第三話・ハイテクシール
電話はすぐにつながったが、もちろん事務的な自動音声だった。シールに書いてある番号を押せと言われたので、十二桁を間違えないように押すと、転送音がなって、転送音がなって、ようやく電話が繋がった。
「ご当選おめでとうございます。こちらコーク株式会社、当選受付窓口、玉田と申します。まずご当選確認を致したいと思います」
玉田さんは手慣れたようにハキハキと言った。
「それではシールを空にかざして頂いてよろしいでしょうか?」
空にかざしみると薄いシールの中にICチップやら薄型のカメラらしき物が蠢いている。
「そのシールを親指に貼って頂いてよろしいですか?」
言われるとおりにすると、赤く光った線がシールの中を通り抜けていった。
「もしもし、指認証いたしました。住所は西かごめ市殿村五丁目でよろしいですか?」
なぜ、ここの住所がわかるのだろう?公衆電話に書いてある住所を探す。
「えーと……そうですね。殿村5丁目です」
「はい確認いたしました。それではお名前、性別とチケットをお渡しする場所をご申しつけ下さい」
「チケットをお渡しする場所?」
僕がそう聞くとオペレーターは早口で答えた。
「転売目的や、偽装、紛失などの対策のためにチケットは直接手渡しに限定させて頂いております。レストラン等をご指定頂いてそこで直接お渡し致します。ですのでお客様の現在地から近い場所ですと西カゴメショッピングセンター横のファミリーデイズというお店になります。今日のうちでしたら、夜七時以降でしたら大丈夫です。今夜のご予定は御座いますか?」
「はい、大丈夫ですけど……」
「それではそちらに予約を致しておきますね。それでは、お名前と性別をお伺いしてもよろしいですか?」
何がどうなっているのだろう?と僕はシールをいじくりながら自分の名前と性別を言った。
「はい、了解いたしました。あと、こちらは重要事項になりますが、この応募はペアチケットになっています。ただし異性のお客さましか同乗出来ません。あと、国籍もコーク株式会社の方針で国内の国籍をお持ちの方でないとなりません。レストランの食事代、予約はこちらでさせて頂きますので、先にレストランに出向いておいて頂けると助かります。ここまでで何かご質問ございますか?」
僕は何もかもに質問はあるような気がしたが、ありませんと答えた。
「はい、それではお電話ありがとうございます。私、玉田が対応させて頂きました。ありがとうございました」
電話の切れた音が聞こえて、僕は受話器を下ろした。蝉の声が辺りに甦る。これだけでいいのだろうか? まあ、いいかと僕は再びビルの陰に腰掛けた。
しばらくして、彼女は自動ドアから出てきた。
仕事が忙しくなってきて、休憩時間に書いてます。あー時間が欲しいこの頃。
今回更新で200hitを更新しました。読んでいただいた皆様。本当に感謝です。




