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少女と魔族と聖剣と  作者: ぺんぎん
第十五章

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アルティメットアンリ

 

 この二週間でアンリはかなり仕上がった気がする。


 でも、この結果はバルトスおじさんの指導だけじゃなくて、オリスア姉ちゃんの指導もあったからだって言ってる。


「指導を受けるにはそれなりの体力や筋肉も必要だ。あの魔族はそういった基礎をアンリに学ばせておったから、儂の指導も活きたと言うことだな」


 最後に、あの魔族には言うなよ、と言ってたけど、バルトスおじさんもオリスア姉ちゃんのことを認めてはいるんだなって思う。


 そんなわけで、今日は指導の最後ということで、オリスア姉ちゃんと戦うことになった。


 帝都の外にある何もない場所――オリスア姉ちゃんが作ったクレーターがたくさんある場所での戦いだ。


 この数週間でアンリがどれだけ強くなったのかは知りたいけど、オリスア姉ちゃんと戦ってそれが分かるかな? なんとなくだけど瞬殺されそう。


 それにオリスア姉ちゃんが朝から嬉しそうに素振りしてる。素振りをしているだけなのに、大地が悲鳴を上げる感じでボコボコとへこんでるんだけど本当に大丈夫かな?


 アンリの心配をよそにバルトスおじさんが近くで笑っている。薄情だと言ってもいいと思う。


「アンリよ、心配するな。さすがに勝つことはないだろうが、あの魔族相手にもアンリはいい勝負ができる」


「大人はそうやってすぐにアンリをおだてる。おじいちゃんが良くやる手。アンリは賢いからすぐに算数の計算ができるって」


「いや、本当だから安心せい。それで作戦なんだが――」


「オリスア姉ちゃんにつまらない作戦は効かないと思うんだけど?」


「まあ、確かにな。だが、これはアンリがこれからのスタイルとしてやってもいい内容だぞ?」


 アンリのスタイル? できれば一撃必殺のスタイルで行きたいんだけど。


「アンリ、お主は動体視力に優れておる。他にも十三歳とは思えないほどだが、それ以上に目がいい。お主の一番の武器はそれじゃろう」


「動体視力って速い物を見る力のこと?」


「そのとおりだ。アンリは速い動きをしっかりと見れる。それは戦いを生業にするものにとって間違いなく重要だ。当然、動きを見ることができても、躱したりできなければ意味がないが、アンリはその動体視力に追い付けるだけの身体能力もある」


 それだけ聞くと、アンリは結構強そうに思える……でも、鵜呑みは良くない。誰かにおだてられたら罠があると思うべき。


「アンリ、まずは防御に徹して敵の――あの魔族の動きをしっかりと見るのだ。お主が集中して相手を見れば、どんな攻撃も致命傷にはなるまい」


「アンリとしては攻撃をしたいんだけど? できれば一撃必殺」


「一撃必殺をしたいなら、相手の力を見てからでも遅くはないだろう? 相手の力を出し切らせて、その上でこちらから一撃必殺のほうが格好いいぞ?」


 アンリの頭に閃光が走る。それは盲点だった。


 相手に何もさせずに勝つと言うのもアリだけど、格好良さでいえば、相手に全力を出させてからさらにそれを上回る形で勝つ方がいいに決まってる。


「さすが勇者と言わざるをえない」


「……そうか。まあ、それでもあの魔族には勝てないとは思うが、まずは相手の出方を見るほうがいいぞ。アンリ、お主は強い。冷静に相手を見て、力量を見極めれば、少なくとも人族にはまけん。儂を含めてな」


 なんだかすごく持ち上げられている気がする。でも、お世辞だとは分かっていても気分が高揚してきた。今のアンリは無敵って気持ちが溢れてくる。


 もしかしてそういうスキルなのかな? 相手を鼓舞するスキルとか。


「さて、向こうもウズウズしているようだからそろそろ始めるか。良いか? 相手の攻撃を全力でしのげ。そして、あの魔族に全力の攻撃を出させたらお主の勝ちだぞ」


 バルトスおじさんの言葉に頷く。


 うん、アンリもオリスア姉ちゃんに勝てるなんて思ってない。だけど、全力の攻撃をしなければアンリには勝てないと思わせたのなら確かにアンリの勝ちだ。


 ……問題はその全力攻撃をアンリが受けられるかどうかなんだけど。


 そしてウキウキしているオリスア姉ちゃんと対峙する。


 周囲にはスザンナ姉ちゃん、クル姉ちゃん、レイヤ姉ちゃんとベルトア姉ちゃんがいる。それにかなり離れた位置には傭兵団の皆もいる。


 流石に一撃でやられたら恥ずかしい。全力でしのごう。


「アンリ殿はなかなかいい顔をしているな。昔のフェル様を見ているようだ。絶対に負けないという気持ちが伝わって来るぞ!」


「それはアンリにとって最高の褒め言葉。たとえ勝てなくても一撃くらいは入れるから覚悟して」


「大きく出たな! 楽しみだ!」


 アンリは魔剣フェル・デレを構える。オリスア姉ちゃんも同じように魔剣「狂喜乱舞」を構えた。


 一応、シアスおじさんの結界で致命傷は受けないことになっているけど、オリスア姉ちゃんは簡単にその結界を破ってくる可能性がある。全力でしのごう。


 そしてバルトスおじさんが「始め!」というと、オリスア姉ちゃんがダッシュしてきた。


 速い。けど、見える。バルトスおじさんが言っていた通り、集中して攻撃をしのぐんだ。


 背中から剣を振りぬく重い一撃。これを馬鹿正直に受けたら、アンリは地面に埋まっちゃう。フェル・デレを使って、攻撃を滑らかに受け流す。


 受け流した攻撃は地面に突き刺さってクレーターになった。アンリの足元がぼこっとへこむ。でも、体勢は崩してない。次の攻撃に備えないと。


 地面に突き刺さった剣が、全くスピードを変えずに横薙ぎしようとしてきた。それを冷静にフェル・デレで受ける。これは受け流しようがないので、自分から後方へ飛んだ。


 自分で飛んだんだけど、五メートルは飛んだと思う。オリスア姉ちゃんは馬鹿力すぎる。


 とりあえず、追っては来ないみたいだ。アンリを見てニヤリと笑った。


「アンリ殿、やるではないか。あの攻撃で倒す気だったのだがな!」


「まだ始まったばかりだし、皆も見てるからすぐには終われない」


「早めに決着をつけて、勇者の指導など大したことはないぞと証明したかったのだが」


 アンリはオリスア姉ちゃんの指導も受けてるんだから、その場合、オリスア姉ちゃんの指導も大したことないという証明にもなると思うんだけど。


「よし、次はこれだ!」


 またオリスア姉ちゃんが超スピードで迫ってきた。こういう戦いのときに笑って突撃してくるのを見ると、フェル姉ちゃんを追い込んだ本物の勇者を思い出す。あの人も笑いながらフェル姉ちゃんに攻撃してた。


 ……うん、負けられない。


 オリスア姉ちゃんは連続攻撃をしてきた。軽め、とはいってもそれなりに重い攻撃を何度もしてくる。これを一つ一つ躱すのは無理だから、フェル・デレで受ける。


 速い攻撃だけど集中すれば見える。バルトスおじさんの言った通りだ。下手に攻撃しようとせずに、防御に集中すればどんな攻撃もしのげる気がする。


 それにしても、オリスア姉ちゃんは化け物かな? 金属と金属がぶつかる音が絶え間なく聞こえる。それだけ速いってことだ。それにまったく衰える感じがしない。


 ここは我慢比べだ。手がしびれてきたけど、オリスア姉ちゃんが攻撃を止めるまで防御するんだ。


 それから二分、攻撃が止まった。そしてオリスア姉ちゃんはアンリと距離を取る。


 アンリもようやく深呼吸。オリスア姉ちゃんの攻撃はフェイントがないからありがたいんだけど、それでも神経を使う。


 そして周囲からは歓声が上がった。みんなも息を止めて見てたみたい。


「素晴らしいぞ、アンリ殿! まさかあの攻撃をしのぐとは思わなかった! 多少攻撃は受けていたが、致命傷を避けているようだし、見事だ!」


 オリスア姉ちゃんはすごく嬉しそう。でも、それはアンリに対して余裕があるってことでもある。これ以上の何かがあるってことなのかな?


「アンリ殿に敬意を示そう! 我が最強の一撃を持って仕留める!」


「オリスア姉ちゃん、悪いんだけど仕留めないで」


 オリスア姉ちゃんは肩にかけているコートを脱ぎ、被っている帽子も取って投げ捨てた。


 もしかしてバルトスおじさんを仕留めそうになったあの技をやる気? アンリだと死んじゃうかもしれないんだけど。


 そんなアンリの気持ちにオリスア姉ちゃんは気づかず、剣を上段に構えた。


「待て待て! アンリを殺す気か!」


「はっはっは! アンリ殿なら大丈夫だ! いくぞ!」


 その根拠を本人に示して。


 ……でも、よく考えたらあれはアンリが近づかなければ意味がない技だ。アンリは近寄らない。


「え?」


 遠くへ逃げようとしたら、オリスア姉ちゃんの周囲が薄い黒の半球体に囲まれた。というかアンリもその球体に入ってる。直径三十メートルくらいの大きさだ。


「アンリ殿! 残念ながらあの技は改良した! すでにアンリ殿は攻撃範囲内だ! 食らうがいい、オリスア流剣技! 夜叉!」


 オリスア姉ちゃんが剣を振り下ろして地面に叩きつけた。


 すると、周囲がすごく重くなった。もしかしてこの球体全部に重力魔法が掛かってる?


 そしてボコっと地面が沈んだ。これはいけない。いつのまにか体を動かせないくらい重い。しかもさらに重力が掛かってきた。フェル・デレさえ重い。


「アンリを殺す気か! その攻撃を止めろ! くそ! 皆はその球体には触れるな! つぶれるぞ!」


 バルトスおじさんが外から大声をだしているけど、オリスア姉ちゃんは聞いてない……ううん、オリスア姉ちゃんはアンリの方をじっと見つめてる。あれはアンリに期待している目だ。この状態でも何とかしろって言ってる気がする。


 どんどん重力が掛かってきた。早く何とかしないと。


 このまま負けるのは嫌。せめて一太刀浴びせたい。それくらいの力を見せなきゃ、フェル姉ちゃんには永遠に追い付けない。フェル姉ちゃんに今後会う時はアンリが成長したってところを見せたい……!


 ……さっきからなんだろう? アンリの頭に言葉が浮かんでくるんだけど……?


「【天上天下】?」


 なんとか口を動かして、魔力を乗せてその言葉を言った。


 よく分からないけど、何かが体を循環している感じになった。それに、あんなに重かった魔剣フェル・デレがいつものように軽くなる。しかも動ける。


 もしかしてオリスア姉ちゃんが技を解いたかと思ったんだけど、そんなことはなかった。オリスア姉ちゃんはアンリを見て驚いている。


 これはチャンスかも。この技はオリスア姉ちゃん自身も重力魔法が掛かっていて重くなっているはず。つまり今ここで動けるのはアンリだけ。しかもなんだか万能感がある。


 ピンときた。アンリはとうとうアルティメットアンリにクラスチェンジしたみたいだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] ここでアンリのスキルが解放されたのは熱い… 次の話が気になって憂鬱なはずの月曜日が楽しみです。
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