表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女と魔族と聖剣と  作者: ぺんぎん
第十六章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

343/477

暗殺者とファン

 

 暗殺者ギルドが壊滅してから一週間、アンリとスザンナ姉ちゃんはずっと寮にいる。


 アンリ達は部屋でぐーたらしたり、訓練場で訓練したりしているけど、戦乙女部隊の皆はアンリを狙っている人を調べてくれているみたいだ。


 そろそろ退屈なのでアンリがやってくる相手を全員倒すという作戦を進言したら、全員が却下した。


 確かにアンリもその作戦は薄々どうかと思ってたけど、一時間くらい説教された。ああいう作戦は冗談でも言っちゃいけなかったみたいだ。


 あの暗殺者ギルドの人は魔素で出来たゴーレムだった。アンリやスザンナ姉ちゃんはアビスでよく見ていたからそれほど驚かなかったんだけど、ほかの人はそうじゃないみたいだ。


 あれは普通じゃないって言ってた。これも薄々そう思っていたけど、村のダンジョン、つまりアビスちゃんは普通じゃなかった。


 アビスちゃんに相談してみようかって言ったんだけど、そのアビスちゃんが犯人かもしれないって皆が言い出して念話はしていない。


 アビスちゃんが犯人のわけはないんだけど、そもそも魔素のゴーレムは跡形もなく消えちゃったから話をしてもどうしようもないような気がするというのもあった。


 フェル姉ちゃんに相談しようとも考えたけど、よく考えたら相談したら連れ戻されるに決まってる。


 村に帰るのはいいんだけど、それ以降村から出さないってことになったら大変。このことはフェル姉ちゃんやおじいちゃん達にも内緒だ。内緒で処理してから村に堂々と帰る。余計な心配はさせたくないし、これが一番いいと思う。


 とはいえどうしたものかな? 今のところ何の手掛かりもないんだけど。


 そんなことを考えていたら、レイヤ姉ちゃんが部屋にやってきた。


「あの、受付から連絡があったのですが、アンリ様に会いたいって人が来てるみたいです。どうします?」


「え? 誰?」


「いえ、名乗ってはいないですね。見た目は怪しくないのですが、状況が状況だけにどうしようかと思いまして。今は寮の入口にある受付で待ってもらってます」


 誰だろう?


 意外とアンリに会いに来てくれる人は多い。オリスア姉ちゃんとかバルトスおじさんとか。そういえば、オリスア姉ちゃん達は三人で人界中を旅するって言ってたっけ。


 というか、オリスア姉ちゃんが勝手にバルトスおじさん達に付いていった感じだ。人界の勝手がわからないから教えろとか言ってた。


 バルトスおじさんは嫌そうな顔をして、シアスおじさんは笑ってたっけ。そして三人でどこかへ行っちゃった。今頃はウゲン共和国かな?


「あの、アンリ様、どうします?」


 いけない、考え込んでた。


「会ってみる。意外とアンリに会いに来る知り合いは多いから」


 もしかしたらソドゴラ村から誰かが来たのかも。名乗らないのはちょっと微妙だけど会うだけあってみよう。


 アンリが椅子から立ち上がると、スザンナ姉ちゃんも立ち上がった。そして周囲を警戒する。寮の中でそこまで警戒する必要はないと思うんだけど。


 最近のスザンナ姉ちゃんはアンリに対してすごく過保護だ。嫌な気分はしないけど、そんなに神経を張り詰めていたらすごく疲れると思う。入れ込みすぎて、いざという時に動けないって言うのはよくある話。もう少し抑えてもらおう。


「スザンナ姉ちゃん、もう少し肩の力を抜いて」


「大丈夫。それに私はアンリの姉。アンリを守るのは私の役目。肩に力が入っていたくらいがちょうどいい」


「わ、私もアンリ様を守りますよ!」


 スザンナ姉ちゃんもレイヤ姉ちゃんも嬉しいことを言ってくれる。これは無理に力を抜いてと言ってもだめかもしれない。


「うん、ありがとう。それじゃ行こう。そもそも危険がある人と決まったわけじゃないし」


 よし、寮の入口にいるらしいから行ってみよう。




 暗殺者だった。


 知らない人がいるなと思ったら、アンリの方を見ていきなり襲い掛かってきた。でも、ゴーレムじゃないから特に強くはない。レイヤ姉ちゃんの剣で一閃だ。


 すでにロープで拘束した。ゴーレムじゃないから抜け出すことはないと思うんだけど、念のためアンリは距離を取ってる。


「申し訳ありません。怪しい服装ではなかったので少し気を許してしまいました……」


「レイヤ姉ちゃん、気にしないで。どこから見ても普通の人っぽいから仕方ないと思う」


 そんな普通の人をスザンナ姉ちゃんが調べている。あの時のゴーレムじゃないから情報が分かるみたいだ。


「この間壊滅させた暗殺者ギルドとは別組織みたいだね。というか帝都の外から来てるよ。暗殺者ギルドをあそこまで叩き潰したのにまた来るなんて……よほどアンリに懸けられた金額がいいのかも」


 それは喜ぶところなのかな? アンリが悪者なら懸賞金が上がって喜ぶところなんだろうけど、アンリの首にお金が懸かっているのは嬉しくない。


 そもそもなんでアンリの命を狙うのかな? まさかピーマン普及の組織かなにか……? いや、それはないか。ピーマン撲滅運動の啓蒙活動はしてるけど、まだ紅蓮の中だけ。人界中ではしてない。


 そんなことを考えていたら紅蓮の人が来て暗殺者の人を連れて行った。そして受付の人がアンリ達の方へ近づいてくる。


「しばらくはアンリ様やスザンナ様への取次はしないようにしますね。こちらで追い返すようにしますので。それに部外者を寮に入れないようにもします」


「でも、名乗ったら念のため連絡をもらっていい? もしかしたら本当にアンリの知り合いかもしれないし」


「いえ、暗殺者の方は名乗らないと思うんですけど、最近、アンリ様やスザンナ様に会いたいって人が多いんですよ。しかも知り合いを装って。まあ、そっちはただのファンなんですが。もしかしたら暗殺者もファンを装うかもしれませんので、しばらくは名乗っても連絡しないようにします。不便だとは思いますがご了承ください」


 初耳。スザンナ姉ちゃんはともかく、アンリにもファンがいるんだ?


「えっと、アンリにファンがいるの?」


 スザンナ姉ちゃんは紅蓮でスザンナお姉さまって言われるほどだから何となく分かるけど、いつかアンリもアンリお姉さまって言われるのかな? 普通にアンリでいいんだけど。


「ええ、憧れのアンリ様とかスザンナ様へとお手紙を持って来てますね。全部持って帰ってもらってますが」


 ちょっと読んでみたい。どんなことが書かれているんだろう?


 スザンナ姉ちゃんがすごくげんなりした顔で首を横に振った。アンリの気持ちを分かった上でやめた方がいいっていうアドバイスをしてくれているみたいだ。たぶん、スザンナ姉ちゃんは読んだことがあるのかも。


 ファンはいいとして暗殺者がそれを装う可能性があるなら仕方ないかな。なんだかモヤモヤするけど、皆に言われた通り、しばらくは寮で過ごそうっと。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 更新ありがとうございます。 ファンが来た、であのお方が登場か! と思ったのですが、まだ先の様ですね。 流石、国を懸けての賞金首。 世界中から大人気ですが、スザンナと紅蓮や皇帝陛下 に守られて…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ