フェルさん、ありがとうございます。アンリを無事に連れ帰ってくれて助かりました」


「私は迎えに行っただけでほとんど何もしてない。そこまで礼をしなくていいぞ。それじゃ私は宿へ戻る」


「何を言うのですか、沢山の料理を用意しておいたのです。フェルさんも是非食べて行ってください」


「アンリとは久しぶりだろ? 部外者が居ていいのか? 家族の団らんを邪魔する形になると思ったから帰ろうとしたのだが」


「部外者なんて水臭い事を言わないでください。フェルさんも食べるのを見越して料理を用意しているのですから、食べてもらわないとこちらが困ります」


 やれやれ、フェル姉ちゃんはもう家族と言ってもいいくらいなのに何を遠慮してるのかな。


 それに今日はアンリがソドゴラ村に帰ってきた記念日と言ってもいい。村が大きくなったから昔みたいにはできないけど、こういう時は宴って決まってる。


「分かった。それなら頂こう。手加減はしないぞ?」


 アンリも手加減しない。でも、よく考えたらお昼まで時間がある。さすがにまだお腹は減ってないから少しお話でもしよう。


「さて、皆、椅子に座ってくれ。アーシャ、皆にリンゴジュースを」


 お母さんはさっきから少し涙ぐんでいるけど、笑顔で部屋を出て行った。そっか、リンゴジュース。飲むのは久々だ。


 皆が座ると、おじいちゃんがアンリを見つめてきた。


「さて、アンリ、スザンナ君、無事に帰ってきてくれたわけだが、おじいちゃん達に言うことはないかな?」


 あの笑顔は危険。ここは先手必勝。


「ごめんなさい。でも、クル姉ちゃんは親友だから助けたかった。もう一度言うけど、クル姉ちゃんは親友だから助けたかった。親友だから、ここが大事。フェル姉ちゃんがリエル姉ちゃんを助けに行ったのと同じ意味だと思って。あと、情状酌量をお願いします」


 フェル姉ちゃんが眉をひそめているけど、口出しはしないみたいだ。


「ごめんなさい。私も同じです。クルは親友なので。本当に大事な親友なので」


 スザンナ姉ちゃんもクル姉ちゃんが親友ということを強調してきた。そう、これが作戦。クル姉ちゃんに原因があるという方向で話を進めていきたい。


 おじいちゃんは少しだけ笑顔が消えて、溜息をついた。


「その気持ちは大事だけど、まさか傭兵になるとは思わなかったよ。しかもルハラ帝国に所属している傭兵か……」


「えっと、それが問題? ちなみにまだ所属してるけど」


「……戻るつもりなのかい?」


「うん。今は長期休暇を取ってきただけ。辞めてはいないからまだアンリは紅蓮の傭兵。これからもブイブイ言わせる」


「そうか……いや、まあ、構わないよ」


 おじいちゃんが少しだけ微笑むと、お母さんが戻ってきた。そして皆の前にリンゴジュースの入ったコップを置く。


「はい、リンゴジュースは久しぶりでしょう?」


「うん、ありがとう、お母さん」


「どういたしまして。さて、それじゃお母さんは料理の準備をするからおじいちゃんやお父さんにこれまでのことを色々説明してあげて」


「分かった。アンリとスザンナ姉ちゃんの武勇伝をこれから語る。度肝ぬいて」


 念話では話していたけど、言ってないことはまだまだある。しっかり話してアンリが結構強くなったことを説明しようっと。


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