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少女と魔族と聖剣と  作者: ぺんぎん
第十五章

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帝都キャラス

 

 アンリ達は帝都を目指して移動中だ。


 移動中とは言っても、デュラハンさんが馬車を出してくれたからそれに乗っているだけ。スザンナ姉ちゃんのドラゴンのほうが早いけど、クル姉ちゃんがいうには帝都で攻撃されるかもしれないということで、普通に馬車で行くことになった。


 デュラハンさんの馬車も攻撃されそうな感じなんだけど、実はこの馬車、ルハラ帝国の紋章がついている。ディーン兄ちゃんが古城とのやり取りも必要だろうってことで貸し出してくれたみたい。だから攻撃される心配はないとか。


 たまにフェル姉ちゃんも乗せてるってデュラハンさんが言ってる。フェル姉ちゃんはあまり帝都に近づきたくないらしくて、あまり乗ってくれないってちょっと残念そうだ。


「フェルさんはディーン君に惚れられてるからね!」


 クル姉ちゃんの言葉を聞いて何となく理解した。つまり、フェル姉ちゃんは惚れられることに困ってるわけだ。リエル姉ちゃんとは真逆の悩みなんだろう。


「確かそんな話を聞いたことがある。でも、クル姉ちゃんのお姉さんが頑張ってるんだよね?」


「そうなんだよね。ディーン君に勝てればお嫁さんにしてもらえるんだけど、まだ勝ててないのかな? 魔族のラボラさんとフフルさんがウル姉さんを鍛えているはずなんだけど」


「アンリもオリスア姉ちゃんに色々教えてもらったけど、結構大変だった。クル姉ちゃんのお姉さんは大丈夫かな?」


「大丈夫だと思うよ。実はウル姉さん、一時期オリスアさんにも教わってたんだよ。その時は目が死んだ魚みたいな感じだった……」


 気持ちは分かる。そんなオリスア姉ちゃんも今は魔王として魔界で頑張ってるって聞いた。いつかまた色々教えてもらいたいな。


 そんなことを考えていたら、帝都キャラスに着いた。


 ここは帝都の東口だ。


 馬車を降りると東口から入ろうとして並んでいる人達から注目された。たぶん、馬車にルハラ帝国の紋章がついているからだと思う。いわゆるVIPだ。


 デュラハンさんはアンリ達に挨拶をしてから戻っていった。


 本当はデュラハンさんにもルート兄ちゃんのいるダンジョンへ一緒に行ってもらおうかと思ったんだけど、それは難しいみたい。そもそもデュラハンさんが大きくて、行こうとしているダンジョンに入れないとか。


 地下墳墓とかいう場所で天井がすごく低いらしい。デュラハンさんは首がなくても二メートルくらいある。たぶん、まともに戦えない。その点、アンリは小さいから小回りが利く。アンリがついてきたのは結構当たりかも。


 アンリ達も並んでいる人達の最後尾に並んだ。あの馬車なら中までフリーパスだと思うんだけど、こうやって並ぶのも乙なもの。せっかくだからクル姉ちゃんに帝都のことを聞いてみよう。


「クル姉ちゃん、帝都のことを教えて」


「えーと、そうだね……名前は帝都キャラス。知っての通り、ここはルハラ帝国の首都だね。直径五キロくらいの円系の都市だよ。周囲を大きな壁に囲まれていて、中央にお城があるんだ。そこにディーン君――皇帝陛下がいるね」


 そのあたりは以前聞いたことがある。でも、見るのは初めてだ。よく見たらかなり大きい壁がずっと続いている。


「ソドゴラ村とは違ってルハラ帝国は乾燥してるところが多いんだ。帝都も同じで、雨なんて滅多に降らないんだけど、水には困らないかな」


「どうして?」


「魔法で水を作れるからね。オリン魔法国ほどじゃないけど、ルハラも魔法の研究は結構してるんだよ。そういう魔道具が結構あるから雨は降らなくても水に困ったことはないかな」


「スザンナ姉ちゃんなら雨を降らせることができるからかなり重宝されると思ったんだけど」


「やってもいいけど、それで重宝されたくないかな――そういえば昔、雨女って言われてたけど、言われなくなった気がする……というか、昔は嫌だったけど、今は別にどう言われてもいい感じ」


 そういえば、そんな話を聞いたことがある。スザンナ姉ちゃんが村に来た頃の話だ。あれから数年経ったけど、スザンナ姉ちゃんの二つ名なんて一度も聞いたことがなかった。


「二つ名があるだけでもすごいことなんだけどね。でも、それなら別の二つ名を考えたら?」


 クル姉ちゃんの案はいいけど、自分で自分の二つ名を考えるのはちょっとどうなんだろう?


 とはいえ、アンリも自分の二つ名が欲しかったりする。なにか格好いいのがついて欲しい。


「あ、そろそろ私達だね。えっと、スザンナはギルドカードがあるとして、アンリは――」


「アンリは成人前だからフリーパス」


「ああ、そっか。なら大丈夫だね」


 クル姉ちゃんの言う通り、特に問題なく帝都に入れた。


 アンリが知っている都市ってロモン聖国にある聖都エティアくらいなんだけど、そことは全然違う感じだ。


 聖都は白一色って感じの場所だったけど、こっちは砂色って感じかな。建物がそういう色のレンガで出来ているのが多い。それに道もそういう色のレンガで舗装されてる。


 そして都市の中央には大きな城が見えた。お城だけは黒色のレンガみたいだ。


「ねえ、クル、これからどうするの? まずは『紅蓮』と合流?」


「そうだね。まずは情報を集めないと。この都市の西に傭兵団の施設があるからまずはそこへ行こう。もちろん、スザンナ達の部屋も用意するからまずはくつろいで」


「分かった。アンリもそれでいいよね?」


「うん。急がば回れって言葉がある。すぐにでもダンジョンへ行きたいけど、慎重に行こう」


 スザンナ姉ちゃんもクル姉ちゃんも頷いた。昨日の夕食時に慎重に行こうって話はしてある。とはいっても、これはアンリが一番危ない感じだから、アンリが一番気を付ければいい話。


 そもそもスザンナ姉ちゃんもクル姉ちゃんもソドゴラ村に来るまではそういう場所で生きてたわけで、アンリよりも遥かに覚悟はしてたみたいだ。


 せめて足手まといにならないように頑張ってついて行こう。


 帝都の中央通りを西に向かって歩く。東口から入って西に向かっているからほぼ横断する形だ。つまり五キロ歩く。最初からなかなか大変。


 途中、お城を見た。遠くから見たよりも遥かに大きい。デュラハンさんのいた古城とは比べ物にならないくらいの大きさだ。いつか見学させてくれないかな。


 ディーン兄ちゃんとは知らない仲じゃないし、頼めば何とかなりそうなんだけど。


「クル、お城にいるって言うお姉さん達には会って行かないの?」


 そういえばそうだった。ルート兄ちゃんを探してはくれているみたいだけどお城の仕事もあるからそれにかかりっきりにはなれないとか言ってた気がする。でも、多少は情報があると思うんだけど。


「ウル姉さんやロック達からの情報は念話でもらっているから大丈夫。私達がここに着いたのもすでに知ってると思うよ。たぶん、紅蓮の施設まで来てくれると思うから、寄る必要はないかな」


「そうなんだ。了解。それじゃ、紅蓮の施設へ行こう。今日は無理だろうけど、明日にはダンジョンに向かうんでしょ? なら今日中に準備しないといけない」


「うん、そうだね。明日にはダンジョンへ入りたい。しっかり準備しておこう。そのためにもまずは情報だね」


 こういう時のスザンナ姉ちゃんはすごく頼りになる。アンリも見習わないと。


 話をしながらさらに進むと、大きな建物が見えてきた。あれが紅蓮の施設みたいだ。


 この施設は他の建物みたいに砂色のレンガじゃなくて、もうちょっと赤い感じのレンガだ。なかなかオシャレな気がする。


 その建物から誰かが走ってきた。アンリよりもちょっと上くらいの女の子だ。


「クルさん! おかえりなさい!」


「うん、ただいま。みんな建物の中にいるのかな?」


「はい! クルさんのお帰りをみんなで待ってました! あの……そちらのお二人は……?」


「うん、助っ人かな。一緒にダンジョンに入ってもらうために来てもらったんだよ」


「え? あの、そちらのクールビューティな方はともかく、そちらの小さな子もですか? さすがに危ないのでは?」


「見た目で判断しちゃダメっていつも言ってるでしょ? こう見えて私よりも強いよ」


「それは言いすぎだと思う。クル姉ちゃんの魔法を連発されたら近寄れない」


「いや、連発できる状況を作れないとおもうんだよね――まあ、それはいいね。あ、紹介するよ。紅蓮のまだ見習いなんだけど、結構筋がいいんだ。名前はレイヤ」


 レイヤと紹介された女の子は勢いよく頭を下げた。


「レイヤと言います! まだまだ未熟ですがよろしくお願いします!」


 テンションが高いのがちょっと気になるけど、年齢も近そうだしお友達になれるかも。ここはアンリもしっかり自己紹介しておこうっと。


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