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少女と魔族と聖剣と  作者: ぺんぎん
第十三章

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家族の団らん

 

 村の広場ではフェル姉ちゃんやリエル姉ちゃんに村のみんなが群がっている。二人も笑顔で対応しているみたい。


 アンリも突撃したいけどぐっと我慢。今日くらいは村の皆にフェル姉ちゃんとリエル姉ちゃんを譲ってあげないと。いままでずっと一緒だったんだし、独占は良くない。独占禁止法。


 でも、気になることがある。見たことがない人がいる。なんとなく以前見た人もいるけど、誰だろう? 新しく村に住み始めた人なのかな?


 気にはなるけど、まずはおかあさん達にただいまって言っておくべきだと思う。


 フェル姉ちゃんやヤト姉ちゃん達は森の妖精亭へ、リエル姉ちゃんやマナちゃん達は教会、ジョゼちゃん達はダンジョンがある畑のほうへ向かったみたいだ。アンリも家に帰ろう。


 おじいちゃんやスザンナ姉ちゃんと一緒に家へ向かった。


 一ヶ月以上、家に居なかったことなんて初めての経験。それにおかあさんとおとうさんにこんなに長く会ってないのも初めて。念話でお話はしてたけど、久しぶりに会うからちょっとドキドキする。


 おじいちゃんが家の入口の扉を開けて中に入った。アンリ達もそれに続く。


「ウォルフ、アーシャ。いま帰ったよ」


「ただいま」


「た、ただいま」


 入口からはいるとそこは大部屋だ。そこにおかあさんとおとうさんがいた。


 二人とも笑顔でアンリ達を見ている。おかあさんはちょっと涙ぐんでいるかも。


「おかえりなさい。おとうさんもアンリもスザンナちゃんもよく無事に帰って来たわね。お腹すいてるでしょう? すぐにお昼にしますから。でもその前に――」


 おかあさんがアンリに近寄ってしゃがむ。そしてアンリに抱き着いてきた。すごくぎゅっとされてる。


「無事でよかったわ、アンリ。それにちょっと大きくなった?」


「ただいま、おかあさん。うん、アンリは人として大きく成長したと思う。年齢で言うと十歳くらい」


「そういうことじゃないんだけど嬉しいわ。それにスザンナちゃん」


 おかあさんはアンリから離れると、今度はスザンナ姉ちゃんのほうへ近寄ってから膝をついてぎゅっと抱きしめた。


「おかえりなさい。ありがとうね、アンリを守ってくれて」


「た、ただいま。だ、大丈夫です、ほら、私、アンリのお姉ちゃんだし」


「ええ、そうね。でも、お礼を言わせて。ありがとう」


 ガチガチになってるスザンナ姉ちゃんを長めに抱きしめてから、おかあさんは立ち上がった。


「さあ、それじゃ料理を用意してくるから。すこし時間がかかるから、部屋に荷物を置いて着替えておくといいわ。そうそう、うがいや手を洗うのも忘れないようにね」


 おかあさんはそう言って台所の方へ行っちゃった。


 その後におとうさんが近寄ってきた。そして何も言わずに笑顔でアンリの頭をなでる。うん、最高のなでなで。


 スザンナ姉ちゃんの頭にも手をおいてなでなでした。スザンナ姉ちゃんはなんとなくくすぐったい感じの顔をしている。なでなでにはもっと身をゆだねた方がいいと思う。


「おかえり、アンリ、スザンナ。さあ、アーシャが言った通り、荷物を置いてきなさい」


 おとうさんの言葉に頷く。


 うん、まずは部屋に荷物を置いてこよう。


 ヴァイア姉ちゃんの亜空間が付与された魔道具の袋があるからかさばらないけど、これは返さなくちゃいけないだろうし、荷物の整理は大事。それにうがいや手洗いも大事。


「スザンナ姉ちゃん、部屋に行こう」


「そうだね。荷物を置いてからゆっくりお昼を食べよう」


 一緒にそれぞれの部屋に入った。


 久しぶりの部屋。ここはアンリの王国。ずっと留守にしてたけど、おかあさんが掃除してくれていたのか全然汚れてない。匂いも木の香りがするだけ。毎日換気してくれていたのかも。


 亜空間からアンリの私物を取り出していつもの場所に置く。


 九大秘宝と魔剣七難八苦はベッドの下。アンリの魔王マントはハンガーにかけて壁に吊るす。


 フェル・デレは残念ながら飾るような台座がない。壁に立てかける感じだ。今度グラヴェおじさんに台座を作ってもらおうかな。


 持っていった着替えは毎日シャルちゃんが洗濯してくれたからこのまま畳んでタンスに入れておこう。そしてタンスから持っていかなかった服を取り出して着替える。


 冒険用じゃないから普通の長袖ワンピース。スカートのひらひらがオシャレ。ベージュはちょっと地味かなって思うけど、この地味さがフェアリーアンリ時の服を際立たせるって感じ。


 オシャレは緩急が重要ってディア姉ちゃんに聞いたことがある。毎日派手な服を着ていると、ここぞという時に地味になっちゃうみたい。売れっ子妖精のアンリとしてそれは避けないと。


 うん、とりあえず、アンリの準備は終わった。スザンナ姉ちゃんは終わったかな?


 アンリの隣の部屋がスザンナ姉ちゃんの部屋だ。部屋を出てお隣の扉をノックする。


「スザンナ姉ちゃん、お着替えは終わった?」


「ごめん、もう少し待って」


「うん、ゆっくりで大丈夫」


 アンリが早すぎたのかな。もうちょっと待とう。


 スザンナ姉ちゃんの部屋は物置をちょっとだけ掃除しただけの狭い部屋なんだけど、その方が落ち着くからってずっと使ってる。たまにアンリと夜更かししてそのままアンリのベッドで寝ちゃうけど。


「お、おまたせ」


 スザンナ姉ちゃんが部屋から出てきた。


 ちょっと驚いた。いつもの服じゃない。スザンナ姉ちゃんは同じ服を何着か持っていて、それをローテーションしてるから毎日同じ服だったのに、今日は別の服だ。


「へ、変かな? この間、ディアちゃんに『たまにはこういう服を着るといいよ!』って言われて渡されたんだけど……」


 白い半袖のシャツに深緑のポケットがたくさんついた革製ズボン。すごくシンプル。そして、首にかけてるゴーグルがミスマッチな上級オシャレ風……のような気がする。


 親指を立ててサムズアップした。


「アンリの知ってる言葉で表現すると、イケてる」


「イケてるんだ……? でも、イケてるどういう意味?」


「ディア姉ちゃん曰く、魅力的って意味」


「そ、そっか。ならたまにはこういう服もいいかな……」


 スザンナ姉ちゃんが嬉しそう。あえて言うならディア姉ちゃんはいい仕事をした。普段のスザンナ姉ちゃんもいいけど、こういうのもいい感じ。アンリもオシャレに磨きをかけよう。


 その後、手を洗ってうがいをしてから、二人で大部屋に戻ると、テーブルには沢山の料理が置かれていた。


 おじいちゃん達はすでに椅子に座っていていつでも食べられるみたいだ。アンリ達をずっと待っていたのかも。


「アンリ、スザンナちゃん、早く座って……その前にスザンナちゃん、いつもと違う服ね? 可愛いわよ」


「あ、ありがとうございます……」


 スザンナ姉ちゃんが照れてる。おじいちゃんがそんなスザンナ姉ちゃんを見て笑顔になった。


「さあ、久しぶりに家族揃っての食事だ。冷める前に頂こうか」


「たくさん作ってあるからおかわりしてね」


 みんなでいただきますをしてから料理に食らいついた。


 うん、すごく熱い料理もあるけど、食べなれた美味しい料理。ヤト姉ちゃんやメノウ姉ちゃんの料理もおいしかったけど、やっぱりお母さんの料理が一番。ニア姉ちゃんの料理は殿堂入りだけど。


「今日はピーマンを使っていないから、どんどん食べて大丈夫よ」


「アンリのおかあさんは最高だと確信した。今日はアンリもフェル姉ちゃんみたいにモリモリ食べる。この旅で成長した証として恐れおののいて」


 たくさん食べるにしてもペース配分は大事。食べながらこの旅で起きたことを色々説明した。


 おかあさんもおとうさんも笑顔で聞いてくれていたんだけど、勇者と戦って一本取った話をしたらちょっと怒られた。これも危険な事だったみたい。


 おかあさんの得意技、笑顔で威圧してくるスマイルプレッシャーは健在だ。


 この旅で成長したと思ったけど、アンリはまだまだだった。強くなるためにもっともっと頑張ろうっと。


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