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少女と魔族と聖剣と  作者: ぺんぎん
第十四章

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魔狼フェンリル

 

 勉強が終わった午後、アンリ達は昼食を食べてからすぐにダンジョンへ向かった。


 理由はもちろんナガルちゃん。ようやく修行から帰ってきたわけだし、すごく強くなっているはず。前に聞いた話だと、ナガルちゃんはさらなる進化を求めて修行していた。見た目は大きくなってたけどあれが進化なのかはよく分からない。直接聞いてみないと。


 ダンジョンに入ってからアビスちゃんにナガルちゃんがいるところへ転移してもらった。


 どこの階層なのかは知らないけど、普通の平原のような場所に転移したみたい。なんとなく、ロモン聖国の平原っぽい。


 周囲を見ると、ナガルちゃんを中心に魔物のみんなが勢ぞろいしていた。それにフェル姉ちゃんもいるみたいだ。


「どうだ、フェル。完全に進化しているだろう?」


「そうだな、魔眼で見たが間違いない。ナガルは魔狼フェンリルに進化している。二段階目の進化ということだ」


 フェル姉ちゃんがそういうと、魔物のみんなが感嘆の声を上げた。


 本当にナガルちゃんは進化したみたい。この間はルノス姉ちゃんがアラクネから進化したんだけど、これはもっとレアな進化なんだと思う。実際に進化するところを見たかった。


「私の進化が霞んだクモ!」


「一度の進化でそこまで強くなっていて何を言う。我は二度進化してようやくと言ったところだ……だが!」


 ナガルちゃんは好戦的な顔をしてジョゼちゃんのほうを見た。


「ジョゼ! 我と戦え! どれほどの強さになったか身をもって味わうといい!」


「面白い。遺跡ではそれほど強い魔物がいなかったから少しフラストレーションがたまっていた。どれほどの強さになったか確認してやる」


 ジョゼちゃんは見た目アンリみたいな幼女なのに言ってることは男前。フェル姉ちゃんの影響かな?


 というわけで、ジョゼちゃんとナガルちゃんの戦いが始まった。




 ジョゼちゃんとナガルちゃんの戦いはすごい。というよりも、周囲に迷惑をかけるレベル。地震が起きるし、竜巻が発生して飛ばされそうになるし、ものすごい氷の柱とかが出来て寒いし。


「この程度では倒せんか!」


「いや、危なかった。その氷は危険だな」


「平気そうな顔をして言うでないわ!」


 ナガルちゃんはなぜか氷の攻撃が多い。前足で地面を叩く程度でなぜか氷の柱みたいなものが地面から飛び出す。ひっかくときも氷の爪みたいなものができるし、氷が好きになったのかな?


 ジョゼちゃんはジョゼちゃんで体をくねらせてそれを躱す。あれほど氷の柱が飛び交っているのにまったく当たりそうにない。むしろ周囲の魔物さんのほうが危険なくらいだ。一応エリザちゃんとかシャルちゃん、それにマリーちゃんが周囲に危害が及ばないようにガードしてるけど。


 アンリ達はフェル姉ちゃんの結界に守られてる。ナガルちゃんの氷がどれだけこっちに向かって来ても結界は無傷だ。


 そんな状況をフェル姉ちゃんは普通に見てる。


「ナガルは強くなったようだが、まだ力の制御がうまくないみたいだな」


「そうなの?」


「まあ、そんな気がするっていう程度だけどな。なんというか無駄が多い。あれだけ魔力が増えているのだから別に無駄に使っても問題はないんだが、もっと集中して魔力を扱えばかなり強い攻撃になるはずだ。当たればの話だけどな」


 こういう時のフェル姉ちゃんの話はかなり役に立つ。魔力って集中して扱えばかなり強くなるんだ?


 アンリはまだ子供だし魔力は少ないほうだからあまり意味はないけど、大きくなったら魔力も増えるかな?


 そういえば、リンちゃんはヴァイア姉ちゃんみたいに魔力が高い。今の時点でもすでにアンリの数倍くらいありそう。もしかしたらアンリのお姉ちゃんとしての威厳はとうの昔からない……?


 あれ? なんかアビスちゃんが人型で飛んできたんだけど、どうしたんだろう?


 そう思ったらいきなりアビスちゃんが両足でナガルちゃんを蹴り飛ばした。聞いたことがある。あれはドロップキック。


「な、何をする!」


 ナガルちゃんが転がりながら立ち上がると、アビスちゃんをみた。


「何をするはこっちのセリフだ。この惨状を見ろ。どれだけこのダンジョンを壊したと思ってる。蹴り足りないくらいだ。これ以上やるというなら私が相手だ。完膚なきまでに叩き潰すぞ」


 うん。よく見ると、地面はぼこぼこだし、草原だったのに周囲が土だらけだ。


 以前聞いたことがある。ダンジョンの修復はアビスちゃんがやってるって。壊れた部分を修復するのに魔力を使うから嫌なのかも。


「ジョゼも遊んでないで早めに決着をつけろ」


「いえ、普通に戦っていて倒せなかったのです。ナガルはかなり強くなりました。遊んでいたわけではありません」


 ジョゼちゃんがそう言うと、アビスちゃんがナガルのほうを見た。


「魔狼フェンリルか。なるほど、ジョゼでも手こずるだろうな……まあいい。遊びは終わりだ。私はここを直すから、皆は持ち場に戻れ。もちろんアンリ様達はここにいていいですよ。あとフェル様も」


「私をついでみたいに言うな。それに魔力が必要なんだろ。私から多めに取っていいから」


「それは助かります」


 というわけで戦いは終わっちゃった。アビスちゃんは地面とかの修復を始めて、ジョゼちゃん達はそれを手伝ってるみたいだ。フェル姉ちゃんは手伝っていないけど、結構魔力を消費しているみたい。


 魔物の皆もそれぞれ自分の階層に戻ったみたいだ。でも、ルノス姉ちゃんとケルベロスのロスちゃんだけは、ナガルちゃんのそばにいて色々話をしているみたい。


「二回も進化するなんてずるいクモ」


「まあまあ、ルノス殿。ナガル殿が本当に進化したのは驚きましたが、それならば私達にもチャンスがあるということです」


「確かにクモ」


「言っておくが、進化するのは簡単ではないぞ? 我は大霊峰にいる古代竜に会って、進化の条件を聞き、それをするためにかなりの時間を要した。はっきり言ってお前たちにそれが出来るかどうかは分からん。それに魔物によって進化の条件は違うらしいからな」


 よく分からないけど、進化するための条件を古代竜に聞いたんだ? アンリも古代竜さんに会ってみたい。いつか大霊峰に行こう。


 そういえば、ムクイ兄ちゃんは元気かな? そろそろ族長として頑張らなくちゃいけないってドラゴニュートの村に戻っちゃったから最近は会ってない。


 たまにドラゴンの肉とかを持って来てくれるドラゴニュートさんに話を聞くとムクイ兄ちゃんは元気でやってるみたい。古代竜さんに会いに行くとき、ドラゴニュートさんの村に寄ってみよう。


 そんなことを考えていたら、ナガルちゃんがアンリに気づいて近寄ってきてくれた。


「ひさしぶりだな」


「うん、ひさしぶり。ナガルちゃんがすごく強くなっててびっくりした」


「うむ。アンリも強くなっている様だな。だが、アンリは我々のボスなのだ、その程度で満足するなよ?」


「もちろん。これからもバリバリ強くなる予定。はっきりいってフェル姉ちゃんよりも強くなる」


 アンリがそういうと、ナガルちゃんはちょっと目を丸くした。かわいい。


 でも、すぐに不敵な笑いの顔になった。


「そうだな、フェルよりも強くならねば、我らの真のボスになることは出来ん。精進することだ」


 すごく上から目線で言われたけど、ナガルちゃんはそれだけのことをしたわけだからまあいいかな。物理的にもすごく上からだし。


「お前らは何の話をしてるんだ? 私が何だって?」


「なんでもないから気にするな。さて、それではロス、久しぶりに森のパトロールへ行くか」


「うむ。森にいるナガル殿の配下狼達も喜ぶだろう。ではフェル殿、行ってまいります」


「ああ、うん。気を付けてな」


 ナガルちゃんとロスちゃんはそろってこの場を離れた。これから森を見回るみたいだ。はっきり言って、ナガルちゃんが森の中で一番危険な魔物だと思うけど。


 でも、フェル姉ちゃんよりも強くなる、か。このままで勝てるようになるのかな?


「どうした? 私の顔に何かついてるのか? 昼はホットドッグだったが鼻にトマトソースは付けてないぞ」


「アンリはナガルちゃんがやったことよりも遥かに大変なことをしようとしているから、ちょっとだけアンニュイな気分になっただけ」


「そうなのか? まあ、頑張れ。何をするのかは知らんが、何かをやり遂げるには、やろうとする意志が重要だからな」


「フェル姉ちゃんはたまにいいことを言う」


「たまにじゃなくて、頻繁にいいこと言ってるぞ? たぶんだが。それじゃ私はアビスを手伝ってくる」


 フェル姉ちゃんはそう言ってアビスちゃんがいるほうへ歩いて行った。


 やろうとする意志か。よし、絶対にフェル姉ちゃんに勝って部下にするぞ。そのためにもっともっと修業しようっと。


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