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少女と魔族と聖剣と  作者: ぺんぎん
第十六章

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おじいちゃんの手紙

 

 さっきからフェル姉ちゃんがおかしい。アンリとの戦いでダメージは受けていないはずなのに足にきてる。


 相当お腹が減ってるとみた。


「分かった。今、スザンナ姉ちゃんがお昼の用意をして持ってきてくれるから、それを食べて落ち着くといい。本当は寮に招待したいけど、団員以外は入れない規則」


 アンリがそう言ったのにフェル姉ちゃんは聞いていないみたいだ。フェル・デレをじっと見て眉間にしわを寄せてる。


「アンリ、この剣をリエルに見てもらったことがあるのか? その、祝福してもらったとか」


「なんで知ってるの? 冒険者は旅に出る時に、そういうゲン担ぎをするってスザンナ姉ちゃんが言ってた。だからルハラに行く前にリエル姉ちゃんに剣を祝福してもらった。ルハラに格好いい男性がいたら紹介するって条件で」


 リエル姉ちゃんもそう言ってたし間違いない。でも、それがどうしたんだろう? フェル姉ちゃんは右手で両目を覆って天を仰いでる。なにか相当な問題があった感じの行動だ。


「お待たせ。ニアさんほどじゃないけど、それなりの料理になった、と思う」


 スザンナ姉ちゃんが戻ってきた。フェル姉ちゃんもようやく立ち直ったみたい。やっぱりお腹が減ってたのかな。


 訓練場の隅っこでゴザを敷いて三人で座った。たまには外で食べるのも悪くない。


 今日のメニューはカチカチパンとワイルドスープ、あと噛み切れない干し肉。うん、今日も食べるのに一苦労。


「スザンナ姉ちゃんの料理はすごくいい。こう、アゴが鍛えられる感じで」


「それ、固いってことだよね? でも、普段からこういうのに食べ慣れておかないといざと言う時大変だから我慢して。それにアンリもこれくらい作れないとダメだよ?」


 確かに。アンリはほとんど料理ができない。お母さんにも教わったことがないから料理の基本が分からないくらい。千切りは本当に千に斬らなくていいっていう知識だけだ。アンリとしてはまな板の上じゃなくて空中で切り刻みたい。


「相変わらず仲がいいな。でも、ここで食べていいのか? その、団員達が練習中なんだが」


 フェル姉ちゃんがアンリ達をほほえましそうに見ながらそんなことを言った。確かにみんなこっちをチラチラ見ながら訓練してるみたいだ。


 スザンナ姉ちゃんがフェル姉ちゃんのほうを見て頷いた。


「寮の食堂で食べても似たような感じだから大丈夫。それに食事の時間は特に決まってないから、皆も食べたければ勝手に食べると思う」


「そうなのか。ならちょっと居心地が悪いけど食事にしよう。実はニアにお弁当を渡されてる。サバイバル料理も食べ慣れる必要はあるだろうが、久しぶりだろうからニアの料理も食べるといい」


 フェル姉ちゃんはそう言ってゴザの上に亜空間から料理を取り出した。その時のアンリは人生で最速の動きだったと言ってもいい。


 すぐさま、サンドイッチを奪う。選んでる場合じゃない。目につくものはすべて奪わないと。


「おう、コラ。卵焼のサンドイッチは私のだと決まってるだろうが」


「この三年で理解した。ニア姉ちゃんの料理は最高。例えフェル姉ちゃんでもニア姉ちゃんの料理は譲れない。全部食べる」


「アンリに同意する。ここでそれを広げるのが悪い」


「いいだろう。魔族の力を見せてやる」


 フェル姉ちゃんも本気を出した。絶対に負けない……!




 フェル姉ちゃんは手加減をしてくれたんだと思う。どちらかというと、スザンナ姉ちゃんが用意した料理を多めに食べてた。結構固いはずなのにバリバリ食べるフェル姉ちゃんは相変わらずワイルド。アンリもあれくらいあごを鍛えておきたい。


 お腹も膨れたし、フェル姉ちゃんと第二回戦と行きたいところだけど、そもそもフェル姉ちゃんは何しに来たんだろう? まずはそれの確認かな。


「ところでフェル姉ちゃんはここへは何しに来たの? こっちのダンジョン調査? それなら一緒に連れてって欲しい」


「村長の依頼と言わなかったか? アンリとスザンナを連れ戻す依頼を村長から受けたんだ。理由は知らんが念話を届かないようにしてるだろ? だから直接来た。連れ戻す理由は村長に預かった手紙に書いてある。読んでくれ」


「おじいちゃんが? そうだった。念話のチャンネルを止めてたのを忘れてた」


「理由を聞いてもいいか?」


「最近、私に会いたいって人が多く来る。それにどこで知ったのか、私のチャンネルに直接念話を送ってくる人も居て、面倒だからチャンネルを閉じてた」


 午前中はチャンネルを止めたのを覚えていたけど、フェル姉ちゃんが来たから全部忘れちゃってた。


 もしかしてそれで怒ってるっていう手紙なのかな……?


 しまった、ダンジョンにいたっていういい訳があったのにフェル姉ちゃんに言っちゃった。あとでフェル姉ちゃんに賄賂を贈ろう、卵料理で事なきを得る。


 でも、その前に手紙だ。


 ……簡単に言うと成人の誕生日に大事な話があるからスザンナ姉ちゃんと一緒に帰ってきて欲しいってことだった。スザンナ姉ちゃんにも聞いて欲しい話だとか。


 それと帰って来たからと言って村に閉じ込めるような真似はしないから安心してほしいって内容だ。わざわざ書くところが怪しいとも言えるけど、おじいちゃんのことだから大丈夫かな。おかあさんだったら危険。


 それはいいとして大事な話って何だろう?


「大事な話があるって書かれているけど、フェル姉ちゃんは何の話か知ってる?」


「内容は知ってる。だが、それは私の口からは言えない。村長に直接聞いてくれ」


「そうなんだ。なら久しぶりに帰る。スザンナ姉ちゃんも来てほしいって書いてあるけど、大丈夫?」


「大丈夫。話の内容は想像できないけど、私にも聞いて欲しいって書いてあるから、一緒に帰るよ」


 アンリとスザンナ姉ちゃんが別々のわけがない。帰るときも怒られる時も一緒だ。


「なら、明日で平気か? 二人を転移門で送ってやる」


 ヴァイア姉ちゃんが構築した長距離転移魔法のことだ。それを使えるのはちょっと楽しみ。


「うん、しばらくは訓練期間だから問題ない。一ヶ月ぐらい休暇を取る」


 訓練期間というか、襲撃事件があったからなんだけどもうしばらく休んでも大丈夫だと思う。それにソドゴラ村ならここよりも安全な気がする。夜、クル姉ちゃんに話しておこう。


「私も平気。今日のうちに準備しておく。しばらく帰省することをクルに伝えておくから」


「分かった。それじゃ、明日の朝にでもまた来る。それまでに準備しておいてくれ……それじゃ、そろそろお暇する。どこかの宿にチェックインしないといけないからな」


 本当は寮に泊めてあげたいけど部外者は入れちゃいけない規則。というかアンリのための規則みたいなものだから、フェル姉ちゃんならいいのかな?


 でも、クル姉ちゃん達は出かけてるしアンリが勝手に決められない。残念だけど今日はどこか別の場所に泊ってもらおう。


 フェル姉ちゃんを寮の入口まで送ることにした。ちょっとでも長く一緒にいたい。スザンナ姉ちゃんも一緒みたいで、入口まで付いてきてくれた。


 ……なんだろう? 入口の受付のあたりがすごく騒がしい。


「だから! 私はフェルっていう魔族だって言ってるじゃん? アンリとは知り合いなんだから、呼んでくれない?」


 フェル姉ちゃんは隣にいるんだけど、あそこにもフェル姉ちゃんがいる。でも、全然違うような?


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