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少女と魔族と聖剣と  作者: ぺんぎん
第十二章
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メイドさんは怖い

 

 リーンの町から南のほうへ移動している。


 昨日と同じようにアンリとおじいちゃんはスザンナ姉ちゃんの水ドラゴンに乗って優雅な空の旅だ。


 今日は昨日よりも海が近い。西の方に大きな水たまり……って言っていいのかな? それが地平線のずっと向こうまで続いている。アンリは森の中しか知らなかったけど、人界ってものすごく大きいのかも。


 西に見える海は内海って言って比較的穏やかな方だって聞いた。見えないけどここからさらに東にある外海はかなりすごいみたい。ものすごい海の魔物もいるみたいだし、さらにその先へ行くことはまったくできないとか。


 人界の果てには何があるのかって言うのはとてもロマンを感じるけど、今はリエル姉ちゃんの救出が最優先。極力雑念は捨てていこう。


 この先にメーデイアというメノウ姉ちゃんの生まれた町があるみたい。たしか、メノウ姉ちゃんの弟が病気になって、その治療にリエル姉ちゃんが向かった場所だ。


 そういえば、そこで病気が蔓延してフェル姉ちゃんも倒れたとか聞いた。なかなかいわくつきの町みたいだけど、スザンナ姉ちゃんが言うには悪くない町みたい。


 ただ、ちょっとメイドさんが怖いって言ってる。メイドさんが怖いってどういう意味だろう?


 確かに昨日、お風呂を出た後にはしゃぎ過ぎですとやんわりヘルメ姉ちゃんに怒られた。でも、怖くはなかったと思う。顔は笑ってたし。


 それにしても昨日のお風呂は楽しかった。でもちょっと反省。ジェット大王イカは真の力を発揮させてはいけなかったみたい。でも、あれはヴァイア姉ちゃんも悪いと思う。ジェット大王イカに魔力を込めすぎ。


 フェル姉ちゃん達とお風呂に入っていたら、その後にヴァイア姉ちゃん達がやってきた。


 そこでアンリがジェット大王イカの雄姿を見せようとしたら、ヴァイア姉ちゃんが「私が魔力を込めてあげるよ!」と言いだしてかなりの魔力を込めた。


 ジェット大王イカのその勢いたるやまさに閃光。あっという間に大きな浴槽を横断。そしてフェル姉ちゃんがお風呂に浮かべていたアヒルさんがその衝撃で吹っ飛んだ。


 アヒルさんは弾き飛ばされて壁に激突。まあ、グネグネしている素材だから壁にぶつかっても別にどうと言うことはなかったんだけど。


 ただ、ヤト姉ちゃんがすごく慌ててた。「アルフレッドー!」って言いながらアヒルを大事そうに抱えているのはちょっとシュール。普段クールなヤト姉ちゃんがあそこまでなるなんて。あとで聞いたらもともとはヤト姉ちゃんの物だったみたいだけど。


 でも、その後にお風呂に浮かべて一分くらい見つめた後にアヒルのアルフレッドを攻撃をしたのは何だったんだろう? 修行とか言ってたけど、何の修行?


 それは疑問だけど、フェル姉ちゃんやスザンナ姉ちゃんの背中も洗ってあげたし、逆にアンリの背中も洗ってもらったから、なかなかいいお風呂だった。


 その後にすぐ眠くなっていつの間にか寝ちゃってた。気づいたときは今日の朝。フェル姉ちゃんのお話が聞けなかったのが残念。お話は今日の夜にしてもらおう。


 そういえば、今日リーンを出るときクロウおじさんやオルウスおじさんがお見送りに来てくれた。


 よく分かんないけど、アンリのことをジッと見つめていた気がする。


 それにフェル姉ちゃんがアンリ達に本当についてくるのかと改めて聞いたんだけど、なぜかクロウおじさんが「村長達を連れて行ってあげてくれ」って言った。


 なんでクロウおじさんが言うのかな?


 フェル姉ちゃんは驚いていたけど、アンリも驚いちゃった。もしかしておじいちゃんとクロウおじさんはなにか取引したのかも。こう表には出せない薄暗い取引が成立しているの可能性がある。


「おじいちゃん、あんまり悪いことはしちゃいけない」


「アンリ、いきなり何の話かな? おじいちゃんは何も悪いことなんてしてないよ」


「悪いことをした人はみんなそう言う」


「いいかい、悪いことをしていない人もみんなそう言うんだよ?」


 確かにその通り。痛いところを突かれた。


 ちらっとおじいちゃんの顔を見た。


 おじいちゃんは昨日よりは元気になったかな? 元気になったというよりは悩みがなくなったような感じ。もう考え込んではいないみたい。


「おじいちゃんのお悩みは解決したの?」


「うん? ああ、昨日はちょっと考え込んでしまっていたかな……そうだね、とりあえずは解決したよ。クロウさん達は信頼できるだろうから問題はないだろうね」


 なぜそこでクロウおじさん?


 村に来る件で何か悩み事があったのかな?


 いつかアンリも村長になるわけだから今のうちから勉強しておいた方がいいのかもしれない。今度はお話を聞かせてもらおうかな。


「メーデイアの町が見えてきたよ」


 スザンナ姉ちゃんが前方を指さした。


 たしかに町っぽいものが見える。リーンよりは小さいかな? ソドゴラ村よりは大きいけど。


 話にだけは聞いていたメーデイア。楽しみだ。




 メーデイアの町から北に一キロくらいのところで着陸した。リーンの町と同じようにここからは徒歩だ。


 魔物のみんなと別れて歩き出す。


 今回もアンリとスザンナ姉ちゃんは水のトカゲさんに乗って移動。


 今度は変形を見た。でも想像していたのと違う。派手に変形するのかと思ったら、普通に水ドラゴンの半分が普通の水になって地面にバシャってなっただけ。そして残りの半分がトカゲさんになる。


 とりあえずスザンナ姉ちゃんにはもっと格好良く変形しようって提案をした。そうしたら色々考えてくれているみたいだ。次に期待しよう。


 そんなこんなでメーデイアの北門に着いた。


 門番の人が二人、アンリ達に敬礼した。アンリも敬礼を返す。


 フェル姉ちゃんがギルドカードを出そうとすると、門番さんは笑顔で「不要です」って言った。そして門番さんが門の上にいる人に手を振ると、両開きの門が大きな音を立てて開き始めた。


 全部開き終わると、なぜかフェル姉ちゃんが肩を落とした感じでぐったりしてる。


 中をよく見ると、大きな道の両脇にメイドさん達がたくさん並んでいた。そして道の中央にはメガネをかけたメイドさんとその後ろにメノウ姉ちゃんがいる。


「おかえりなさいませ、ご主人様!」


 メガネをかけたメイドさんがそう言って頭を下げると、道の両脇に並んでいるメイドさん達も一斉に「おかえりなさいませ、ご主人様!」って言ってお辞儀した。


 たぶん、ご主人様ってフェル姉ちゃんのことだと思うんだけど、なんだろう、これ?


 みんなでフェル姉ちゃんのほうを見るとフェル姉ちゃんは目を逸らした。オリスア姉ちゃんだけはうんうんと頷いているけど、みんなの目はなんて形容したら分からない感じの目になってる。


 フェル姉ちゃんがいきなり消えたと思ったら、メガネをかけたメイドさんの前に転移したみたいだ。なにかお話をしているみたい。


 一応アンリ達もフェル姉ちゃんの近くへ移動した。何のお話をしているんだろう?


「お前ら、メイドと言いながら、本当は別の何かだろ。絶対にメイドじゃないぞ。違うよな? 違うと言ってくれ」


「はい、では皆さん。フェル様のお供の方をメイドギルドへご案内しなさい。最上級のもてなしをするのです。粗相をしたらギロチンですよ」


「聞けよ」


 ギロチンって言った。メノウ姉ちゃんもたまに言うけど、何かの比喩じゃないの? メイドさんをクビになるとか。もしかして物理的なお話?


「とりあえず、この話は後にする。それじゃ、案内してもらえるか?」


「畏まりました。メノウ、フェル様をご案内しなさい」


「はい、ではこちらです」


「メノウ、そんなに畏まるな。なんというか逆に疲れる。お前と私は親友なんだから、もっと普通に接してくれ」


 フェル姉ちゃんがそう言うと、メイドさん達が全員止まった。あのメガネのメイドさんも目を見開いている。これは何だろう? 嫉妬、羨望……殺気?


 当のメノウ姉ちゃんはなぜか目を瞑ってちょっとだけ鼻を上に向けてドヤ顔だ。


「それはそれ、これはこれでございます。ささ、まずは旅の疲れを取りましょう。メイドギルドはこちらです」


 メノウ姉ちゃんが笑顔で歩き出した。みんなもそれについて行く。


「ね、アンリ。メイドさんって怖いでしょ?」


「うん、何となく得体の知れない怖さがある。メイドさんには逆らっちゃいけない感じ」


 メイドさんの評価を改めないといけないかも。


 でも、これからメイドギルドへ行くみたい。アンリは初めて行くからすごく楽しみ。



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