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少女と魔族と聖剣と  作者: ぺんぎん
第十五章

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魔女のアドバイス

 

 ここにオアシスを作るためには魔力量が多い人が魔道具を使わないとダメみたいだ。そして魔力が多いと言えば、フェル姉ちゃんかヴァイア姉ちゃん。


 まずはフェル姉ちゃんに連絡してみよう。


 すぐには来れないだろうけど魔力量ならかなりあるはず。ここにオアシスを作るくらい余裕だと思う。


『フェル姉ちゃん、聞こえる?』


 ……念話を送ったけど返答がない。


 そうだ、よく考えたら地下墳墓に行ってるんだった。あそこって念話が通じない場所だから送ってもだめなんだ。


 ならヴァイア姉ちゃんだ。


『ヴァイア姉ちゃん、聞こえる』


『あれ? もしかしてアンリちゃん?』


『そう、アンリ。こんにちは、ヴァイア姉ちゃん』


『わぁ、ひさしぶりだね! アンリちゃんから連絡をくれるなんて嬉しいよ! 私に用事かな!?』


 なんかすごく嬉しそう。アンリも連絡した甲斐があるというもの。


『うん。実は今、ウゲン共和国のピラミッドに来ているんだけど、ここにオアシスを作る話があるんだ』


『……うん?』


『水を作る魔道具があるんだけど、それに魔力をたくさん通さなくちゃいけなくて、ヴァイア姉ちゃんにお願いしようかと思って』


『ええと、何がどうなってそういう状況になっているのかは分からないけど、大体分かったよ』


 ヴァイア姉ちゃんはお話が早くて助かる。さすが魔術師ギルドのグランドマスターだ。


『でも、ごめんね、アンリちゃんのお願いなら助けたいんだけど、私って魔術師ギルドのグランドマスターだから勝手にここを離れられないし、それだと仕事ってことになるからお金が発生しちゃうんだよね』


『そうなんだ……出世払いでもダメ?』


『うん、ダメなんだ。一応私ってオリン魔法国でも結構な位置にいる人扱いで、そう簡単には他国へ行けないというのもあるんだ。柄じゃないんだけどね』


『でも、ソドゴラ村にはちょくちょく来てるよね?』


 リンちゃんとかモスちゃんとか、ノスト兄ちゃんを連れて良く妖精王国に転移してたはず。あれは別にいいのかな?


『ソドゴラ村はどこの国でもないからね。それに村とオリン魔法国は仲良しみたいなものだから』


 これは盲点だった。ヴァイア姉ちゃんは確かにオリン魔法国に住んでる。戦争みたいなことはなくなったけど、簡単には移動できないのかな……フェル姉ちゃんは色々な場所へ行ってるけど、どの国にも所属してないし、魔族だからいいのかな?


 でも、困った。フェル姉ちゃんが地下墳墓から外に出るまで待つしかないのかも。


『アンリちゃん、ちょっといいかな?』


『なに? もしかしてお忍びで来てくれるとか? アンリの口は堅いから安心して。ちょっと変装して、謎の美少女グランドマスターになってくれれば、誰にもバレない』


『……もう美少女って歳じゃないかなー……』


 すごく声のトーンが低い。昔はエルフの森に謎の美少女雑貨屋さんとして行ってたから、今回もそのノリで来てくれるのかと思ったんだけど。


 それと今気づいた。昔は美少女だったってことをそれとなく言っている……! アンリも良く言うけど。


『えっと、そうじゃなくてね、直接行くのはできないけどアドバイスはできると思うんだ。アンリちゃんがいるならスザンナちゃんもいるよね?』


 スザンナ姉ちゃんの方をちらりと見ると、首を傾げて「なに?」って顔をしてくれた。アンリは「ちょっと待って」とアイコンタクトを送る。


『うん、アンリと一緒にいるけど?』


『それなら何とかなるかもしれないよ。スザンナちゃんなら天候操作の魔法が使えるよね? それで雨を降らせながら魔道具に魔力を通すとかなり効率がいいはずだよ。オアシスをどれくらいの大きさにするのかは知らないけど、スザンナちゃんならやれると思う』


『効率がいい……そうなの?』


『うん。魔法ってほんのちょっとの精霊の力にも影響をされやすいんだよね。まあ、微々たるものなんだけど、周りに水がある方が水を作る魔道具も魔力消費量が低い上に作れる量が増えるって研究結果があるほどなんだよ! それは大気中の水が魔素に反応して――』


『ヴァイア姉ちゃん、それは後にして』


『あ、ごめんね。簡単に言うと、近くに水があると、魔道具の反応もいいってことかな!』


 精霊の力に影響されやすい……ということは水の精霊さんを直接呼べばいいんじゃないかな?


 魔剣フェル・デレは精霊の宿る剣。お願いすれば力を貸してくれるかも。


『それじゃスザンナ姉ちゃんにちょっとやってもらうね。また連絡するから』


『うん。それじゃまたね』


 念話が切れた。さっそくスザンナ姉ちゃんに試してもらおう。


「あの、アンリ様はさっきから黙ってますが、お疲れですか? テントに戻ります?」


 レイヤ姉ちゃんが心配そうにアンリの顔を覗き込んできた。念話中ずっと黙ってたからアンリが疲れたと思ったのかも。


「ちょっと念話してただけだから大丈夫。アドバイスを貰えたからもう一度試してみよう」


 アンリの言葉に皆の視線が集まる。やるのはアンリじゃないんだけど、こういうのはちょっと気分がいい。


「誰のアドバイスなんだ?」


 でも、バランおじさんはちょっと疑いの目だ。やれやれ、アンリの交友関係を甘く見てもらっちゃ困る。


「ヴァイア姉ちゃん」


「……誰だ?」


 クル姉ちゃんはびっくりしているみたいだけど、ほかの人はちょっと首を傾げてる。よく考えたらヴァイア姉ちゃんじゃ通じないのか。


「魔術師ギルドのグランドマスターですよ。ヴァイアさんは以前ソドゴラ村に住んでいてアンリ達の親友なんです。私も一時期魔法を教わってましたから間違いないです」


 クル姉ちゃんがそう言うと、みんながびっくりしてた。


「本当はヴァイア姉ちゃんに直接来てもらおうかと思ったんだけど、勝手に他国へ行くのは問題があるみたい。あと、アンリのお願いでもお金が発生しちゃうとか。出世払いでもダメだった」


 アンリがそう言ったら、バランおじさんが呆れた顔をした。


「当り前だ。魔術師ギルドのグランドマスターと言ったら、人界で最高の魔法使い、魔女と言われている人だぞ。この魔道具を作ったのもその人だ。そんな人が勝手に国を離れられるわけがないだろう」


 そういえば、フェル姉ちゃんがそんなことを言ってたっけ。ヴァイア姉ちゃんが魔道具を作ったって。でも国を離れられないっていうのは間違い。他の国へ行けないだけ。ヴァイア姉ちゃんは結構ソドゴラ村に来てる。


「その人から直接アドバイスを貰えたのか――ありがたい話だ……どうもお前達と一緒にいると調子が狂うな」


 調子が狂うとは言っても笑っているならいいのかな?


「それで、アンリ、私はどうすればいいの? さっき私を見たのは私が何かするんだよね?」


「うん、天候操作の魔法で雨を降らせてから魔道具に魔力を込めると効率がいいんだって。オアシスをつくるならスザンナ姉ちゃんだけでもできるんじゃないかってヴァイア姉ちゃんが言ってた」


「どういう理屈なのか知らないけど、雨を降らせればいいんだね? 【天候操作】【雨】」


 スザンナ姉ちゃんがそう言うと、はるか上空に黒い雲がもくもくと広がった。そしてぽつぽつと雨が降ってくる。


「て、天候操作の魔法が使えるのか……」


 バランおじさんを筆頭に皆がスザンナ姉ちゃんの方を見て驚いている。クル姉ちゃんは呆れた感じで笑っているけど。


「……よく考えたら、これで砂漠を移動すればよかった」


 いつもクールなスザンナ姉ちゃんがちょっと悲しそうだ。確かに雲のおかげで日影ができてるし、雨はちょっとぬるいけど気持ちいい。


「スザンナ姉ちゃん、この次はこの魔道具に魔力を通して。普通よりも少ない魔力で水が出るってヴァイア姉ちゃんが言ってた」


「分かった。やってみる」


 おっといけない。精霊さんの力を借りるんだった。


「ちょっと待って。アンリも用意するから」


 亜空間から魔剣フェル・デレを取り出す。


「【一色解放】【青】」


 フェル・デレの刀身が青く光る。これで水の精霊が宿る剣になった。


「水の精霊さん、これからここにオアシスを作るから手伝って」


 何となくだけど、剣から喜びの声が聞こえてくる。でも、火と土の精霊さんからはちょっとブーイングな感じの声も聞こえてきた。砂漠だからかな?


「スザンナ姉ちゃん、こっちは準備できたから、やってみて」


 スザンナ姉ちゃんは頷くと祭壇にある魔道具に手を乗せた。そして魔力を通す。


 ……なんか大理石の柱が震えるほど水が出てる。しかもくぼみの底にはあっという間に水が溜まってきた。あと数時間もすればオアシスになるんじゃないかな?


 でも、普通なら砂が水をどんどん吸っちゃうと思うんだけど……? もしかしたら何かやっているのかな?


 そんなふうに思っていたら、オルドおじさんが笑い出した。クル姉ちゃんもお腹を抱えて笑ってた。他の皆は口を開けてボケっとしてるけど。


「さすがフェルの親友だけのことはある! 実際にオアシスになるのは数年かかると思っておったが、こうも簡単に作るか! うむ! ならば今日は宴じゃな! オアシスができることを喜ぼう!」


 それは素敵。ぜひとも参加させてもらおうっと。


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― 新着の感想 ―
ついでに土の精霊に水を通さないようにお願いすれば完璧でしたね
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