死合とは……
元々は、サウンドノベルと格闘ゲームを合わせたゲームを作れないかな?と大昔に考えたシナリオだったりします。
設定や、キャラクターや、大まかなストーリーは、全部出来ていますので、時間があるときに少しずつ更新していきます。
拙い文章力ですが、宜しくお願い申し上げます。
「はぁはぁはぁ……」
夜の闇の中を男が走っていた。
歳は二十歳前後だろうか?
何かにひたすら怯えて、ただ走っていた。
「はぁはぁはぁ、……うっ!」
男が不意に立ち止まる。
いつから、いたのだろうか?
男の目の前には、立ちふさがるように少女が立っていた。
「ねぇ、お兄ちゃん。どうして、私から逃げるの?」
「はぁはぁ、貴様!」
よく男の体を見てみれば、全身から血を流していた。
息が切れているのも、走って逃げていたからだけではないだろう。
「も~!お兄ちゃんも懲りないねぇ~。私には勝てないって分かったんでしょう?無駄な努力はもうやめて、さっさと降参しちゃいなよ」
少女の軽口に男が構えた。
それは、武術の心得があるものの構え方だった。
その姿を見た少女が、呆れたように頭を押さえて左右に首を振った。
だが仕草とは裏腹に、その表情は非常に嬉しそうだった。
「はぁ、はぁ、……黙れ!てめえみてえなガキに降参したら一生笑い者だ!!」
「ヒュー!いいねぇ!嫌いじゃないよ、そういう諦めの悪いやつ!……けど」
少女の目が暗く沈んでいく。
先ほどまでの愛嬌で溢れていた表情から、感情が消えた。
「実力差が分からない馬鹿は嫌い。見苦しいだけだもの……」
「だまっ!?」
ゴギャッ!!!
男のセリフが最後まで言い終わらないうちに、男の顔が真後ろを向く形になっていた。
首が破壊され、二回転した後にである。
「ふぁ~あ……あふぅ」
少女が退屈そうに欠伸をする。
その一瞬の後に、男の遺体は、膝をついて、その場に倒れこんだ。
「女の子に襲い掛かるときには、よく相手を見て襲い掛かる事ね。強さもはかれないようじゃ、この町で暮らしていく価値は無いわね」
「そこまで!!」
二人の死合を見ていた裁判者は、すっと目を細めて、少女の前に舞い降りた。
「勝者、沢上鈴!死合の結果7262連勝!」
天秤を片手に持った初老の男性が、声高らかに死合の結果を宣言する。
「おじさん、この人死んじゃったよ?私の願いはどうなるの?」
「……もう、叶ったのではないのか?こやつの死という願いは……」
少女が大きなため息を吐いて、がっかりしたように呟いた。
「なぁ~んだ、知ってたかぁ……」
木草界という世界にある、始まりの国【マールド】内にある【巣作町】では、建国者が設立したある法律が適用されている。
それは、お互いに命を懸けた戦いの承認である。
<ルール>
①お互いに死合を合意することで、開始される。
②どちらかが降参するか、死ぬまで死合は続けられる。
③勝者の願いを、敗者は必ず聞き入れなければならない。
④一度死合をした相手とは、最低でも一か月期間を開けなければならない。
⑤死合は、国家直属部隊【聖心】のメンバーが審判を務める。
※死合の審判は、裁判者と呼ばれる。
⑥病気や怪我をしている者、16歳未満の者は、家族の承認が無ければ、死合に参加できないものとする。
⑦武器の使用は、認められる。
国家が認めているので、人を殺しても犯罪にもならない。
勝者は、敗者を強姦しようが、奴隷にしようが許される。
まさに、弱肉強食の町なのだ。
だから、この町の人間は非常に強い。
町の外からも腕に自信のある者しか来ない。
だから、この町には弱い人間など一人もいない。
この町は、格闘家の町なのだ。
【巣作町】にのみ許されているこの制度のことを、皆はこう呼ぶのである。
死合と……。