14 羅刹
ラヴァドラゴンが天城の手で死に、ランボスが後退した時、カルマは一刻も早く吐気のする集団から離れたいと思い、このダンジョンを抜けてそれを実行するべく大剣をしまって背を向けようとした。
当然天城もそれを選択するものと思い込んでいた。頭の螺子が何本か抜けた奴と戦う愚行を冒す気はさらさら無かった。
しかしカルマのパーティーには、彼、彼女らを凌駕する異常者がいた故に、努力は徒労に終わった。
「まだやるんですか天城さん……」
「本番はこれからだぜ」
倒したボスや唯一の逃げ道には目もくれず、不敵に笑って女につま先を向けた天城にカルマは肩を落とす。
殺す殺すと言う相手に大人しくやられてやろうとは思わないが、天城ほど死に寛容になれる自分でもない。
もしや殺し屋だったんじゃなかろうか。
現実での天城の職を考えることで、目の前の状況から少しでも離れたかった。
「逃げるなら今しかないですよ。総出で来たらお手上げですからね」
その時の責任は自分たち二人の死をもって負う事になる旨の、諦めを込めた警告をする。
「その時はその時だ」
それだけは御免だった。
ならば攻撃的なステータスが高い自分が動くより他ない。
天城の目配せに黙って首肯し、カルマは一人静かにラヴァドラゴンの消えかけの亡骸のグラフィックに潜り込む。
「やだなー、わたし一人でやるって決まったって言ってるじゃ~ん。そんな無粋なことしないって」
朽ち往くラヴァドラゴンの首を蹴飛ばして笑う女は、手のひらをひらつかせてその手段を否定する。
「そーだよねーみんな~?」
首を捻じ曲げて背後に控える同族に呼びかけた。
「キチガ○にだってルールはあるぞ!」
「そうだ! ウチのギルマスは変態だが良識は有るんだぞ!」
「プェー!」
「dШyぶnrЯf*!」
一部何を言っているのか分からないプレイヤーがいるが、女の人望はあるようで、拳を振り上げる人影達からはおそらくは賛意を示す声が返ってきた。
入り口付近まで戻らず、女の後方十メートルほど佇んでいたランボスだけが、憎憎しげに女を睨んでいた。
過剰に警戒するカルマを安心させようとフェアな一対一を説明したかったのかも知れないが、短時間でも後ろを向いたことを見逃す天城とカルマではなかった。
一瞬の隙を突いて音も無く天城が距離を詰める。
「迂闊だな」
「ウヘヘ、どうだねカルマ君。このカリスマは……あ」
だらしなく緩んだ顔が間近で聞こえた天城の声に急速に引き締まるが時すでに遅し。
消滅しゆくラヴァドラゴン以外の一切が消えた荒れた大地を三歩で詰め寄った天城の手が、女の肩口に触れていた。
「あっ」
一撃で殺せないナイフで斬りつけるよりも、危険を冒してでも必殺の威力を持つ、《アローン・リーパー》を天城は選んだ。
天城は座して死を待つだけの獲物ではない。
己と同じ、狩る側の人間だった。
その事実を喜びと驚きをもって再確認した女は間抜けな声を漏らして目を丸くした。
「油断は死を招く」
スキルが発動した証である小型のリボルバー拳銃が、天城の右手に形成される。
「あー……やられた」
目の前の男を認め、眉間を揉む。
vitを極限まで軽視したボーナスポイントの振り方をしたステータスでは、防御力を無視した攻撃に耐えられはしない。
ラヴァドラゴンのHPを大量に削った攻撃力の半分でも、HPは余さず消し飛ぶであろうことを、女は誰よりも知っていた。
「でもまだ終わりじゃないよ」
含みのある笑いを残して早く撃ってみろと腕を広げる。
「さぁどうぞ。確立は最低でも三分の一だ。生きる目は十分に有るからね」
「言われなくともやるさ。楽しもうぜ」
「いいねいいね、それでこそ天城君、君だ」
片や一発で死ぬ危険性を孕んだ自殺行為。片や無抵抗で命を投げ出す。
どちらもが、喜んで命を賭ける狂人だった。
狂気を滲み出させた微笑を二人が浮かべる。
弾を込めてシリンダーを回し終えた銃を天城はこめかみに添える。
「それじゃ……一発目だ」
しかし、それは耳障りな高笑いに中断された。
「ハハハハッ!! 生き残る目だと!? そんなものはねぇんだよ!」
肩に斧を担いだ姿勢で女を見下すようにランボスは笑い続ける。
「体力が低いテメェが生き残れるわきゃねぇだろーがよ!! 万が一生き延びても俺の敵じゃねぇんだクソアマがっ!!」
そんなランボスを、天城と女は救いがたいものをみるような目で一瞥し、視線を交差させる。
「どう思う?」
「つくづく間抜けな野郎だ」
「だよね」
女は視線をランボスに戻す。
「君は本当に……『馬鹿』だねぇ」
「んだとッッ!!」
呆れるように言う女に一度は青筋を立てたものの、女の危機的状況を見直してランボスは落ち着きを取り戻す。
「何とでも言ってみな、テメェはもう終わりだ」
「へぇそうかい。皆はどう思う? 死ぬと思う人~!」
《アローン・リーパー》は発動中もダメージが発生しない行為ならば、有る程度自由が利く。女は虚仮にした満面の笑顔で控え居る部下に大声で尋ねる。
必中のスキルが発動した今、女は逆に開き直って無敵時間を自分の為に使う。それが仲間に推測不可能な二択を訊くような、無意味なことであっても。
女には、何の躊躇いもない。
差し迫る危険を恐れない女に歯噛みするランボス。
ギルドのプレイヤー達は誰一人反応しない。
女は片方の犬歯を剥き出しにしてニタニタと笑う。
「エヘッ……それじゃあ……生き残ると思う人」
続々と手が挙がる。
「ふ、ふざけんな! テメェは死ぬんだ! 生き延びるワケがねえ!!」
「そうだそうだ。その通りだ。わたしは死ぬ……かもしれない」
「生き延びても俺がすぐにぶっ殺してやるッ!!」
ランボスは女の真後ろで斧を振り上げ、スキルが解除させたと同時に攻撃できるように構える。
「そう、もし、生きてたらだけどね……君がさ。プッククク、状況がぜんぜん読めてないって……」
噴出した後に天城に向き直る。
「さぁやろう。面白おかしく道化が踊っているうちに。誰が狩られる獲物かも分からないうちに」
「まったくだ」
天城が撃つべき胸の中心を、意気揚々と自分で示す。
さぁ撃て。さぁ殺してみろと。
「フン……」
何の感慨も持たずに天城は自分へ向けて引き金を引いた。
――――カチン。
その場の全員に聞こえた音は、乾いた発砲音でも、脳漿がぶちまけられた水っぽい音でもなく、銃弾の雷管を叩けなかったハンマーの空振りを知らせる金属音だった。
女の仲間達から盛大なため息が聞こえる。
しかし、女は二発目に期待して目を輝かせている。
凶悪な威力に目を奪われがちだが、このスキルは、使用者が最も危険を強いられている。
前提条件として敵の手が触れる距離まで近寄らなければならず、仮に一発目を凌いだところで、スキルが終了すればまた敵の前に放り出される。
必殺の破壊力を求めれば自分の身をも滅ぼしかねない諸刃の剣。
我が身を可愛がる者には扱えぬ劇薬。
「はい次いってみよ~」
「お調子者め」
調子のいい女に天城は僅かに笑顔を見せる。
だがそれでも手を緩めはしない。
二人の男女が話す姿は、命を賭けた大勝負の真っ最中には見えない。天城の拳銃にさえ目を瞑れば、談笑しているような空気にランボスは不安になる。
天城は放っておいても死ぬだろうし、いけ好かないこの女も五回目の弾丸以外の効果でもし、万が一死なずとも他ならぬ自分の手で葬れるだろう。
その揺ぎ無い事実が自分を待っているはず。
「な、何が次だ……」
気がかりなのは天城の自爆で生還され場合だった。されどその可能性を摘むために自分はこうして武器を構えて立っている。恐れる必要はどこにも無い。
「死ね! 死にやがれ!!」
「うるさいなあ……死ぬのは君だってどうして分からないのかなぁ」
女は不思議そうに首を傾げる。
「言わせておけ」
十分な殺傷力を得ているはずの拳銃を、天城はまだこめかみから離さない。
「馬鹿は死んでも治らない」
引き金を立て続けに二回引く。
その両方が不発だった。
「フフ、そろそろだね天城君……」
「ああ、そうだな」
ランボスは固唾をなんで勝敗の行く末を凝視する。
次かその次。それで終わる。それに備える。緊張で手が震えた。
四回目も時間をかけずに天城は引いた。
やはり不発だった。
「やっぱりこうなるんだね。君はついてないよ、ぼん君」
「黙れ! ぶっ殺してやる!!」
度を越えた緊張で青い顔のランボスは口から泡を飛ばして激昂する。
「いいや、終わるのは君だ」
五度目は無かった。
天城は銃口を女の胸に向け、あっさりと発砲した。
「ありがとう天城君」
ニヤリとし、言い終わる前に女の体は着弾のノックバックに押されて背後に構えていたランボスに追突する。
「うおッ!!」
予測より早かった発砲に意表を突かれたランボスは、女の背中にもろにぶつかり尻餅をついた。女はそのまま背中から着地して地面を何度も転がる。
慣性が切れ、回転が収まって仰向けになった女は生きているのが不思議なほどの大穴が胸には空いていた。コートを引き千切り、その下に着ていた革の鎧は吹き飛んで皮膚も無くなり、白いあばら骨のようなものまで見えている。
だが《アローン・リーパー》の効果に生かされている。HPのちょうど九割を奪い、なお生かすのが四回の危険を乗り越えた者の攻撃に宿る効果。
痛みを受け、浅い呼吸を繰り返す。
「くぅ~~ッッ……効っくぅ~……」
致命傷ギリギリのダメージ。継続したダメージが発生しない特殊なスキルだっだからこそ女はまだ生きている。
状態異常ではなく、ダメージエフェクトの出血が傷から迸り出して女の体を濡らし、枯れた大地に一輪の赤い花が咲く。
痛みによる半ショック状態で今は全身が強ばり、手が痙攣して回復薬が飲めない。
「フフッ、こんな方法で濡らされるとは思わなかったなぁ……」
誰に聞かせるでもないジョークを言って噎せ、血の泡を吹く。
「おーい、ぼん君何してるんだい? わたしは動けないんだぞ~? 殺さないのかい、絶好のチャンスじゃないか~」
弱弱しく、しかし挑発する顔は楽しそうに笑っている。強烈な光景に放心していたランボスはその声で我に返り、武器を取って立ち上がる。
天城など眼中に無かった。
「おいでおいで~」
痛みに対する耐性を異常な早さで得た女は、早くも動かせるようになった手首から先で手招きを繰り返す。
「舐めやがって……」
度重なる挑発行為に怒り心頭の様子のランボスは、止めの一撃を加えて減らず口を黙らせるべく、迅速に行動する。
手始めに目障りに動き続ける左手を踏みにじる。
体重の掛かった踏みつけを受けた指は、関節が逆方向へ捻曲がり、いとも容易く脱臼する。
「ぐっ……」
襤褸切れのように泥にまみれ、ぐちゃぐちゃになった女のHPがじわりじわりと減少していく。
「そうだ! もっと苦しめ。その顔が見たかったんだ」
女の苦悶の表情や声を糧に、欲求が満たされていく充足感をランボスは感じる。ささやかな自尊心がくすぐられて快感に変換されるのが堪らなく嬉しかった。
「薄っぺらいね。君に何をされても痛いだけ。わたしの心には響かない」
死の淵に追いやる仕打ちも癪に障る笑いを崩せはしなかった。
「一方的になぶり殺すだけの能無し未満のクズだね君は。おまけにオツムも足りないときてる。わたしを殺して皆から逃げ切れるとでも思っているのかい」
「命乞いか? 良いなぁ、もっと聞かせろよ!」
短絡的だったランボスの思考も今だけは優越感で遮断され侮辱を受け付けない。
「命乞い? 違うね。君の未来だよ」
女はせせら笑った拍子に、また血のあぶくが唇で膨らみ弾ける。
「ケホッ……君の運命はさ……袋小路だ。行き止まりだよ。嗚呼、君みたいな馬鹿と三ヶ月も過ごしたなんて、馬鹿馬鹿しくて悔しくて泣けてくる」
「フン、死ぬのが怖くて壊れた脳味噌がもっと壊れたか」
五指を余すことなく破壊し、原型を留めぬ女のの手を蹴り上げる。
「いずれ襤褸を出しそうなアホと手が切れてよかったと、今は考えればいいか……」
女は血糊でテラテラと光る唇を舐め上げ、喉を上がってきた血や唾液と混ぜたものをランボスの脚に吐いて飛ばした。灰色のレガースに赤い汚れが生まれる。
「死神はすぐそこだよ。鎌の切っ先はもう背中に当たってる」
「そんなに早く死にたいか」
ランボスはそれを拭いもせず、斧を頭上に振り上げる。
「なら死ね」
「君がね」
「テメェの減らず口もこれで終わりだ」
動けなくなるまで痛めつけたプレイヤーの首をこうして落としてきた。獲物は今度も首を差し出している。
抵抗は出来ない。手首から先しか動かせない死に体の奴に何が出来る。
それでも得体の知れない恐怖の片鱗を感じた。その根源を絶つために、止めを与える斧を振り下ろす。
「死――――ゲフ……!?」
その軌跡は半ばにして攻撃目標への力を失った。胸を腋から貫く熱に、くぐもった声がヘルムから漏れる。
「あ……が……」
その熱の正体は胴体を貫通した皹だらけの刃だった。
攻撃アクションによって《隠密》スキルが自動解除されたカルマが不可視のベールを脱ぐ。
「カルマ君~助かったよ~。もう駄目かと思った」
「よく言うぜ。目の端で追ってただろ」
「まぁね」
カルマは《スレイヤー》でランボスを横から串刺しにしていた。
「て、テメェが……どうしてここに……?」
疑問と共に、真紅の血が流れ出て、ランボスの足元に水溜りが生まれる。捻じ込むような威力のない方法にしろ、《スレイヤー》の刺突を腋の下の鎧の隙間に受けたランボスのHPは残すところ僅かだった。
生命の象徴とも言える赤い血潮が刻一刻と体から失われる。剣を通じてカルマに支えられてなければ立つ事も危うい。
カルマは《スレイヤー》を引き抜いた。
「後は好きにしろ。立てるんだろ?」
剣を振って付着した血を飛ばす。
飛散した血飛沫を頬に受けた女は手の甲で拭き、妖しく舐め取る。
「ん~、そうだね。後はわたしにお任せを」
ダメージなど無かったかのように女は起き上がり、回復薬の瓶を一気に呷る。歪に折れ曲がった指は瞬時に正しい付き方に戻り、胸の穴の肉が蠕動して傷を埋めていく。
あっという間に負っていた全箇所の負傷は癒され消えた。
「では、被告人を裁きますか」
首の骨をコキコキ鳴らしてランボスに近づく。
「なんで、あいつが……」
「ん~? まだそれを言うかい? 簡単だよ。ボスの消滅に紛れてカルマ君が《隠密》で隠れただけ。大体さ、今のお膳立てをしたのは誰かってのを考えないのかなぁ。あの二人でしょ? それなのにろくすっぽ警戒もしないでのこのこ出て来て……。馬鹿は死ななきゃ治らないのかな?」
「ま、待ってくれ! 俺を殺すのか!? 仲間だろう!?」
「仲間!? 仲間って……あはは、いいねぇ、その恥知らずっぷり!! サイッコウだよ!! そうだよ、仲間は敬い大切にするべきだ。でもね、残念だけど君はもう仲間じゃないんだ。皆はカルマ君に気づいてた。でもなんで君に教えてあげなったか分かる?」
今までの、ギルドでの行いを振り返りどんな思いを抱かれてきたかを想像し、女に縋る。
「頼む……心を入れ替えるから……」
「う~んわたしとしては、助けてあげようかと思ったりしないでもないかなぁ」
「じゃ、じゃあ……」
淡い期待を込めて女に震える手を伸ばす。が、それは軽く払われた。
「でもダ~メ。君は仲間に見捨てられたんだよ。死んで欲しいと思われたんだ。それに、いっぱいヒントをあげたのに、全部ふいにしちゃったのはいただけない。普段から《索敵》も使わないで行動するバチが当たったんだよ」
「う……うう……」
とうとう縋る藁も沈み、ランボスは崩れ落ちるように膝を着く。
「おっとと、まだ死んじゃ駄目だよ。しっかり立ってなきゃ」
女はそれを許さず、力無い腕を掴んで無理やりに立たせる。
「え~、罪状。同じギルドの仲間との不和。度重なる独断専行。命令不服従。ギルドマスターであるわたしへの反逆及び殺害の未遂。あ、それと殺人三件」
どうでもよさそうに最後に一般プレイヤーの殺害の罪を加える。
「判決」
その光景はカルマからは、ランボスの背中から規則的に並んだ五本のナイフの刃が生えたように見えた。
「あ……あ、あ……」
「死刑」
厚い装甲を紙細工のように貫通した五本の刃がずるりと抜ける。唯一の支えを無くしたランボスの体は、糸の切れた操り人形のように五体を投げ出して落ちた。
「やっぱりドクはいい武器をつくるねぇ……」
血に濡れた手を舐めてしみじみと呟く。
「ぼん君、心配はいらないよ。君の血肉は糧となってわたしを強くする。決して犬死じゃない……って、死んでるね。誰かコレの装備品は欲しい人いるかい!?」
ランボスをコレと呼び、仲間に声をかけるが返答は無い。
「それじゃ、ばいばーい」
もう動くことの無いランボスを火口の溶岩に蹴り落とす。
「さてと。どうしようかな」
「失せろ」
即座にカルマが言い捨てる。
「酷い言い草だねぇ。二人してわたしを守ってくれたのにさ。それにわたし達はみんなの為にプレイヤーキルしてるってのに」
「お前の為にやったんじゃない。後ろの連中の統率が乱れて弔い合戦をやられても迷惑だっただけだ」
「それでもいいさ。楽しかったしね、天城君。真剣勝負って素晴らしいよね」
「まぁな」
天城が知る《アローン・リーパー》のイカサマ法はひどく不確かな方法だった。効率を求める目的でも実用レベルに至らない、無いよりマシといった程度の標。
だが、女への《アローン・リーパー》にのみ、それすら使わぬイカサマ無しの戦いだった。
保険としてカルマにサポートを頼み、死ぬならそれもまた良しと思って使った結果、狙い通りに四回目まで弾は出なかった。
「なかなかしぶとい奴だ」
「悪運強いことには自信があってね」
「続きはまた今度だな」
「そうだね。わたしたちは退散するよ。そろそろカルマ君の視線に殺されちゃいそうだからね」
手を上げて撤退のサインを出す。方々から不満の声が上がるがそれに笑って女は謝る。
「え~もう終わりですか~?」
「まだ俺らなにもしてないじゃーん……」
「ごめんごめん、帰りに攻略組をみんなで狩りにいくからさ。あの二人は今回は見送りってことで」
「ならいいけど」
「結果的に団長を助けてもらった訳だしな……」
不満を言っていた者達も魅力的な代替案に気移りし、各自のペースで帰途につく。女もそれに早歩きで合流した。
「あ、そうだ」
返した踵を再び返し、体をカルマに向けて女はコートを脱いだ。
「お前……」
血の赤に彩られた、軽い造りの革の鎧。ベルトで布地の遊びを締めてある暗い紺のカーゴにこれまた赤い前垂れがかけてある。もっとも、鎧の胸部は天城の手で破壊され、肌色が露出している。
「長い付き合いになりそうだし、名前ぐらい言っておくよ。わたしは『紅龍』。『ハーヴェスト』っていうプレイヤーキラーギルドのギルドマスターをやってるんだ。て言っても、そんなシステム無いから適当に集まってそう名乗ってるだけの集まりだけどね」
以後お見知りおきを、と一礼してコートを羽織り直すと緋色の髪をフードで隠して紅龍は去っていった。
「妙なのに気に入られたな……」
「困りましたね」
後にカルマの運命に大きな影響を与える邂逅はこうして幕を閉じた。
キチガ〇系のキャラは書いてて可愛いです。
若干のネタバレですがホンロンちゃんは最後まで暴走特急で突っ走ります。
終盤に近くなるとどんどんエグい話になりそうで運営さんに警告されないか不安です。
ご意見ご感想お待ちしてます。




