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OVER_THE_HORIZON  作者: 首藤環
一部 第一章いざ、倒れ逝くその時まで
17/20

17 光の座

 闇に支配された一本道でカルマは、息を切らせ《スレイヤー》に額を乗せて寄りかかっていた。周りには無数の血痕で真紅に染まっている。

 天城との協力という名の別行動で、二百体ものデッド・ロスの果てしない波を捌いたカルマの精神は確実に磨耗していた。

「敵は、もういないか……」

 星明りだけが照明の新月が見守る周囲をぼんやりと見回し、霞む視界に立つものが皆無だと分かると溜め息を深くついた。

 気を抜いたカルマの耳に砂を蹴る音が間近で聞こえる。すぐ後ろ、1メートル以内から。

「ッ!?」

 精神が綻んだ一瞬の隙に、《索敵》の警戒網の合間を縫って突如現れた足音の持主の首へ、逆手で《スレイヤー》を叩き付ける。

 目が霞む。手は震える。

 デッド・ロスに貰った返り血がまだ響いていた。

 それでも力任せを信じた剣。

「っと」

 それは一本の腕に手首を掴まれてあっさり止められた。

「おい……オレだ」

 眉間スレスレまで接近した《スレイヤー》に額の白髪の一部を切り落とされていながら、涼しい顔で天城はそこに佇んでいた。天城も相当な激戦を潜り抜けて来た筈だが、傷だらけで防具も残らず破損したカルマとは真逆に、疲労している様子もない。

「あ……天城さん……?」

 肌で感じる体温と圧力で、何を斬りつけたをカルマは知る。モンスターではなかった安堵と殺しかけた呵責で、カルマは天城の前に膝を着く。

「立て」

 天城は片膝を着いてカルマに肩を貸し、立たせる。

「オレも(ナイフ)が切れた。お前もそうだろう? だから進むぞ。今更戻れる道じゃない」

 体力、精神力、集中力の限り、七日七晩歩き、生死を賭けて戦い続けた。

 カルマは運動が他人よりも少し優れただけの一般人であり、極限状態に晒され慣れてはいない。

 回復薬で傷は癒えても、度重なる痛みと警戒心を保つストレスからは逃れられなかった。もっとも、その回復薬も使い果たしている。

 カルマの心身に疲労感が重くのし掛かっていた。

「すいません……」

 天城に体重を預け、よろめきながら、仄かに彼方の空が明るむ道の先へ歩く。

「町が見えたぞ。後少しだ、頑張れ」

 泥沼を進むように遅々とした足取りで、文明の明かりを目指す。







 そこは、あらゆる所が明るさに満ちていた。

 色で例えるなら白。物で云うならば光。

 そこに在るものはみな、この世の物とは到底思えないほど光輝甚だしく、まばゆい。

 果ての無い光の間の中心では、一際光を放つ姿達が円卓を囲んでいた。

「各プレイヤーの進展状況はどうだ?」

「東方面に目立った動きは無し。ヘタレ野郎しか居やしねぇ」

「南も右に同じ。製作者としてはつまらん限りだな。マップを埋めるだけで満足してるようだから強力な装備が手に入らんのだというのに……」

「そう言ってやるな。見返りも不確かな物に命を費やせる人間が少ないのは分かりきっている」

「まぁな」

「とはいえ、こんな序盤で躓くようでは困るな。そうだな……発破をかけてやるとしようか」

「西と北はどうだ?」

「担当者は誰だっけ?」

「ああ、西は私だ。すまんな、少し立て込んでいた」

「仕方ないさ、俺達は誰だって忙しいからな。どんな感じだ?」

「それなりに効率が良いパーティーが幾つかという調子だ。中心メンバーに他で鳴らしたそれなりに名のあるプレイヤーがちらほら見受けられるな」

「例の剣を抜いた奴がか?」

「いや、そのプレイヤーは熟練者ではなかった」

「本当か?」

「ああ、家庭から交友関係まで洗ったが、至って普通の少年だ」

「偶々か、必然か……」

「その少年が本物であるかはいずれ判るだろう」

「そのイレギュラーこそが、分野も人種も違う我々が集う理由なのだからな」

「ハハッ、違いねぇ」

「さて、一番期待出来そうなのは北だが……」

「北と言えば、新入りさんが抜け駆けをしたようだね」

「そうだな。それについては事前の説明が無かったが、一体どういうおつもりか?」

「しかも一等面白そうな奴にちょっかいを出したと聞いてるぜ? そいつぁ、よろしくねぇなぁ……」

「面白みが無かったと言えば嘘になる。だが、鍵を渡しただけだ」

「客観的な観点ならそれは事実だが……」

「彼には、私から直々にお願いをしていてね。盛り上げるための仕込みを頼んだのだよ」

「一人だけに話を持ちかけるというのは、些か不公平じゃありませんか?」

「結果として新入りだけ摘み食いしたんだからなぁ」

「それはすまないと思うが、ここは私の顔を立ててはくれないか? 彼の参加があってこそ我々の夢が実現に至ったのだから、多少はうまみがある役を演じても良いだろう? もちろん、諸君ら誰一人が欠けていても不可能な話だったが」

「それを言われると弱いですね……皆さんはどう思われますか?」

「確かに、立役者であることは認めざるを得ない」

「我々もそれなりに楽しんではいる。完全に不公平かと訊かれてもイエスではない」

「過ぎた話を掘り返すのは男らしくねぇか……いいぜ、認めよう」

「計画の段階以前にこの手の問題に結論は出ている。不毛だ」

「そうだね。我々は、生物としての矛盾という同じ不満を抱えた同志だ。仲良くしようじゃないか。我々は同じパターンを示した数少ない仲間だ」

「話を纏めると、新入りの工作は静観。我々は第二幕が開けるまでは潜伏という事だな?」

「あ~、北に行ってみたくなったぜ。面白い連中がいるらしいしな」

「変人の嗅覚という物なのか、どうだろうな?」

「色物が目白押しだ。指名手配中のサイコパスまで潜り込んでいる」

「北の天城とカルマってのが凄いって噂は聞いたけどね」

「ああ、天城の経歴は特に凄いぞ。生ける伝説だ」

「有名人なのか?」

「その筋ではな。電脳かしているとは知らなかったがな。頭の天辺まで狂気に浸かりながら悪魔の知略を駆使する無敗の男だそうだ」

「おいおい、どんな怪物だそりゃ……」

「アレはここまで登ってくる男だ。信じられないだろうが《アローン・リーパー》も使いこなしている」

「……あの冗談で創ったスキルをか? 一応攻略法はあるが我々でも扱いに持て余したというのにか?」

「ああそうだ、数えているのだ。あの男は。にわかには信じられん話だが……データは嘘を吐かん。その男の真贋はこの使用回数が物語っている……」

「カルマとやらもその類か?」

「功績という点で彼に目立つ記録は無かった。ダイブゲームのランカーでもない。いや、中学生の時分にクラブ活動で日本最優秀選手に選ばれてはいるが、運動能力を失った今は関係ないだろう」

「失った? それはまたどうしてだい?」

「その件は、ライカというプレイヤーが関わっている」

「ライカ、といえば最初のゲームオーバーのプレイヤーか?」

「あれには参ったぜ。武器も持ってないってのに、平気な顔してモンスターを退治するとはな」

「そうだ、そのライカとカルマは以前から親しいようでな。何年か前に、カルマはある事件を起こした」

「事件だと?」

「起こしたというのは少し語弊があるか。正確にはライカの身に降りかかった不幸に関わった、だな」

「もったいぶるなよ。どんな事件だった?」

「未成年の彼は名前を伏せられたが、当時は世界的に有名なニュースだ。諸君らも知っている筈だ。聞いた事があるだろう? 『十人を殴殺した少年A』という名ぐらいは」




 キャラの背景にちょっと触れてみました。

 後半で会話してるのはゲームマスターだと思ってください。



 十人殺し……逝きすぎィ!な気もしますが。

 今回触れるのはチョビっとです。

 そのうちカルマの口から語られる事でしょう。

 ではまた再来週ぐらいに(遅!?)



 素朴なクエスチョン、整合性がおかしい、文章力が無いなど、どんな感想も待ってます!

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