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少女と魔族と聖剣と  作者: ぺんぎん
第十四章

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ダンスバトル

 

 アンリはとうとう十歳になった。二桁の大台に乗ったと言える。むしろ四捨五入して大人と言ってもいい。


 アンリ基準だとそうなんだけど、やっぱり大人とは見てもらえないみたい。冒険者ギルドでも特例は認めてくれなかったし、誕生日でもケーキが二つになることはなかった。残念。


 でも、明らかに背は伸びたし、筋力もついたと思う。魔剣フェル・デレも結構軽く振れるようになったし、魔剣七難八苦はちょっと軽すぎるくらいだ。


 結局ルノス姉ちゃんには勝てなかった。でも、フェンリルのナガルちゃんが帰ってきたことで改めて魔物さん達のトーナメントを行ったら、階層に変化が出たので、先に進むことは出来た。


 ルノス姉ちゃんやナガルちゃんはもっと奥の階層へ行き、代わりにアンリ達の前に立ち塞がったのはダンゴムシさんだ。名前はライルちゃんと言うけど、ダンゴムシでいいですという卑屈なのか謙虚なのか分からない言い方をされたのでダンゴムシさんだ。


 そのダンゴムシさんは、魔虫と呼ばれる虫を作り出して戦う感じだ。魔虫はそれほど強い訳じゃないんだけど、その見た目がちょっと問題。アンリやスザンナ姉ちゃん、かろうじてクル姉ちゃんも大丈夫なんだけど、マナちゃんが気絶した。


 マナちゃんは虫の耐性がなかったみたい。アンリはムカデ以外なんともないんだけど、女の人は基本的に虫がダメみたいだ。そういえば、ドレアおじさんもユニークスキルで虫を呼び寄せたら阿鼻叫喚だった気がする。


 残念だけど、マナちゃんはダンゴムシさんとの戦いでは参加できそうにない。もう、虫さんが動く音だけでも、全身がぞわぞわしちゃうみたいだ。クル姉ちゃんも精神耐性の魔法を使っておかないと無理とか言ってたし、色々な意味で攻略が難しくなっちゃった。


 マナちゃんがトラウマになっちゃうから、しばらくはダンジョン攻略をお休みして村で色々遊んだ。遊んだと言ってもトレーニングみたいなものだけど。


 それにヴァイア姉ちゃんやニア姉ちゃんの赤ちゃんがそろそろ生まれそうって話。もうちょっと早ければアンリと同じ誕生日だったのに残念。


 そんなわけで、今日は妖精王国へやってきた。ヴァイア姉ちゃんのお部屋にまずは挨拶。


「ヴァイア姉ちゃん、こんにちは。赤ちゃんはどんな感じ?」


「みんな、今日も来てくれたんだ、ありがとうね。うん、赤ちゃんは元気だよ。元気がいいから男の子かな?」


「そういうのって分かるものなの?」


「単なる勘だよ。元気に生まれてくるならどっちでもいいんだけどね」


 アンリとしては妹も弟も欲しいから、弟のほうがいいかな。リンちゃんがすでに妹だし。あとはリンちゃんが首を縦に振ってくれれば名実ともにアンリの妹なんだけど、なかなか手ごわい。


「こんに、ちは」


 誰かが入って来たと思ったら、ウェンディ姉ちゃんだった。


 この部屋にはずっと通ってるけど、ここでウェンディ姉ちゃんに会ったのは初めてだ。どうしたんだろう? ヴァイア姉ちゃんのことが心配だったのかな?


「あ、ウェンディさん、急なお願いをしちゃってごめんね」


「かまわ、ない。赤ちゃん、祝福、みんな、好き」


「えっと、どういうこと?」


 ヴァイア姉ちゃんの話だと、赤ちゃんが生まれる前に精霊様から祝福されるとちょっといい感じになるみたい。普通、精霊様を呼ぶことはないんだけど、フェル姉ちゃんがどこからかそんな話を持って来て、精霊様にお願いをしたとか。こう、物理的に。


 そんなことをしなくても言えば承諾したみたいだけど、最近のフェル姉ちゃんはちょっと落ち着きがないからすぐに物理で解決しようとしているみたいだ。


 そんな無礼なことをされても精霊様は怒ってないみたい。むしろ、そういうのには早く呼べって感じだとか。そんなわけで、ウェンディ姉ちゃんが精霊様を呼ぶためにここに来たそうだ。


 それにしてもフェル姉ちゃん。遺跡に行ってると思ってたのにそんなことしてたんだ? まあ、フェル姉ちゃんの場合、ヴァイア姉ちゃんやニア姉ちゃんに対して過保護な感じになってるし、当然ともいえるんだけど。


 それはいいとして精霊様の祝福って何をするのかすごく興味がある。


「アンリ達も見てていい?」


「うん。ギャラリー、多いほう、精霊様、好き」


 ウェンディ姉ちゃんはそう言うと、精霊様を呼び出した。全部で六体もいるからちょっと部屋が狭い。


 そして一人ずつヴァイア姉ちゃんのお腹に手を当てて何か祝福の言葉を言ってるみたい。よくは分からないけど、元気に生まれてきなさいとか、清く正しい子になりなさいとかそんな言葉だ。


 そして一通り終わると、ヴァイア姉ちゃんは精霊様に頭を下げた。


 これで祝福は終わりみたいだ。


 でも、精霊様はなぜか帰らない。せっかく呼ばれたんだからもっと何かをしてから帰りたいって言ってる。ウェンディ姉ちゃんがダンジョンでの戦いの時しか呼ばない感じだからちょっとストレスが溜まっているみたい。


 やれやれ、ここはアンリが精霊様と遊んであげよう。でも、タダの遊びじゃない。これは勝負。


「ウェンディ姉ちゃん、アンリ達とダンス勝負をしよう」


 アンリのこの言葉に全員がクワっと目を開く。


「ウェンディ姉ちゃんと精霊様はヴァイア姉ちゃんの結婚式で踊ってたよね? あの頃はコテンパンにされたけど、アンリ達妖精愚連隊はもうあの頃とは違う。一流のエンターテイナーと言ってもいい。だから妖精王国の食堂にあるステージで勝負」


 みんな乗り気だ。残念ながらニャントリオンとゴスロリメイズはないだろうけど、一騎打ちでウェンディ姉ちゃん達を負かすぞ。




 そんなふうに考えていたら、そんなことなかった。なぜかニャントリオンとゴスロリメイズが参戦してきた。とはいっても、ヤト姉ちゃんやメノウ姉ちゃんがいる訳じゃない。その意思を継ぐ獣人さんやメイドさん達だ。


 最近、みんなで踊るような話がなかったわけじゃないんだけど、村に沢山の人が増えたからちょっと遠慮してたところはある。だけど、皆で研鑽をつんでいたみたいだ。


 それに女性だけの冒険者チームも参戦してきた。これは負けられない戦いになる。


 とりあえず、発案者のアンリがいる妖精愚連隊は最後のトリを務める。そして一番はヤト姉ちゃんのいないニャントリオンだ。こう言っては何だけど、あまり脅威には感じない。


 ……うん、やっぱり大丈夫だ。これならアンリ達が勝てる。まだまだ修行が足りない。でも、猫耳とネコしっぽは侮れない。結構な人気だ。そしてゴスロリメイズもまだまだ。でも、メイドさんだからこれも結構人気がある。冒険者さんチームもまだまだかな。でも、勝ち負けなんか関係なく楽しく踊っているのは評価高い。


 そして一番の敵、ウェンディ姉ちゃん率いる精霊様チーム。


 これは強敵。そもそもウェンディ姉ちゃんがかなりのやり手。最近、ウェンディ姉ちゃんはユーリおじさんやゾルデ姉ちゃんと一緒にダンジョンへ行ってることが多いから、そういう活動は控えているけど、いまだにアイドルの頂点として君臨している。


 それに精霊様のダンスがキレキレだ。ウェンディ姉ちゃんのバックダンサーとしてだけど、その完成度が高い。ほとんどみんな同じ動きでその動きに迷いがない。精霊様って毎日踊ってるのって感じさせるくらいの動きだ。


 そして最後の決めポーズ。ウェンディ姉ちゃんを中心に、皆がそれぞれ違うポーズを決めた。ステージを見ている人たちからは拍手喝采だ。


 高い。アイドルの頂点はなんて高いんだろう。でも、だからこそ登り甲斐がある。


「みんな、妖精愚連隊の力を見せよう」


 みんなが力強く頷く。よし、今日からアイドルの頂点はアンリ達妖精愚連隊が頂くぞ。


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