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少女と魔族と聖剣と  作者: ぺんぎん
第十五章

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最強の護衛

 

 結局、アンリの意識と体の動きが一致することはなかった。


 オリスア姉ちゃんに相談したら回答はこうだ。


「なら意識と体の動きが合うように、もっと修行すればいいんじゃないだろうか?」


 間違ってはいないんだろうけど、それは無理。それができない理由はバルトスおじさん達が調べてきてくれた。


 アンリのユニークスキルは、能力を爆発的に向上させるだけじゃなくて、そもそもの物理法則を捻じ曲げるほどのスキルらしい。


 アンリには見えないけど、空気中には魔素が漂っている。これが魔法の現象を起こすんだけど、アンリがユニークスキルを使っている間はこの魔素が自動的に反応してて、空気抵抗を一切なくすみたい。


 他にも色々あるみたいだけど、アンリが一歩でオリスア姉ちゃんに近づけたのはそれが理由。でも、そのアンリの上を行くオリスア姉ちゃんってすごい。


 そして調べてきてくれたバルトスおじさんとシアスおじさんはなぜか呆れてた。


「儂らも女神に――いや邪神に体をいじられていたときは限定的に世界規則を変えられるほどだったが、お主は生身でそれをやるのか。世が世なら間違いなくお主は勇者だぞ?」


 バルトスおじさんの言葉にシアスおじさんも頷く。


「アンリ、本気で勇者協会に入らんか? お主なら歴代最強の勇者になれるぞ?」


「興味ないかな」


 バルトスおじさんのがっくり具合がかなりひどい。でも、アンリはやるなら魔王の方がいい。フェル姉ちゃんと魔王の称号を巡って争うのも可――いや、魔神かな……そうだ、フェル姉ちゃんとは区別してアンリは魔人と名乗っていいかも。読み方は一緒だから悪くない。


 それはいいとして分かったことがある。


 アンリのユニークスキルは三分しか持たない。それ以上はセーフティが働いて勝手に解除されるとか。何を言っているのかよく分からなかったけど、簡単に言うと体への負荷が高すぎて長い時間使えないってことみたいだ。そして限界まで使うと強制的に睡眠をとらせるとか。


 それは普段のアンリとスキルを使った時の身体能力差が激しいほど長く眠っちゃうみたい。


 今の状態で丸一日。普段のアンリがもっと強くなればその時間は減るっぽい。でも、一番いいのは三分経つ前にスキルの使用をやめることだ。


 限界まで使わなければ、ものすごい脱力感とお腹がペコペコになるだけで済む。それはそれでどうかと思うけど、強制的に眠っちゃうよりはマシかな。


 でも、みんなからしばらく使っちゃダメだって言われた。意識と体のずれが激しいと危険だから、ユニークスキルを使っている状態に慣れるのは良くないってことみたい。


 アンリとしてはもっとガンガン使っていきたいけど、みんなが心配してくれているようだから止めておこう。とりあえずは、今の意識と体の動きをしっかり合わせないと。


 それじゃ今日も体を慣らすために訓練場で素振りをしよう。




「アンリ、スザンナ、二人に仕事をしてもらっても大丈夫かな?」


 あれから三日後の昼食時にクル姉ちゃんが食堂にやって来てそんなことを言いだした。


「クル、アンリはまだ意識と体が合ってない。傭兵の仕事は無理」


「やっぱり駄目か。なら他の人に頼むしかないね。ベルトアとレイヤが適任かな……」


「クル姉ちゃん、どんなお仕事なの? 内容によってはお仕事したい」


 訓練をしてもなかなか意識と体が合わない。ここは実戦でやってみるという手がある。


 当然のごとく、スザンナ姉ちゃんが反対したけど、まずは聞いてみようって話になった。


 お仕事の内容は見張り。近々帝都でとある犯罪組織の摘発があるみたい。基本的にはルハラ帝国の騎士団が対応するんだけど、拠点から逃げ出した奴がいないかどうかを見張る役目を紅蓮が引き受けたとか。


 もちろん、見ているだけじゃなくて、逃げた人を捕まえる必要がある。場合によっては戦闘になるだろうってことだ。


「どれくらいの規模とか、強さが分からないんだよね。だからできるだけ強い人を配置したいんだけど……そうそう、分かっていると思うけど、この件は内緒だから誰にも言っちゃダメだよ?」


 それは当然。紅蓮の内部に裏切者なんていないだろうけど、お口にチャックだ。


 スザンナ姉ちゃんは少しだけ考える仕草をしてから首を横に振った。


「ダンジョン攻略よりも危険度は低そうだけど、やっぱりダメ。今のアンリには任せられない」


「だよね。うん、大丈夫そうならお願いしたかっただけだから気にしないで。ちなみにスザンナだけって言うのは――」


「アンリが行かないから私も行かない」


「――だよね。でも、ベルトアやレイヤ、それに私と幹部だけだとちょっと人手が足りないかな。ルート達は別動隊でまた違うことをやってるしなぁ」


 クル姉ちゃんが困ってる。ここはアンリが助けてあげないと。


「スザンナ姉ちゃん、アンリ達も行こう」


「こう言っては何だけど、今のアンリは足手まといにしかならないよ? 普通の人よりは遥かに強いけど、今だとベルトアにも負けそうになるでしょ?」


「うん。だからアンリは何があっても戦わない。アンリはいるだけ。誰かを捕まえるならスザンナ姉ちゃんのユニークスキルが有効だからここで待機はもったいない」


 ダンジョン攻略でも分かる通り、スザンナ姉ちゃんは水を使った探索能力に優れてる。その能力を活用しないと。


「でも、アンリを守りながらそういうのをするのはちょっと――」


「安心して。アンリには護衛をお願いするから。しかも最強の護衛」


「最強の護衛?」


「うん、アンリがこんなことになった原因と言ってもいい。その責任は取ってもらわないと」


 アンリの言葉にスザンナ姉ちゃんもクル姉ちゃんも気づいたみたいだ。


 スジが通らない気もするけど、アンリが弱体化した理由の一部を担っているはず。ノリと勢いで上手く丸め込もう。




 オリスア姉ちゃんに連絡して紅蓮の寮に来てもらった。そしてアンリの護衛をお願いする。


「なるほど。よく分からんが、アンリ殿の護衛をすれば良いのだな?」


 よく分からないのになるほどって言ったのはこの際どうでもいいかな。護衛をしてくれるかどうかが重要。


「うん、アンリが働けないのはオリスア姉ちゃんが原因と言ってもいい。せめてアンリの護衛をするべき」


「それを言うならバルトスとシアスにも責任があるな! よし! 私が話をつけてきてやるぞ!」


「え? そこまでは――」


 アンリが引き留める前にオリスア姉ちゃんが寮を出て行っちゃった。


 説得も何もなく、普通に了承している感じなのはちょっと拍子抜け。でも、よく考えたらオリスア姉ちゃんに駆け引きは不要かも。やりたくないことはどんな理由があってもやらないだろうし、その逆も然りだ。


 そしてオリスア姉ちゃんは数分で戻って来る。呆れた感じのバルトスおじさんと、笑っているシアスおじさんが一緒だ。


「……まあ、儂がアンリとオリスアを戦わせたのがそもそもの原因であることは間違いないが――よかろう。シアスと共にアンリの護衛をしようではないか」


「ふむ、儂もスザンナの嬢ちゃんに色々教えたからその成果を近くで見せてもらおうかの」


 オリスア姉ちゃんだけのつもりだったんだけど、バルトスおじさんとシアスおじさんもアンリの護衛をしてくれることになった。最強の人族と魔族がアンリの護衛をしてくれる。なんて贅沢。でも、これなら安心安全だ。


「スザンナ姉ちゃんもこれなら安心?」


「安心というか過剰戦力のような気がするけど、確かにこれなら大丈夫かな。クル、どうする? この三人がアンリの護衛をすると言うなら私やアンリも行くけど?」


「お、お金が必要かな……? そんなに余裕はないんだけど……」


 オリスア姉ちゃん達はお金はいらないって言ってくれた。でも、仕事が終わったらみんなに食事をおごることにはなったみたい。


 うん。これで犯罪組織はもう潰れたも同然。運がなかったと諦めてもらおう。


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