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少女と魔族と聖剣と  作者: ぺんぎん
第十五章

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スライム恐怖症

 

 スライムがいる部屋の前で十分ほど経過した。


 だって仕方ない。ソドゴラ村には最強とも言えるスライム、ジョゼちゃん達がいる。スライムと戦うという意識が今までなかった。というか、戦っても無駄というイメージが染みついてる。


 むしろ、フェル姉ちゃんよりも厄介。フェル姉ちゃんに勝つイメージはまだないけど、やりようがあるとは思ってる。でも、ジョゼちゃん達にはない。


 たとえどんなに強くなったとしても、なんとか話し合いで解決したいって思ってるほどだ。フェル姉ちゃんよりも敵に回したくない。


 部屋の中にいるスライムはジョゼちゃん達よりも絶対に弱い。それは間違いないんだけど、なんかこう、戦うイメージをすると、すべてが無効化されて返り討ちにあう気がする。まともに戦ったこともないのに負け癖がついた気分。


「えっと、スザンナもアンリもどうしたの? 中にいるのはスライムだよね?」


「知らないって言うのはある意味最強だと思う。アンリ達は最強のスライムちゃん達を知ってるからおいそれとスライムとは戦えない」


「ああ、もしかしてソドゴラ村にいるジョゼちゃん達のこと? 私は戦っているのを見たことがないんだけど、そんなに強いんだ?」


「強いって言葉で言い表すのが正確だとは思えないくらいには強い。敵対したら生き残れないと思う」


「……スライムだよね?」


「スライムだからだとも言う」


 フェル姉ちゃんのせいじゃないけど責任を取って欲しい。アンリとスザンナ姉ちゃんはスライム恐怖症に陥った。別にジョゼちゃん達を怖いとは全く思ってない。でも、今後、アンリ達がスライムに勝つ可能性はかなり低いと思う。


「ここはクル姉ちゃんに任せる。今のアンリ達は簡単に言うとでくの坊。たぶん、役に立たない」


「えぇ……? まあいいんだけど、それじゃスライムの弱点をしっかり確認しておこうか」


「うん、それじゃまずはアンリからの情報。ジョゼちゃんに聞いた話だと、火山の火口に落とされたらマグマで燃えるかもしれないって言ってた。唯一の弱点かも」


「それはスライムだけじゃなくて、みんなの弱点だと思うよ。だいたい、どこにマグマがあるの。そんな魔法もないよ」


「ならお手上げ」


「いやいや、普通スライムって燃えるから。フェル・デレで火の精霊の力を借りればアンリでも大丈夫だって。たぶん、炎蛇でもいける」


 ジョゼちゃんならその炎蛇ですら食べちゃうんだけど。この部屋にいるスライムも同じことをできるかもしれない。


 スザンナ姉ちゃんが手を上げた。


「たしか、スライムには核があってそれを破壊すれば死ぬって聞いたことがある。逆にそれが残っているかぎり絶対に死なないとか」


 そういえば、アンリもフェル姉ちゃんからそんな話を聞いた気がする。スライムちゃん達もある意味不老不死だって、嬉しそうに言ってたかな?


「そうだね、たしかウル姉さんが核だけ狙ってスライムを倒していた気がするよ。核だけ破壊すると、スライムゼリーというのが残って、それが肌にいいって言ってた気がする」


「ならクル姉ちゃんが炎で燃やして、核を破壊する。それで行こう。危なくなったら部屋から出ればいい。逃げるが勝ち」


「こんなところにいるスライムだから確かに危ないかもしれないけど、そんなに警戒する必要があるのかな……?」


 クル姉ちゃんは分かってない。ジョゼちゃん達が本気を出したら、人界が滅ぶと言ってもいいくらいなのに。そんなポテンシャルをスライムは持っていると思ったほうがいい。舐めちゃいけない。


「それじゃ扉を開けるよ。基本的にクルが対処して。私やアンリはいないものと思ったほうがいい」


 クル姉ちゃんは納得のいかない顔をしながらも頷いた。もちろん、アンリも頷く。


 スザンナ姉ちゃんが扉を開けて、クル姉ちゃんが最初に入った。アンリもそれに続く。そうしたら、部屋の扉が自動的に閉まった。もしかして閉じ込められた? これは逃げられないかも。


 でも落ち着こう。アビスちゃんのダンジョンでもこういうことはよくある。冷静に判断しないと。


 部屋の中は結構広い。だけど、中にいるスライムも結構大きい。ドロドロの粘液が流動していて、ちょっと不気味だ。


「あのスライムは魔力に反応して襲ってくるから気を付けて」


 スザンナ姉ちゃんのトカゲがこのスライムに倒されたんだっけ。スザンナ姉ちゃんの魔力で作った水をトカゲにしてたから、それに反応したんだ。


「うん、気を付けるよ。なら先手必勝だね。派手に燃やすよ。【炎蛇】!」


 巨大な炎の蛇がスライムに襲い掛かる。それに反応するようにスライムの粘液も炎の蛇に襲い掛かった。そして衝突。


 そうしたらスライム全体に炎が燃え移った。巨大な粘液の塊がかなり激しく燃えてる。ここまで熱さが伝わってくるほどの大きな炎だ。


「あ、ヤバい! スザンナ! あの火を消して! 空気がなくなる!」


「あ!」


 クル姉ちゃんの声に従って、スザンナ姉ちゃんは水を使って炎を消した。どうしたんだろう?


「なんで火を消しちゃったの? あのまま燃やしたら勝てたんじゃないかな?」


 スザンナ姉ちゃんが首を横に振った。


「アンリ、村長さんから教わったでしょ。密封された部屋で火をつけたら空気が無くなって危ないって。入って来た扉が閉まってるし、ここで火を使うのはダメ。冒険者でもダンジョンで火を使う時は気を付けろってよく言われてる」


 空気が無くなる……? そっか、あのまま火をつけているとこの部屋の空気が無くなってアンリ達のほうが危なかったんだ。


 つまり、あのスライムを燃やすのは無理。なんて戦術。部屋を利用して自分の弱点をカバーしてるなんて。やっぱりスライムは侮れない。ジョゼちゃん達ほどじゃなくても頭脳派だ。


「やばいね、火をつけられて怒ってるよ」


 クル姉ちゃんの言葉を聞いて、アンリもスライムを見る。


 なんだか粘液の動きが激しい。あれが怒ってるんだ?


 でも、どうしよう? 火で燃やす作戦はできない。ということは核を破壊するしかないのかな?


 そんなことを考えていたら、鞭状の粘液がアンリのほうへ来た。それをフェル・デレで叩き斬る。攻撃してきたときの勢いで、切れた部分が勢いで壁にぶつかりべちゃってなった。


 粘液も斬ることはできるみたいだ。ジョゼちゃん達は硬質化という状態になって斬れないんだけど。


「アンリ、クル、私が核を見つけて攻撃するから、二人で私を守って」


 スザンナ姉ちゃんがやる気だ。うん、アンリもやる気を出そう。こんなところで足止めされるわけにはいかない。どう考えてもこのスライムはジョゼちゃん達よりは弱いんだ。悲観することなんて何もない。スライム恐怖症は克服する。


 クル姉ちゃんと一緒にスザンナ姉ちゃんのそばに集まる。


 そして襲ってくる粘液の鞭を何度も斬った。クル姉ちゃんも持っている杖でぶん殴ってる。スザンナ姉ちゃんは水を槍みたいな状態にして、攻撃のチャンスを窺っているみたいだ。


 アンリには見えないけど、核ってどこにあるんだろう? そもそもどういう物なのかも知らないんだけど。


 スザンナ姉ちゃんは片膝をついて、スライムのほうを凝視しているみたいだけど、どこにあるのか分かっているのかな?


「そこ!」


 スザンナ姉ちゃんが声を出すと、水の槍が高速でスライムに突き刺さった。一瞬だけスライムの動きが止まったと思ったら、粘液がドロドロになって地面に広がる。


 もしかしてこれで勝ち?


「えっと、アンリ達の勝ち?」


「なんとか核へ当てることができたよ。ほら、アレ」


 スザンナ姉ちゃんが指を差したところには、割れた赤い球みたいなものが粘液の中に埋もれていた。


「これがスライムの核?」


「そうだね。これさえ破壊すればスライムもタダの粘液だよ……良かった、普通のスライムだったよ。ジョゼちゃん達みたいなスライムだったらどうしようかと思ったからね」


「うん、そうだったら勝てなかったと思う。弱いスライムでよかった。頭脳派ではあったけど」


「いまいちアンリ達のスライムに対する評価が分からないんだけど、スライムって本来こういうものだよ? 火が使えないというのは確かに危なかったけど」


 基本的にスライムって何も効かないってイメージがあるんだけど、そのイメージがおかしいのかな?


 でも、今回のことで少しだけスライムに対する耐性を得た気がする。これでスライム恐怖症は克服だ。


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