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少女と魔族と聖剣と  作者: ぺんぎん
第十五章

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ヴィロー商会本店

 

 お日様が結構高くなってきた午後二時。紅蓮の施設で強さを見せつけたアンリはスザンナ姉ちゃん、クル姉ちゃんの三人でヴィロー商会の本店にやってきた。


 ローシャ姉ちゃんが会長をやってるヴィロー商会はこの帝都キャラスに本店がある。ソドゴラ村にあるお店は支店だ。あっちはラスナおじさんが店長として頑張ってる。


 明日のダンジョン探索のために冒険者用の道具を買いにやってきたわけなんだけど、ちょっと難航中だ。


「申し訳ないけど、ローシャ会長の知り合いには思えないんだよね」


 本店にいる若い店番の人にローシャ姉ちゃんに会いたいって言ったけどダメっぽい。アンリ達が知り合いだと言っても信用してくれないみたいだ。


 でも、それは仕方のないことなのかも。知り合いだって言って会わせてくれるなら、嘘でも会えることになる。商人さんは顔つなぎというか、まずは知り合いになるが大事とかラスナおじさんに聞いたことがあるし、そう簡単には会わせてくれないのかも。


 ローシャ姉ちゃんがアンリ達を見れば一発で分かるんだけど、どうしたものかな。


 今回はダンジョンを攻略するわけじゃなくて救出のためだ。お腹を空かしているだろうし、もしかしたら怪我をしているかもしれない。残念だけどマナちゃんがいないからポーションに頼るしかない。


 ルート兄ちゃん達は全部で六人パーティ。たくさんの食料と薬を持っていかないと危険。ローシャ姉ちゃんなら多少無理を言っても色々揃えてくれそうだから頼りにしてたんだけど。


「なんだか騒がしいな。どうかしたのか?」


「あ、バランさん。いえ、この子達がローシャ会長の知り合いだから会わせてほしいと言っているのですが……」


 店の奥の方から、結構体の大きな男の人がやってきた。年は五十代くらいで、茶色の髪をぼさぼさにしてる。それに口の周りに髭があって結構ワイルド。でも、お店の人なのかな? 店員さんだとしたら見た目でかなり減点だと思う。


「おいおい、もしかして紅蓮の幹部か?」


 バランと呼ばれていたおじさんが、クル姉ちゃんを見てそんなことを言った。


「ええ、そうです。大量に食品と薬を買いたいので、ローシャさんにお願いしたいと思ったのですが」


「ははぁ、ダンジョンで行方不明になった人がいるって聞いた気がする。その救出か」


 さすが商人さんと言えばいいのか、そういう情報はちゃんと持っているみたいだ。


「でも、悪いな。いま、ローシャの奴は仕事で別の町へ行ってるんだ。帰ってくるのは早くても三日後だ」


「そうでしたか……」


「まあ、安心しな。俺が対応してやるから。それじゃこの子達のことは俺に任せて、お前は店のほうをやってくれ」


 バランおじさんが対応してくれた若い人にそう言うと、若い人はちょっと難色を示したけど、最終的にはおじさんに任せて別の場所へ行っちゃった。


 そしてバランおじさんとアンリ達だけが残る。


「それじゃ細かいところを確認したいからこっちの部屋へ来てくれ」


 おじさんに連れられて別の部屋に入った。


 部屋は商談をするための場所なのか、結構お高そうな家具が置かれた部屋だった。ふかふかの大きな椅子もあるし、見事な細工の机もある。ここで商談なんかしたら相手に飲まれちゃうかも。これは罠の部屋だ。


「さて、お嬢ちゃん達、俺の名前はバランだ。よろしくな」


 バランおじさんの挨拶にアンリ達も自己紹介をする。するとバランおじさんはスザンナ姉ちゃんに結構びっくりしたみたいだ。


「最近は聞かなかったが、かなり有名なアダマンタイトの冒険者じゃないか。まさか紅蓮に入ったのか?」


 スザンナ姉ちゃんはソドゴラ村に来る前は冒険者として結構名を売ってたらしい。でも、アンリのお姉ちゃんになってからは、ずっとソドゴラ村にいたからあまり有名じゃなくなったのかも。ちょっと悪いことをしちゃったかな?


「紅蓮には入ってない。クルは親友だから助けに来ただけ」


「ほう、紅蓮の幹部とアダマンタイトの冒険者につながりがあったのか。そいつは面白い」


 何となくだけど、話しているだけでアンリ達の情報が取られている感じがする。別に隠すようなことでもないんだけど、バランおじさんがいい人なのか悪い人なのかはよく分からないうちはあまり何も言わないほうがいいかも。


 ここはアンリが話を変えよう。


「ローシャ姉ちゃんの代わりに用意してくれるって話だけど、本当に大丈夫?」


「む? こちらのお嬢ちゃんは――紅蓮の見習いかな?」


「それはノーコメント。まず質問に答えて」


「ほう、情報を出さないのはいい心がけだが、そういうふうに直接言わないほうがいいぞ。上手くはぐらかすほうがいい」


「商人になるつもりはないから大丈夫。それに時間は有限。おじさんが有能かどうか分からないからまずはこちらのいう物を準備できるかどうかで確認したい」


「なるほど、こちらが値踏みされているのか――分かった。何が欲しい?」


 アンリはここまで。クル姉ちゃんにパスだ。視線を送ると、クル姉ちゃんは頷いた。


「明日までに十名一ヶ月分の保存食。それと大量のポーション、毒消し、麻痺消し。あとは水を発生させる魔道具をいくつか」


「用意することはできるが、持って帰れるのか? それとも後で誰かが取りに来るのか?」


「いえ、持って帰ります」


「どうやって?」


 今度はクル姉ちゃんがアンリのほうを見た。たぶん、亜空間つきのポーチのことを言ってもいいかって視線だと思う。時間がないから言っちゃっていい。


 そういう視線を送るとクル姉ちゃんは頷いた。


「空間魔法が付与された魔道具を持っているからいくらでも持って帰れます。お金は十分にあるので早めに用意してもらっていいですか?」


「待ってくれ。空間魔法が付与された魔道具? 大陸の東の方で結構出回っているとは聞いているが、それを持っているって言うのか?」


「ええ、まあ」


「嬢ちゃん達、気を付けろよ。そんなの持ってるのがばれたら、殺されて奪われるかもしれないぞ? 一生遊んで暮らせるくらいのお金になるんだから」


 ヴァイア姉ちゃんが片手間で作った魔道具なんだけど、薄々そんな気はしてた。ソドゴラ村に前から住んでいるみんなはヴァイア姉ちゃんが村を出るときにそういうのをたくさん貰った。誰もお金に換算する気はないけど、たぶん、すごくお金持ちになれる。


 アンリが使っているのはロモン聖国へリエル姉ちゃんを取り返しに行った時の物だから結構古いけど、かなり大事に使ってる。これも売る気はない。


「それで準備はできますか?」


 クル姉ちゃんがそう言うと、バランおじさんはニヤリと笑った。


「あたりまえだ。客のどんな注文にも応えるのがヴィロー商会だぞ。それに最近は魔族との取引で食料は結構調達してる。それくらいなら蓄えから出せる量だ」


 フェル姉ちゃんがお願いしている食糧かな。ちょっとだけ分けてもらおう。


「それじゃ少しだけ待ってくれ。すぐに準備するから――いや、空間魔法が付与された魔道具があるなら直接倉庫へ来てもらったほうがいいな。よし、一緒に来い」


「こういっては何だけど、貴方にそんな権限があるの?」


 スザンナ姉ちゃんがバランおじさんにそんなことを言った。表情はそんなに変わってないけど、疑いの眼差しだ。


 確かにスザンナ姉ちゃんの言う通り。商人さんは自分が扱える商品に限界があるってラスナおじさんに教えてもらったことがある。そう言うこともあってまずはローシャ姉ちゃんにお願いしようと思ったわけだし。


「ああ、安心しな。ローシャの奴がいないときは俺が色々やってもいいんだよ。まあ、ダメでも俺が少し怒られるだけだ」


 ローシャの奴? そういえば、最初に会った時もそんなことを言ってたっけ? でも、ローシャ姉ちゃんはヴィロー商会のトップ。つまり一番偉い。なのにそんなふうに言っていいのかな?


 スザンナ姉ちゃんもクル姉ちゃんもちょっと訝し気な顔をしている。


 おじさんはそれに気づいて笑顔になった。


「そういや、言ってなかったな。俺はローシャの父親なんだ。一つ前の会長って言えばいいか? 今はヴィロー商会から離れて個人でやってるんだが、今日はたまたまここに顔を出していたんだよ。運が良かったな!」


 ローシャ姉ちゃんのお父さんなんだ? でも、ヴィロー商会から離れているのに勝手にやっていいのかな? むしろ事情が悪くなっているような……?


 まあ、いっか。ローシャ姉ちゃんが帰ってくるのを待ってるわけにもいかないから、ここはバランおじさんにお願いしよう。


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