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少女と魔族と聖剣と  作者: ぺんぎん
第十五章

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古城

 

「アンリ、起きて」


 誰かがアンリを揺さぶってる。それにさっきの声はスザンナ姉ちゃん?


 アンリはまだ眠いんだけど、揺れがどんどんひどくなる。これは一度目を開けないとダメかも。それになんだかふわふわしているから、なにか異常事態が起きている可能性が高い。


 目を開けたら青空だった。アンリは外で眠ってたみたいだ。


 おかしい。そんな記憶はないんだけど。


 むくりと上半身を起こして周囲を見ると、いきなり空を飛んでた。何事?


 ……そうだ。よく思い出したら、夜中にソドゴラ村を抜け出したんだ。


 クル姉ちゃんがいる傭兵団の団長さんがダンジョンで行方不明になった。


 クル姉ちゃんがスザンナ姉ちゃんに一緒についてきて欲しいといったけど、スザンナ姉ちゃんはアンリが心配で行くのをちょっとだけ渋った。だからアンリも一緒に来たんだっけ。


 夜中にソドゴラ村を抜け出そうとしたら、ジョゼちゃんとアビスちゃんにばれてた。でも、戦ってアンリ達の強さを見せつけたら許可を貰えたんだ。


 アンリの場合、強さを見せつけたというか、ジョゼちゃんに突撃をかましただけなんだけど、それでも認めてもらえたから問題ないと思う。


 そして今は太陽が結構昇っている時間。真夜中にソドゴラ村を抜け出したから結構遅くまで眠っちゃったみたいだ。


 おっといけない。まずは挨拶だ。


「おはよう、スザンナ姉ちゃん、クル姉ちゃん」


 アンリがそう言うと二人も挨拶してくれた。挨拶は基本だから大事。


 そして大事なのは朝食。もうお昼って感じだけど、しっかり食べよう。


 亜空間の魔法が付与されたポーチから、女子会で食べると言って持ち出したパンを食べる。ワイルドにガブリだ。あと、牛乳。この組み合わせなら三日は戦える。


 アンリのいきなりの行動にスザンナ姉ちゃんもクル姉ちゃんもちょっと驚いていたけど、こういうのはルーティン。たとえどんな時でも食事はする。


 次は情報収集だ。アンリが寝ている間にどの辺りまで来たんだろう。ドラゴンの背中から見た感じだと森は抜けたと思うんだけど。


「ぐっすり眠ってたから分からないけど、今はどのあたり? そろそろ帝都につきそう?」


 アンリの質問にクル姉ちゃんが答えてくれた。


「帝都はまだだよ。それにしても、空の上でぐっすり寝れるっていうのがびっくりだよ。私なんかここじゃ寝れそうにもないかな」


「こういうのは慣れ。アンリは前にも水のドラゴンには乗ったことがあるからその経験が活きたんだと思う。クル姉ちゃんも次からはぐっすり寝れる」


 スザンナ姉ちゃんが作った水のドラゴンなんだから危険はない。意識を失ったら水のドラゴンもタダの水になっちゃうって聞いたことがあるけど、そんなヘマはしないと思う。


 安心安全なんだからぐっすり寝て問題なし。


 でも、よく考えたらスザンナ姉ちゃんは全然寝てないってことかな。それは危ないかも。


「いまどの辺りかは知らないけど、スザンナ姉ちゃんも寝たほうがいいんじゃないかな?」


「私は大丈夫だよ。さすがに帝都に着くまで寝ないのは厳しいけど、その手前にあるデュラハンのいる古城まで一気に行くつもりなんだ。そこで一夜を明かしてから帝都に入る感じ。古城まではあと三時間くらいだと思うからそこまでは頑張るよ」


 さすがスザンナ姉ちゃん。色々なことがすでに決定してる。


 でも、不思議。とくにアンリは必要ないと思うんだけど、なんで起こされたのかな? 嫌ってわけじゃないんだけど、起こす理由がよく分からない。まあ、頑張っている隣で誰かが寝てたらちょっとイラっとするかもしれないけど、アンリはまだ子供だから大目に見て欲しい。


「えっと、アンリはなんで起こされたの?」


「ちょっと眠くなってきたから意識を保つためにもお喋りして」


 危険な状態だった。


 いきなりクル姉ちゃんが抱き着いてきたけど、アンリに抱き着いても状況は好転しないと思う。水のドラゴンがタダの水になったら真っ逆さまだ。


 これはいけない。軽快なトークでスザンナ姉ちゃんの意識を保たないと。ここで水のドラゴンがタダの水になったらアンリ達は空へダイブすることになる。


「それじゃ恐竜縛りでしりとりでもする? えっと、ティラノサウルス」


「ス、ス……ステゴサウルス」


「ス、ス……スクテロサウルス――ほとんど最後にスがつくからしりとりにならないと思うんだけど……? というかアンリ達ってこういう遊びをしてるの?」


「夜寝る前にそういう遊びはしてる。さすがに部屋で模擬戦はやれないから」


「もうちょっと女の子らしい遊びもしようよ……うん、ルートを助け出したらそういう遊びも教えるから」


 女の子らしい遊び。確かにアンリはそういうのを知らない。フェル姉ちゃんが良く言う、魔眼でも見えないステータス、女子力を上げるためには必要なのかも。


 団長さんを助けるのが一番の目的ではあるけど、それが終わったら少しそういう方面にもちょっと修行してみようかな。アンリはソドゴラ村くらいしか知らないし、流行の最先端を帝都で学ばないと。


 学んだことはあとでマナちゃんに教えてあげよう。それにアンリ達のためにリエル姉ちゃんの邪魔をするくらいのことをしてくれたんだから、ちゃんとしたお土産も必要かな。


 おっといけない。まずはスザンナ姉ちゃんの意識を保ってもらわないと。何の話をしようかな?




 アンリのトークで三時間が過ぎた。


 スザンナ姉ちゃんの言う通り、ちょうど三時間で帝都の東にある古城に着いたところだ。


 結構ギリギリだったみたい。最後はドラゴン胴体着陸のようになって、スザンナ姉ちゃんはそのまま眠っちゃった。


 丸一日起きてたし、ドラゴンの維持も大変だったんだと思う。ここはしっかり眠っててもらおう。


 眠っちゃったスザンナ姉ちゃんはクル姉ちゃんがおんぶしてくれた。アンリも結構大きくなったけど、スザンナ姉ちゃんをおんぶするにはちょっと背が足りない気がする。重さだけなら軽々運べそうではあるんだけど。


 目の前の古城は濃い青と言うか黒というか、ちょっと陰湿な雰囲気のレンガでできてる。それにツタが絡んでいるようで、誰も住んでいない大昔のお城って感じだ。


 以前、デュラハンさんに聞いたときは、雰囲気を大事にしているとか聞いたけど、これが雰囲気なのかな?


 とりあえず、入口の扉を叩く。


 少し待つと、三メートルくらいある両開きの大きな扉がひとりでに開いた。


「いらっしゃいませ、アンリ様」


 デュラハンさんとその配下の魔物さん達が出迎えてくれた。


 そして城内には垂れ幕があって「歓迎 アンリ様ご一行」と書かれている。雰囲気を大事にしているって言ってたと思うんだけど。


「えっと、ありがとう。いきなりで悪いんだけど、スザンナ姉ちゃんを部屋でゆっくり寝せたい。お願いしてもいい?」


「承知しました。部屋の用意は済んでおりますので、すぐに案内しますね。食事やらなにやらはその後にしましょう。まずは旅の疲れをいやしてください」


 デュラハンさんの配下にいるゴースト系の魔物さんがアンリ達を部屋に案内してくれた。三人とも同じ部屋だ。


 今は午後四時くらい。今日はここに泊まって明日の朝に帝都へ入る。


 帝都は入るのに結構な手続きが必要だから今から行っても入れるのが遅くなっちゃう。だからクル姉ちゃんも今日はここにお泊りだ。


 本当ならすぐにでも団長さんがいるダンジョンへ行きたいんだろうけど、いきなり行っても助けられるわけじゃないからしっかりとした準備をするって言ってる。


 もしかしたらそう言ってるだけで、内心はすごく心配しているのかも。アンリ達の前ではそんな風に見せてないという可能性が高い。


「それじゃ、私もちょっと眠るね。明日のためにもしっかり休まないとね」


「うん。そうしたほうがいいと思う。夕食の時間になったら起こすからぐっすり寝るようにして」


 クル姉ちゃんは笑顔で頷いてから、ラフな格好になってベッドにもぐりこんだ。そしてすぐに寝息が聞こえてきた。


 さて、アンリは一人になっちゃった。ちょっとだけ古城を探検してみようかな。


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