19 その男、毒か薬か
果たして月一は連載と呼べるのか………遅くなってごめんなさい。
難産でした。
今回はほのぼの日常系。
天城の傍らで、飲み慣れないワインをチビチビ舐める。さっぱりしたハムの料理と付け合わせのサラダをフォークで纏めてモサモサさせながら口に運ぶ。
美味い。生き返るという表現があるが、トニオの料理はそう形容するのがしっくりくる。
食べれば食べただけ生気が充足していくのが分かる。干ばつを越えた雑草にかかる、久方ぶりの雨のように、カルマの精神を癒す。
「……」
俺は今猛烈に、この味に狂気から日常へ引き戻されているのだと実感している。剥き出しの警戒心を垂れ流して、些細な物音にも身構えていた最初の頃は、町中でも武器を抜いて引きずっていた。
カルマは仏頂面で、ただトニオへの感謝を思いながら食事する。
「野暮な連中だ……」
食欲が出始めたカルマに合わせて追加されたマルゲリータを摘まみながら、ガラスで隔てられたテラスへ不愉快そうに天城は呟いた。
ロアキの目抜通りの雑踏は遠く、無縁の静寂が不安定な陽光に照らされている。
それが誰に向けた言葉か、程無くしてカルマに分かった。
「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」
十人余りのプレイヤーがエントランス押し掛けていた。
顔が隠れる装備で分からないプレイヤーもいるが男だけの集団に思える。
従業員一名のレストランのキャパシティを超えた来客にトニオは戸惑いながらも丁寧に応対する。
「食事をしに来たのではない。人探しをしている」
「はい?」
想像の斜め上の返事にトニオ人の良い微笑みは呆けたように固まる。
先頭の男は尊大に告げるとトニオを押し退けて店内に入る。他の者もその後ろに続いて店内へ雪崩れ込んだ。
「あ、ちよっと!? いけませんよ!」
「生産系風情がでしゃばんな!」
二番目に押し入った、盗賊然とした風体の男がトニオを突き飛ばした。
「おわっ!?」
横倒しにされながらも料理人の意地で反射的に腕を庇ったトニオは、受け身も取れずに壁に背中から衝突した。
「うぁ……いたた……」
なんとか転倒は避けたトニオは痛みに顔を歪め腰をさする。ダメージが発生しているようだった。
「フン……」
先頭の男はその様を軽蔑の眼差しを向けて鼻を鳴らす。
「……おい」
にわかに殺気立ったカルマが横暴な男達に詰め寄ろうと、椅子を蹴って立ち上がる。
だがそれを天城がシーフードのパスタをフォークに巻いていた手で制止した。
「天城さんッ……!」
なぜ止める。天城程の男ともあろうものが、相手が多いだけで横暴を見過ごすのか。腸が煮え繰り返る思いを飲み込んで天城の目を見る。
天城の目に真意を問いただす。
「カルマと天城だな? 一緒に来て貰いたい」
先頭を歩いてきた男が、二人の間を遮るようにテーブルに手を着いた。
「なぁカルマ。物事には流れってものがある」
「なら今は、流れに沿って我々に従うのが賢明だ」
「ククク……果たしてそうかな……?」
天城の目は怒ってはいなかった。
怒りのその先にある、純粋で、冷酷な害意に満ちた瞳をしていた。幼稚な衝動は完全に支配し、機を窺う怪物の瞳は、味方のはずのカルマにさえ空恐ろしく思えた。
「何をゴチャゴチャと……」
これといった反応を示さない天城を先頭の男はじっと見つめていたが、トニオを突き飛ばした男は業を煮やして声を荒げる。
血の気の多い男を左腕で軽く制した先頭の男は、二人が座るテーブルに向き直る。
「自己紹介が遅れた。私は複合ギルド『円卓連合』直属攻略隊の総長を務めるケファー。後ろのは、副長をしている弟のアンダーだ。気が短い奴で済まない。だがどうか従ってもらえないか? 我々に協力するならば、消耗品の潤沢な支給は勿論、この店よりも質の高い食事も提供出来る」
何皿かがテーブルに残る、綺麗に盛り付けられた料理を顎で指す。
「こちらとしては穏便に頼んでいる間に色好い返答が聴きたいが……あまり悠長に待ってはいられないんだ」
ケファーと名乗った男の背後から、金属同士が静かに擦れる音が鳴る。集団の中のアタッカーと思わしき軽装の数名がゆっくりと鯉口を切った音だ。
つまりは有無を言わせずに連れていくという意志の表れなのだろう。カルマはその男達の全てが気に食わなかった。
モンスターに喰い千切られた体の一部は、回復薬を使ったとしても治癒しない。肉は再生しても、大きく欠損した人体は、例えば指を切り落としたなどの場合、効果は止血の域を出ない。
手や脚等の戦闘に支障が出る傷を負ったプレイヤーが次々と脱落している。
更に問題は肉体的な事象に留まらない。
攻略を続行出来る程度の被害だったとしても、精神に刻まれた痛みと恐怖がモンスターを見る度にフラッシュバックしてプレイヤーを苛む。
モンスターと対峙することが苦痛と感じるようになったプレイヤー達は、弱小モンスターと戦うことすら拒んだ。
しかし、それを表立って責めるプレイヤーはいなかった。
治安の良い日本で生まれ育った彼等に、暴力への免疫が備わっていないことは、生産系や無気力なプレイヤーの割合を引き合いに出せば一目瞭然だったからだ。
無理矢理引っ張り出した所で、逃げ惑うプレイヤーは最前線では格好の餌食でしかない。特に、モンスターが強力になり始めた最近はその傾向が顕著になってきている。
確かに、強大なボスモンスターに斬り込めるハイレベルなプレイヤーの不足は深刻化しているのだろう。
だからカルマは苛立った。
戦おうとしないプレイヤー達にではない。そんな事は個人の自由だ。
生産系は戦わないなりに攻略の礎を築く陰の功労者だと考えている節もある。
「…………」
カルマは敵意を露に睨み付けながら口を開く。
トニオへの態度といい強引な手法といい、正直言ってムカつくが、組織化は好きにやれば良い。
「一人でも多くの戦力が欲しいことは理解している。それが大義名分に基づいた行為だって事もだ」
「理解が速くて助かる」
敵対的だったカルマが存外に肯定的に答えた事に意外そうに、ケファーは慇懃に手を伸ばして起立を促す。
「では、ご同行願えるかな?」
しかし、差しのべられた手をカルマは払いのけた。
「だが他所でやってくれ。顔も知らない奴のレベル上げを手伝うような余裕は無い」
「それは、どう転んでも我々に協力する意思は無い、そうと受け取っていいか?」
「あんたの好きなように捉えてくれ」
「なるほど……だが我々も猶予は少ない。任務をしくじる訳にはいかないのだ」
ケファーは交渉の決裂を惜しむようにかぶりを振って指を鳴らす。
「連れていけ」
ケファーが下がって控えていた男達と入れ替わる。男達はテーブルを蹴飛ばしてスペースを作り、距離を置いて得物を構えた。
「邪魔をするなら、この場のお前達全員を皆殺しにしてでも出ていく」
精神状態を元に戻す儀式でもある食事を中断させられたカルマの心は、暴力の行使を否定しなかった。
立ち上がり様にアイテムボックスから《スレイヤー》を装備して鞘を抜き捨てる。
「トニオさん。店が壊れてもリフォーム代は俺が全部持ちます。だから……」
成り行きを固唾を飲んで見守っていたトニオへの謝罪の言葉と視線を、切っ先を、連合を名乗る集団に向けたまま送る。
「カルマさん……」
一瞬だけ結ばれたカルマの瞳の奥に秘められた感情を、共感能力に長けたトニオは読み取ってしまった。
何時もと変わらない大人びたカルマの仮面の奥で渦巻いていたのは、如何なる出血も許容して進む、血みどろの行進を地獄の最下層までやり遂げる、断固たる決意だった。
「俺を赦さないで下さい」
《スレイヤー》を板張りの床に刺す。
装備品であっても、手を離した時点でアイテムの放棄とシステム上では見なされる。
皹割れてなお神聖な光沢を保つ《スレイヤー》はカルマの手を離れた。
それが持つ意味とは。
武器を捨てるという意味不明なカルマの行動に天城以外の一同は警戒して身を固める。
「狼狽えるな! 虚仮脅しだ」
部下の過剰な緊張を解すために意図してかアンダーが声を上げて、左腕のバックラーとショートソードを打ち鳴らす。
その間隙にカルマはウィンドウの操作を終えていた。
新調したばかりの大剣が新たに装備される。
武装や装備には、検証マニアですら調査していない知られざる条件がある。
ナイフ等に代表されるような同時に複数装備出来る軽量の武器は、盾を持った腕に重ねて装備が出来る。
だが、グレートソードや戦槌、両手斧等の武器には、両腕が手透きでないとウィンドウで装備の操作が不可能というのが通説であり、事実だった。
そもそも初期の重量武器でも現在の筋力値で精一杯だというのに、二つ扱う検証が行えるステータスのプレイヤーはどこにもいなかった。
それ故彼等は二万四千人のプレイヤー中初の目撃者となる。
三十センチ近い柄の中程を握り締め、背中に留めているベルトのボタンを弾くように抜刀する。
身の丈をも上回る無骨な鉄塊を右手一本で易々と保持し、振り回す。その程度のプレイヤーなら居ない事もない。
そしてカルマは《スレイヤー》を左手で拾った。
武器としてではなく、ただのアイテムとして。
オブジェクトとしての所持ならばシステムからの干渉は無い。しかし装備された武器でなくとも攻撃力が発生することは、武器投擲の普及が証明している。
事実上の二重装備。
レベルアップボーナスを集中し、多大な代償の末に手にしたカルマのstrは、同レベルのバランス型プレイヤーの三倍近い。
オブジェクトとして持とうが否応なしにのし掛かる《スレイヤー》の超重量を片手で持つに足るステータスを持つのは、全プレイヤーの見渡してもカルマ一人。《復讐者》で倍増した上にボーナスの大半を注ぎ込んだstrで初めて至る究極の攻撃特化。
まともな防具など装備出来ない。
「彼の意思は聴いたな。プレイヤーキラーとなる前に刈り取る。指の一本や二本なら構わん。やれ」
ケファーの号令を受けて扇状に散開したアンダーらは、一斉にナイフや鉄球を《投擲》した。
敵対を示していない天城までも標的とした飛来物。
だが、カルマが横凪ぎに振るった大剣は鉄の暴風と化し、店の内装ごと剣の腹に尽く打ち払われる。
「な、舐めんじゃねぇッ!」
アンダーは大剣の防御の隙を狙ってショートソードをコンパクトに突き込んだ。
銀の燐光を閃かせて襲い掛かる刃は、フレイムフォールやデッド・ロスとの死闘を乗り越えたカルマにとって、あまりにも生易しく、鈍重に見えた。
「……」
アンダーの《投擲》スキルのレベルは決して低くはない。
それでも相手が悪かった。
大剣を払って空いた胸の空白に吸い込まれるショートソードの刃の半ばに《スレイヤー》が横合いから食らいつく。
str値、重量、切れ味、耐久力等の数値の対抗は、刹那の拮抗の後に敗れたショートソードは真っ二つに折られた。
「なにぃっ!?」
腕ごとショートソードをかち上げられて体勢が崩れたアンダーの胸当てに、回転する大剣の慣性に従ってカルマが放った後ろ回し蹴りが炸裂する。
「ぐぅっ!?」
アンダーはもろに蹴りを受けて宙を舞うが大したダメージではなく、テーブルを乱しながらも着地した。
「てめぇ……舐めてんじゃねえぞッ!?」
回復薬を飲み下して一割ほど減ったHPを戻すと瓶を投げつけてカルマに憤慨する。
「なんで斬らなかった!?」
アンダーが怒るのは、ショートソードを弾かれてバランスが乱れて足が床から浮き、明らかな間隙が有ったにも関わらず、カルマは必殺の剣ではなく蹴りを使った事だ。
侮られている。
少々短気なきらいがあるアンダーはそう考えた。
「お前らのような馬鹿に警告しているだけだ」
「どういう意味だてめぇ!」
「まあ待てアンダー」
いきり立って予備のショートソードを手に持つアンダーをケファーが宥めて前に出た。
「ふむ、レベルの差があるとはいえ、ここまで動きが違うか。野放しにするには実に惜しい」
天城は静観に徹しても圧倒的な戦力差が生じている事を憂うように、ケファーは一人ごちる。
「勿体無いとは思わないか?」
「交渉する気はない。ここに入った奴から殺す。死にたければ来い」
カルマは頑として聞き入れず大剣で店の床を半円状に削る。
カルマが明示した意思に戦いの匂いを嗅いだプレイヤー達は、改めて各々の武器を構える。
「最後に一度だけ訊く。覚悟はいいか?」
その半円の中心点には人の形をした修羅が立っていた。
「俺は出来てる」
人を殺す事に一分の躊躇いも無い眼差しに、無機質なモンスターとは違う鮮明な殺意を感じた連合のプレイヤー達の脚が竦む。
「しかし解せんな。交渉の余地は無いと言ったが、本当にそうか? 我々を殺して何の利益が君にある?」
怯む戦士を掻き分けてケファーが進み出る。
「むしろ損害だけではないかな? 一人でも斬ればお尋ね者だ。プレイヤーキラーとなれば迂闊に町にも入れないようになるだけだと思うが?」
「ク……」
その時、修羅場にあって一人だけリラックスしてワインを味わっていた天城が吹き出す。
「ククク……」
「何がおかしい……」
「何が可笑しいか? ああ、可笑しいさ。……つくづく三流の凡愚よな」
「何……?」
「下手な上塗りで隠してるがその実、数の暴力に任せた力押し。それを崇拝してやがる。憶えときな。すべての人間が理だけで動くと思ってるなら大間違いだ」
グラスを揺らしながら含み笑いを浮かべ、穏やかに諭す。
「お前に言って分かるとも思っちゃいない。本当の意味を理解出来ないからこそ、お前は三流止まりなんだよ。いや、何時だってそうか。世界は言っても分からぬ馬鹿ばかりが氾濫してる」
「世迷い言を……」
「それを決めるのはお前じゃない。結果が反映された世界だ。暴力ってのは、無法で無茶で無意味で無価値で無軌道の結晶。その先は振るい振るわれ曝された者のみぞ知り得る」
トニオの料理とはまた違う、耽美な悦びを軽妙な語り口で説く天城は、ケファーの理解の範疇から程遠い。
まるで正体不明の怪物と遭遇したような戦慄に背筋を凍らせたケファーは反射的に己の得物である銀の短槍を抜いた。
「このような奴等と対話しようすることが無駄だった……」
「おいカルマよ」
「なんですか?」
何の気なしに語りかけた天城に過剰に反応するケファーから目を外さず、背中越しに返事をする。
「昨日、橋を渡った後に殺した敵を数えてたか?」
「五十までは」
「オレもだ」
「ハッタリだ!」
痺れを切らしたアンダーが再び飛び出してケファーに並ぶ。
「オレもやる! 兄貴とオレなら余裕だ!」
「フン……では教えてもらえるか。後ろのやつらも死んでも構わない十人か? そこのお前、死ぬ準備はしてから来たか?」
「う……」
天城に指で差された軽装の男が後退る。
「ただの脅しに怯むんじゃねえ! 有利なのはこっちだ!!」
アンダーは額に汗を浮かべ、浮き足立つ部下に怒声を浴びせる。
「やるぞアンダー……」
「おう……」
ジリジリと摺り足で間合いを詰め、いよいよ一触即発となった店内まで聞こえる程の足音が、慌ただしくやって来た。
乱暴に店のガラス戸が開かれた。
「ケファー、アンダー、何をしているんですか!?」
入ってきたのは、顔立ちの整った黒髪の少年だ。
純粋、素直を絵に描いたように澄んだ真っ直ぐな瞳をしていた。
高貴な白銀を瞬かせるブレストプレートと、前腕や脛を守るに留まる程度の防具を身に付けた体で人波に分け入ってケファーに詰め寄る。
「意思を尊重する筈でしたよね? 話が違うじゃないですか!?」
胴鎧こそ新しいが、その下に着用している服はズタズタで薄汚れているカルマとは対照的に、純白のチュニックとサーコートには染みの一つも見当たらない。
「悪の芽を摘むためだ。プレイヤーキラーとなる前に。現にカルマは剣を抜いて明らかな敵対を示した」
「そんな馬鹿な!」
「イース、あなたは人の善性を盲信している。それがあなたの美点だが、欠点なのだ。私はすべてのプレイヤーに救う価値があるとは思えない。少なくとも、この二人は危険だ」
ケファーは肌で感じ、根源で理解した畏怖の権化たるカルマへ、短槍の穂先を向けて構え直す。
「何があったかは分かりませんが、大勢で囲んで脅迫紛いで行動を強いるなんておかしいですよ! 議会の決定にも反してます!」
横合いで話の火の粉を浴びていたアンダーが、少年の剣幕にばつが悪そうにショートソードを収める。
「……いずれ牙を剥く時が来るかもしれない。その時に手に負えなくなっていては、全プレイヤーが困るのだ」
「犯してもいない罪で人を裁ける存在なんていません」
自分の正しさを信じる曇りなき目と未来を危惧する目の睨み合い。
「イース…… 勝手な言い分を主張しているのは自覚している。それでもだ。私は……」
「囚われた全員の為に、私たちは戦ってきたんです。これだけは譲れない。私たちに都合のいい人だけを助けてしまったら、ここを曲げたら意味が無くなってしまう!」
ケファーの前に立ち塞がり、頑として譲らぬイースに根負けし、短槍を下ろした。
この頑迷なまでの善良さを信じてこの少年に着いていこうと思ったのを思い出したからだ。
「イース……」
「ケファー。これは議会の一人としてだけでなく、パーティーリーダーとしての決定です。武器を収めなさい」
「……分かった」
一応は矛先を収めても疑心に満ちた様子でカルマを凝視している。
「アンダー、私は先に戻る」
「お、おい兄貴!?」
「頼む……一人にさせてくれ。ここは任せたぞ」
「あ、ああ……」
短槍の装備を解除すると、呆気にとられる弟と部下を残して、振り向かずにトニオのレストランを去っていった。
イース少年はケファーが通りの角で見えなくなるまで真摯に見守り、カルマと天城とトニオの三人に頭を下げた。
「あの阿呆はなんだったんだ?」
「さぁ?」
カルマはといえば、挫折や絶望の片鱗もまるで知らぬといった少年が演じるこの下吐が出そうな茶番劇に嫌気が差して大剣を仕舞い、《スレイヤー》を拾い上げた鞘に戻していた。
「この度は僕の留守の間に仲間が迷惑をおかけして……どこかお怪我は……?」
襤褸の服のせいか、心配そうにカルマの手足の怪我を探してペタペタ触る。
「無い。さっさと帰ってくれ」
取り付く島もない冷淡な声で拒絶し、振り払った。
どかりと椅子に腰掛け、自分のグラスに四割程残ったワインを一気に煽る。
「何か足りないよな?」
「そうですか?」
天城の含み笑いをかわしたカルマは冷めてきたマルゲリータを一切れ取って頬張る。
「お願いします。お話だけでもさせてもらえませんか? みんなで力を合わせれば犠牲だってきっと……」
「間に合ってる」
にべもないとはまさにこの事。カルマは目を合わせてやろうともしない。
「そうですか……」
イースはガックリと項垂れ、アンダーに二三の指示を囁いてエントランスのドアノブを握った。
「おいおい、どこに行くんだ?」
ほのぼのとはなんだったのか。
嘘っぱちでした。
今後の伏線みたいなのがちらほら。
特にイース、ケファー、アンダー。とかの名前は分かる人は分かるかも。
殺る気はあったけど、トニオの料理で落ち着いたので不完全燃焼でした。
システムの穴はまだいくつかあるので、ぼつぼつ裏技的な使い方をしていきます。




