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少女と魔族と聖剣と  作者: ぺんぎん
第十五章

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恋愛の達人

 

 ディア姉ちゃん達がルハラへ来て一ヶ月が過ぎた。


 あれからずっとルハラ帝国はお祭りムード。最近ヴィロー商会本店に戻ってきたローシャ姉ちゃんも「稼ぎ時よ!」と言って頑張ってる。


 ニセ金のお話はまだ何も解決はしていないみたいだけど、最近ではお金を鑑定する魔道具を使って選別しているみたいだ。その魔道具にもヴァイア姉ちゃんが関わっているって言うから驚き。


 そういえば、クル姉ちゃんのドレスが出来上がった。コーラルオレンジのフリルが付いたちょっと大人な感じのドレスだ。


 今日はその最終調整とかでディア姉ちゃんが紅蓮の寮までやって来てくれた。それも終って今は寮の食堂でのんびりしてる。本当は部外者を入れちゃダメなんだけど、お祝い中だからってことで許可が出た。


「もうちょっと目立つ感じに作っても良かったんだけどね。まだ時間があるからもう少し攻めた感じにする?」


「あまり目立つのはちょっと……」


「まあ、そうだよね。主役のお姉さんよりも目立つのは良くないか」


 アンリとしてはいつだって主役を食う感じで臨んでいるけど、脇役に徹するという方法もあるみたいだ。確かにそれも名脇役って感じで粋な気がする。


「そういえば、リエル姉ちゃんにはドレスを作らないの?」


「リエルちゃんはそもそも進行役だからね。いつもの豪華な修道服だからドレスは着ないんだよ。あ、でも、ドレスは持って来てるはずだよ。前に作ってあげたし。たしかルハラの貴族さんからパーティの出席を依頼されていて、それを着てほとんど毎日参加してるって言ってたかな」


「そうなの? でも、ドレスは一回着たら次は別のにしないと、もう呼んでくれないとか」


「貴族ならそうかもね。貴族に服を仕立てるのは新作のお披露目みたいな部分もあるけど、仕立て屋からすると大事に何度も着て欲しいなって思うよ。その点、リエルちゃんは大丈夫だね」


「大丈夫って?」


「そういうのを気にしないタイプだから」


 ディア姉ちゃんがそう言うと、同じテーブルにいたレイヤ姉ちゃんが興奮した感じで手を上げた。


「貴族の中でもリエルさんは有名になってますよ! 毎日のようにパーティに参加してるのに着ているドレスは毎回一緒なんです!」


「えっと、同じドレスを着ていくと次のパーティには呼んで貰えないんじゃないの?」


「それがリエルさんにそれとなく指摘した方がいたらしいんですね。そうしたら、このドレスは友人が作ってくれた最高のドレスなので、これ以外のドレスで参加しては主催者様に対して失礼になってしまうのですよ、って答えたみたいなんですよ!」


 それを聞いたディア姉ちゃんが嬉しそうにしてる。


「リエルちゃんはそういうことで嘘はつけないから本心なんだろうね」


「アンリもいつかそういう場面があったらそう言うようにする。最高のドレスは一着あればいい。それが最強」


 そういえば、アンリがフェアリーアンリにクラスチェンジできるドレスはもう着れないかな。あれから結構背が伸びたし、今や結婚式の妖精役はニア姉ちゃんとロンおじさんの子供、ハクちゃんがやってるはず。妖精女王の称号はハクちゃんに受け継がれた。これから頑張って欲しい。


「他にもあるんですよ! リエルさんはパーティでたくさん食事をするようでして、今やそれがスタンダードになってるって言ってもいいくらいなんです!」


「そうなの?」


「ええ、全く周囲を気にしないで食べたいものを食べるスタイルみたいですね。しかも笑顔で美味しいって言うんですよ! それにパーティ中に料理人を呼んで美味しかったと感想を述べたものですから、料理人の人が泣いちゃったみたいで!」


 既存を壊していくスタイル。アンリも嫌いじゃない。


「さらには主催者の人にああいう料理人を雇っているというのは素晴らしいですね、と褒めるのですから、主催者は鼻高々ですよ! 最近ではぜひうちの料理をって誘っている貴族の方が多いみたいですよ! それに色々なお店の料理人も腕を上げようって頑張ってるみたいでして!」


「どうして?」


「聞いていませんか? リエルさんは毎日聖人教の教会へ出向いているみたいですよ。そこで一時間くらいお祈りをしてから、町で食事をするみたいなんです。どんな小さなお店でも出向くみたいで、リエル様に来てもらおうって色々アピールしているみたいです。それにリエル様が寄ったお店はお客さんも多く来るのでものすごい経済効果ですよ!」


 お祈りってお昼寝のことだと思う。それはいいんだけど、リエル姉ちゃんは色々怖い。普段を知っていると、誰それって感じの情報が続々と集まってくる。


 もしかしてアンリの知っているリエル姉ちゃんとは別人でもいるのかな……?


 まさかドッペルゲンガーのペル兄ちゃんが影武者として……?


「それに知ってますか!?」


 そう聞かれて知ってるとは言えないんだけど、まだ何かあるのかな?


「えっと、なんのこと?」


「リエルさんはあれほどの美しさですからね、ルハラの男性貴族がアピールしてるんですよ」


 もしかしてそれが狙いでリエル姉ちゃんはパーティに参加してるのかな?


 素早くディア姉ちゃんにアイコンタクトを送る。すぐに頷いた。以心伝心。つまり、そういう理由で毎日のようにパーティに参加してるんだ。


 ということはモテモテなのかな。もしかしたら運命の人に出会えたのかも。


「いやぁ、でも、さすが聖母様って感じですね。そういうアプローチには全くなびかないとか」


「それは偽物。今すぐリエル姉ちゃんを調べないと危険」


 ディア姉ちゃんもスザンナ姉ちゃんもクル姉ちゃんも頷いた。


「えっと、どうしたんです?」


「リエル姉ちゃんはそんな人じゃない。一言目には結婚しようって言うに決まってる。いつの間にか偽物と入れ替わってる」


「結婚しようって家族になりましょうってあれですね? ローズガーデン出身の方がそう言っていますが……」


 そうじゃない。確かに家族になりましょうって意味だけど、そういう意味じゃない。


「アンリさん達はこちらですか?」


 食堂全体がざわっとなる。食堂の入口からリエル姉ちゃんとマナちゃんが入って来た。


「リエル姉ちゃん、ちょっとこっちに来て。そしてちゃんと答えて」


「どうかしましたか? ……というか、なんだよ、皆で真面目な顔して。最近聖母モードが長いから疲れんだよ。お前等の前ではゆっくりさせてくれよ」


 リエル姉ちゃんの特徴を掴んではいるけどまだ偽物っぽい。


「リエル姉ちゃん、結婚を諦めたの?」


「諦めるわけねぇだろうが! 頑張ってんだ……頑張ってんだよ……」


「でも、貴族さんとのパーティでアプローチされているのに全然なびかないって情報を得た。アンリの知ってるリエル姉ちゃんならそんな真似は天地がひっくり返ってもしない」


「あん? なんで知ってんだ?」


「それはこの情報通のレイヤ姉ちゃんから聞いた。貴族の噂なら何でも来いって感じの頼れる情報屋さん」


「ああ、アンリ達からの話で聞いてるぜ。仲良くしてくれてるんだってな。これからもアンリ達のことをよろしく頼むぜ」


「は、は、はい! といいますか、どちらかと言うと私が仲良くしてもらっている感じでして! あと、リエルさんのファンです! 聖人教ではありませんが、素晴らしい方だと思ってます!」


 レイヤ姉ちゃんはものすごく緊張している感じだ。アンリ達にはいまいち分からない感じだけど。そしてマナちゃんがうんうんと頷いてる。


「俺なんか全然素晴らしくねぇよ。まあ、それはいいとしてなんだっけ?」


「アプローチを断ってるって話」


「ああ、それか。ルハラの貴族は確かにイケメンが多いんだが、今一歩足りねぇ」


「ええと、どんなところが?」


「俺にアプローチしてくるのは構わねぇんだが、配慮が足りねぇ」


「配慮?」


「そうだ。俺はパーティに参加している時は常にマナが一緒だ。そのマナをほったらかしにしてアプローチをかけてくる奴はダメだな。マナは俺の娘だ。俺にアプローチするならまずはマナを気にかけてくれねぇと」


 マナちゃんの目から大量の涙が出た。滝と言っても過言じゃない。


「うお、なんだよ。まったく泣き虫だな。ほら、ハンカチで拭いてやっから」


 リエル姉ちゃんがマナちゃんの顔を拭いてる。


 そしてディア姉ちゃんは溜息をついた。


「普段は聖人っぽいのに、なんで誰かの結婚のときは暴れるのかなぁ」


「それはそれ、これはこれだ。お、ところでさ、アプローチで思い出したんだけど、紅蓮の団長にルートっているんだろ? すげぇイケメンだって聞いたんだけどマジか? 紹介してくれ」


「ちょ、待って! 待ってください! ルートはダメ!」


 クル姉ちゃんが必死だ。理由は知ってる。クル姉ちゃんはルート兄ちゃんといい感じだ。


「んん? でも、ルートって独身だって聞いたぞ、ロックっていう上半身裸の奴に。妻がいないなら誰にでもチャンスがあるはずだ! つまり俺にもある!」


 暴論だけど間違ってはいないのかな。でも、色々な事情を知ってるアンリからするとそれはダメ。


「えっとリエル姉ちゃん、実はルート兄ちゃんとクル姉ちゃんはいい感じになってる。いつ頃告白するか賭けに発展するくらいに。みんなそれを暖かく見守ってる。ちなみにアンリは三年後に賭けた」


「え……?」


「私は四年後に賭けた。間違いない」


「自分はルート団長から一年後くらいに告白されるって方に賭けました! なぜか大穴扱いですが!」


「え? 皆、何言ってんの? というか賭けってなに?」


 本人非公認の賭けだからクル姉ちゃんが知らないのも無理はない。内緒ってわけじゃないから暴露したけど、もしかしたらこれでオッズが変わるかな?


「なんだよ、すでにいい感じなのかよ。なら安心しろ。そういう男には結婚してくれなんて言わないから。あまり節操なく言うと、またフェルの奴に怒られるからな!」


 リエル姉ちゃんは笑いながらそう言った。そしてスザンナ姉ちゃんがなぜかものすごく笑顔になってる。


「でも、まだ付き合ってないのか? おし! そういうことなら恋愛の達人と言われた俺の極意を教えてやるぜ!」


「恋愛の達人って、リエルちゃんの自称だよね?」


 ディア姉ちゃんの言葉は自然な形で無視された。


 でも、自称だとしても極意と言うのは気になる。恋愛だろうと何だろうと、必殺技が必要。後学のために聞いておこう。


 ディア姉ちゃん以外はみんな同じ気持ちなのか、リエル姉ちゃんのほうへ顔を寄せた。


 クル姉ちゃんがごくりとつばを飲み込む。


「その極意ってなんでしょう……?」


「裸エプロンだ」




 その後の記憶があまりないけど、クル姉ちゃんはしっかりメモを取ってたみたいだ。でも、真面目に聞いて意味があったのかよく分からない。なんか記憶が飛んでるし。


 うん、そういうのはもう少し大きくなってからにしよう。


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