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少女と魔族と聖剣と  作者: ぺんぎん
第十四章

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魔剣と精霊様の加護

 

 あれから数ヵ月、何度かフェル姉ちゃんとは戦ったけど、全く歯が立たない。しかも明らかに手加減してるのにアンリ達は完敗だ。


 いままでのアンリ達が最強だと思ったのは女王蜘蛛に進化したルノス姉ちゃんだった。でも、あれはアンリ達の攻撃範囲外での戦いが多いからだと思ってる。スザンナ姉ちゃんならなんとか攻撃を当てられるくらいにはなったからいつかは勝てるような気がする。


 でも、フェル姉ちゃんには全然勝てそうにない。


 剣を振ればそこにいるんだけど、必要最低限度の行動でアンリの攻撃を躱す。ほんの二、三回だけアンリの攻撃もフェル姉ちゃんが持ってる見えない小手に当たるようになった。でも、それだけだ。


 全然当たらなかった時期に比べたらずいぶんと成長したと思うんだけど、これじゃ勝つなんて夢のまた夢。


 スザンナ姉ちゃんは顔には出さないけどすごく悔しそう。クル姉ちゃんとマナちゃんはもともと勝てるとは思ってないみたい。でも、フェル姉ちゃんと戦うことで勝てなくても強くなってるって気持ちはある感じで積極的に戦ってる。


 アンリとしては何とか勝ちたい。というか、勝ってフェル姉ちゃんを部下にしないと人界征服ができない。


 でも、うすうす気づいてる。どう考えても人界征服するよりフェル姉ちゃんに勝つ方が難しい。だいたい、フェル姉ちゃんに勝てるなら簡単に人界征服できそう。なんという本末転倒。


 とりあえずそれを考えるのは後にしよう。今日はこれから負けられない戦いがある。そっちに集中しないと。




 みんなと一緒に妖精王国へやってきた。


 食堂は結構盛り上がってる。そしてステージにはウェンディ姉ちゃんと六体の精霊様達。さらに、ニャントリオンとゴスロリメイズ、それに冒険者さん達がいる。そして豪華な椅子に座っているリンちゃんもいる。


 はっきりいってステージの上は一触即発な雰囲気だ。


 そこへアンリ達も移動する。


 ステージの上で待っていたウェンディ姉ちゃんがニヤリと笑った。


「逃げず、やって、くる、それは、褒める」


「待つニャ。悪いけど今日は私達が主役ニャ。ヤト様の見ている場所で負けをさらすわけにはいかないニャ!」


「それはこちらも同じこと。メノウ様が見ているのにダンスで負けたとなったらギロチン案件です。メイドの力を見せましょう」


「これってダンス勝負よね? なんでやるかやられるかの話をしてるの? そういうのはダンジョンの中だけでお腹いっぱいなんだけど?」


「王に挑めるのは一チームのみ。さあ、リンを楽しませて」


 最近、リンちゃんがアンリに似てきたって話をよく聞く。というか、アンリはあんな感じなんだ? 王の威厳的なものはあると思うんだけど。


 それはともかくみんなやる気だ。でも、大丈夫。アンリは勝てる。自分を信じて戦おう。




 アンリ達のダンスが終わった。食堂は大盛り上がりだ。


 前回のダンスバトルよりも遥かにみんな上達してた。でも、まだまだ。勝負はアンリ達とウェンディ姉ちゃん達のどちらかだと思う。


 今日のバトルはお客さんに投票権がある。一番良かったダンスチームに投票できる仕組みだ。それで一番になれば勝ち。


 そして開票が始まった。


 まずは五位。冒険者さんチーム。これは順当だと思う。そもそも楽しんで踊ってるだけだからあまりキレキレじゃない。


 四位はゴスロリメイズ。メイドさんだからあまりダンスの訓練は出来なかったのかな。でも、ギロチンにはならないから大丈夫みたいだ。


 三位はニャントリオン。すごく悔しそうにしてる。ヤト姉ちゃんは「まだまだ修行が足りないニャ!」って言ってるけど、ゴスロリメイズには勝てたからちょっと嬉しそう。逆にメノウ姉ちゃんが悔しそうだ。


 そしてここからが勝負。先に呼ばれたほうが負けだ。


 ドキドキしながら発表を待つ。


 そしてリンちゃんがウェイトレスさんから紙を受け取った。それを開いて読み上げる。


「二位はエレメンツ!」


 エレメンツはウェンディ姉ちゃんのチーム名。と言うことは――


「一位は妖精愚連隊!」


 リンちゃんがそう言うと、この日、最高の盛り上がりを見せた。アンリ達も抱き合って喜ぶ。うん、最高の日。


 でも、ラスボスがいる。最後の相手はリンちゃんだ。絶対に勝つぞ。




 翌日、ウェンディ姉ちゃんが妖精王国にいるアンリ達に会いに来てくれた。


「リン、負けた、けど、精霊達、アンリ、勝った。要望、叶える」


 あの後、リンちゃんにはダンス勝負で負けたけどあれには勝てない。


 だってヴァイア姉ちゃんがモスちゃんを連れてきてて、リンちゃんはお姉ちゃんダンスという創作ダンスを踊りだした。みんなほんわかして最後は全員がリンちゃんに投票した。もちろんアンリも。


 リンちゃんには負けたけど、アンリ達は精霊様達にダンスで勝ったから望みを叶えてくれるってことになった。


 みんなはそれぞれお願いを考えてきてる。もちろんアンリも考えてある。


 マナちゃんは治癒魔法がもっとうまくなるようにお願いしたみたい。そうしたら、マナちゃん専用の指輪をくれた。治癒魔法が上手くなる指輪みたい。すごく喜んでた。


 クル姉ちゃんは魔法の威力があがる杖を貰えた。「精霊様から装備を貰えるってすごい」って言ってるけど、精霊様が言うにはそんなにすごい物じゃないとか。でも、魔法威力が三割上がるってありえないと思う。


 スザンナ姉ちゃんはユニークスキルに磨きをかけたいから、水の精霊様に加護が欲しいって言ってた。水の精霊様はご指名ですごく嬉しそう。二つ返事でスザンナ姉ちゃんに加護を与えたみたいだ。水の魔法の威力が上がったり、消費魔力が減ったりするみたいだ。


 そしてアンリの番。お願いすることは決まってる。


「この魔剣に精霊様の加護が欲しい。ここはドドンと全精霊様の加護をつけて。こういう時は遠慮なくいくのが粋というもの」


 アンリがそう言ったら、精霊様達が審議を始めちゃった。さすがにそれはダメなのかな。でも、もう一押しのような気がする。


「この剣は壊れない。はるか未来まで残るから、歴史に名を残す剣になるかもしれない。そのとき精霊様の加護があったら恰好いいんだろうなぁ」


 子供っぽく言ってみた。あと、ちらっと精霊様を見るのがコツ。


 アンリの作戦は成功した。精霊様達が我先にと剣に加護をくれたみたい。うん、これで魔剣フェル・デレに精霊様の加護が付いた。しかも全部の精霊様が付けてくれたから最強になったと思う。


「精霊、加護、全部、あり得、ない。その、武器、国宝、級」


 ウェンディ姉ちゃんが驚いているけど、精霊様達は嬉しそうだから問題ないと思う。アンリとしても問題ない。むしろウェルカム。


 でも、ウェンディ姉ちゃんの目が鋭い。もしかして、やり過ぎちゃった?


「アンリ、精霊、上手く、使える?」


「え? それはよく分からないかも。気合で何とかするつもり」


「私、教える」


「ウェンディ姉ちゃんが教えてくれるの?」


「うん。精霊、使い、先輩。指導、する」


 これは嬉しい誤算というやつ。いままでウェンディ姉ちゃんには教わったことがないからちょっと楽しみ。


「それじゃお願いします。精霊様の使い方をしっかり覚える」


「ビシバシ、いく」


 意外とスパルタだった。でも、それは望むところ。アンリはもっともっと強くならないといけない。フェル姉ちゃんに追い付くまで泣き言なんて言ってられない。


 魔剣フェル・デレは精霊の加護でさらに強くなった。ならアンリも相応に強くならないと。そうしないと所有者として認めてくれないかも。


 うん、なんだかやる気が漲ってきた。まずは打倒フェル姉ちゃんだ。これからも頑張るぞ!


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― 新着の感想 ―
[良い点] フェル・デレの強化が凄まじい! きっと七難八苦も密やかに凄い事に…… [気になる点] 改定された魔物ランキング [一言] 剣と一緒にグラヴェおじさんの名前も残らないかなぁ
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