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少女と魔族と聖剣と  作者: ぺんぎん
第十五章

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オアシス

 

 今日のアンリは昨日のアンリに文句を言いたい。


 砂漠を舐めてた。ものすごく暑い。太陽さんが本気出しすぎ。雲さんとか雨さんはもっと頑張ってほしい。


 今はスザンナ姉ちゃんの水竜に乗って低空飛行で飛んでいるけど、水に触っていても暑い。汗が止まらないし喉が渇く。こんなところにずっといたらアンリは干からびちゃう。


 でも、アンリはまだマシな方かも。スザンナ姉ちゃんは革製の服だからもっと暑いと思う。いつもビシッと着ているけど、今日はかなり着崩してる。大丈夫って言ってるけどあれは我慢しているんだと思う。


 アンリは以前、スカート的な服が多かったけど、今はパンツスタイル。布製だから風通しはいい方なんだけど、それでも暑い。というよりもこの日よけ用のフード付きマントを着けているのが暑さを増幅していると思う。でも、これを取ったらダメだめみたい。肌が火傷しちゃうとか。


 アンリはお母さんのおかげで熱耐性スキルを持っているはずなんだけど、太陽には効かないみたい。もしかすると、熱耐性スキルじゃなくて猫舌無効スキルだったのかも。


 こんな過酷なところで良く獣人さんは平気だなって感じだ。そもそも砂だけじゃ作物が育たない。もうちょっと湿り気のある土というか、水がないとダメだ。この砂漠で水があるのはオアシスだけだって言うし、獣人さん達は本当に大丈夫なのかな?


 その点、ソドゴラ村はマシだったと言えるのかも。確かに周囲には危険な魔物さんが多かったけど、今はジョゼちゃん達のおかげでかなり安全。ソドゴラ村を襲うようなモグリの魔物さんはもういないと思う。


 そういえば、魔界はもっと過酷だとか聞いたことがある。そもそも物理的に生きられる場所がダンジョンの特定階層だけで、地表は致死性のなにかがあるみたい。


 魔族さんでも五分と持たずに絶命するとか。地表を探索する魔族さん達もいるみたいだけど、体を魔力でコーティングしないといけないから、あまり遠くまで探索できないとかも聞いたかな。


 そしてダンジョンの中にも危険な魔物でいっぱいだとか。さらには食べ物もほとんど育たないし、いつも危険と隣り合わせらしい。


 フェル姉ちゃんのおかげで食料問題は色々と解決したとかは聞いてるけど、それでも大変なんだとは思う。


 魔族さんも魔界じゃなくて人界に住めばいいのに。ソドゴラ村ではいつでもウェルカム。なんだったらアンリが人界を征服したら、魔族さんのための土地を作ってあげよう。そしてフェル姉ちゃんに管理を任せれば完璧だ。


 うん、いつか提案してみよう。


「スザンナ、アンリ、そっちは大丈夫? 暑くない?」


 クル姉ちゃんがラクダの上からこっちを心配してくれた。


「平気じゃないけど平気って言っておく。クル姉ちゃん達は平気?」


「正直だなぁ。まあ、こっちも平気じゃないけど、泣き言は言えないね。オアシスに着いたら水浴びできるからそれまで頑張ろう」


 その言葉にスザンナ姉ちゃんのやる気が漲った。言葉にはしてないけど、アンリには分かる。こう、オーラ的に。


「そういえば、バランおじさん達は平気?」


 護衛の人とお弟子さんの方は大丈夫です、と汗ダラダラで言ってきた。バランおじさんはアンリの言葉に気づいていないのか、黙ったままラクダに揺られている。


 無視しているってわけじゃなくて、考え事をしていて気づいていない感じだ。


 昨日からそんな感じだけど、ニセ金のことで考え込んでいるのかな?


 あの場でいきなりフェル姉ちゃんからそんなことを言われたらびっくりするのも分からないでもないけど。


 まあいいや。アンリも余計なことを考えていたら、倒れるかもしれない。アンリはまだまだ子供だけど、皆の足手まといにならないように気を付けないと。


 よし、気合をいれよう――よく考えたらアンリは何もせずに水竜に乗っているだけだった。


「スザンナ姉ちゃん、アンリは何かしたほうがいいかな?」


「大丈夫、でも、いつもみたいに私に抱きつくのは無し。そういう時は水竜に抱きついて」


 アンリも今は汗をかいているからそんなことはしたくない。うん、とりあえず、スザンナ姉ちゃんの邪魔はしないようにしておこう。



 夕日が砂漠の地平線に沈むちょっと前、クトーニアというオアシスに着いた。


 砂漠にぽつんとあるオアシスはなんとなく不思議。地下から水が湧いているという話だけど、もっと遠慮なく湧いてくれていいのに。


 オアシスの周りには変な形の木がなっている。クル姉ちゃんの話だと、あれはヤシの木。ものすごく硬いけど、甘い感じの汁が入ってて美味しいとか。それはぜひとも飲んでみたい。


 色々な場所でそこの名産的な物を食べたり飲んだりするのはちょっと楽しい気がする。


 フェル姉ちゃんが人界中の遺跡に行っているのはもしかして――まさかそんなことはないと思う。


 あとはこのオアシスじゃないけど、パイナップルを作っているとか。紅蓮の宴で食べたけど、あれは美味しいからぜひとももう一度食べたい。


 そんなことを考えていたら宿に着いた――宿って言うか、これはアンリの知識だとテントだと思う。


 アンリのそんな疑問は解決することなくここに泊まることになった。


 犬の獣人さんに案内されてアンリ達が寝るテントまで来た。かなり大きくて五人全員が寝れるみたいだ。


 中にベッドは無くて派手な絨毯というか布が敷かれているだけだ。一応寝床には柔らかそうな布が置かれている。


 昨日はふかふかのベッドだったんだけど、今日は地面に寝るみたいだ。アンリは大丈夫だけど、皆は疲れが取れるかな?


 亜空間にベッドでも入れておけば良かったかも。


 バランおじさん達はお隣のテント。あっちは三人で泊まるみたい。


「それじゃ今日はもう自由時間ね」


 クル姉ちゃんがそんなことを言いだした。アンリ達は護衛の仕事で来ているんだから全員で自由になっちゃいけないと思う。


 それを聞いてみたら、獣人さんがテントを守っているから安心だって話だった。


 獣人さんは人族に危害を加える人を例え同胞でも許さないみたい。その辺りはかなり厳しいようで、かなり重い罰則があるとか。


 ただ、理由がフェル姉ちゃんの顔に泥を塗る行為だからって理由みたいだ。


 どうやら、ウゲン共和国にいる獣人達を救ったのがフェル姉ちゃんとヤト姉ちゃんという話になっていて、英雄扱いだとか。


 よくよく考えたら、フェル姉ちゃんはヴィロー商会を通してウゲン共和国に食料を売るようにお願いしてたみたいだし、当然といえば当然なのかも。


 フェル姉ちゃんの影響力が高くて怖すぎる。


「そんなわけだから皆で食事前に水浴びでもしようか? 砂漠の砂とか汗を流しておかないとね!」


 普段クールなスザンナ姉ちゃんから殺気にも似たオーラが出てる。かなり入りたいと見た。


「分かった。皆で水浴びしよう。こういうところなら、アンリの秘宝の一つを見せる。封印中だけど今日は特別」


「持って来てたの?」


 スザンナ姉ちゃんにはアンリの九大秘宝を置いてくる話をしていた気がするから、アンリが持っていたのを不思議に思っているみたい。でも、甘い。汎用性のある秘宝は持って来てる。


「うん、この子は友達を亡くしたけど、そんなことではへこたれない。今日、長い長い封印を解く」


「アルフレッド……」


 スザンナ姉ちゃんが悲しそうだ。アンリも悲しかった。あの時はヤト姉ちゃんが慌てた感じだったし、かなり驚いちゃった。かなり前のことだけど結構覚えてる。


「いや、アルフレッドは無事だったって言ってたよね?」


「まあ、そうなんだけど」


 今日も元気にヤト姉ちゃんにお風呂で攻撃されていると思う。あれを攻撃しなくなった時、ヤト姉ちゃんはもう一つ上の獣人になれるとか言ってたけど、それはよく分からない。


 まあいいや、それよりもジェット大王イカの力を見せつけよう。


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― 新着の感想 ―
[一言] 更新ありがとうございます。 懐かしい友との再会の様で、とても嬉しいです。 アルフレッド、生きてたのかい。 というか、そんなお名前でしたっけ? ヤトさんの終生のライバルでしたよね、確か。 多分…
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