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2話 狂い

「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」


 突然大声をあげる進。その声にクラス全員が進を見る。


「どうしたんですか? 進君」

「あれ? 先生…。 今、刺されたんじゃ…」

「刺された? 何を言っているのですか?」


 ―――今の、なんだったんだ?


「進、お前立ちながら寝てたんじゃねぇのか?」


 混乱している進に周は話し掛ける。


 ―――今のが…夢? けど、妙にハッキリしてたけど……。


 進は手で頭を抑えながら席に戻り、机に突っ伏した。


「大丈夫? 進、疲れてるんじゃない?」


 楓が心配そうに進むに話し掛ける。だが、距離を置いているようにも見えた。


「そうかもな…」


         キーン コーン カーン コーン♪


 授業終了のチャイムが学校に響き渡る。進以外の生徒は皆、足早に教室を去り剣道場に向かう。


「お兄ちゃん……? 具合悪いの?保健室行く?」


 燕奈は剣道場には向かっておらず進を心配していた。


「いや、次体育だろ? 続けるさ」

「無理すんなよ? お前が休むとテキストが進まねぇからな」

「そうそう♪」

「あのな…」


 仲間たちの心配をよそに進は元気を取り戻していた。そして、周・楓・燕奈・進の4人は剣道場を目指す。




「ねぇ」

「ん? なんだ?」

「今日はさ、竹刀じゃなくて木刀でやってみない?」


 剣道場について楓はとんでもない事を口走った。木刀は剣道場に2本あるが、それは学校の御神木を切って作ったものなのだ。


「俺はいいけど、先生が許してくれるか?」

「構いませんよ? 刀は使って何ぼでしょう?」


 いつの間にか先生は後ろに立っていた。そして、あっさり木刀の使用を許可したのだ。


「やたっ♪」

「けど、防具はどうすんだ? 防具一つもないぞ?」

「防具なんて無しでしょ? 防具なんてあったら安心するでしょう?」


 楓に違和感があった。それは、いつもの彼女は微塵も感じさせない雰囲気だ。


 ―――楓? なんか変だな……。くそ! さっきの楓と少し重なる。


「じゃ、行くよ? 怪我しても恨まないでね♪」

「ちょっと待て…! 俺の木刀は?」


 そんなことはお構いなしに楓は袈裟切りを仕掛けてくる。進は紙一重でそれを避け壁に掛けてある木刀を取り自然体になる。


「宮崎流 一文字切り 廻りの(いちもんじぎり まわりのかた)……」


 楓は横に木刀を薙いでくる。進はまたしても紙一重で避けるが彼女は体を回転させ再び木刀を薙ぐ。しかも、体ごと回転しているため遠心力が加わり速さ、力が強くなっていた。


「ぐっ!!」


 二撃目は避けきれず木刀でなんとか受ける。しかし、勢いは止まらず進は体ごと吹き飛ぶ。


「まだまだ行くよ!! 宮崎流 龍の太刀(りゅうのたち)!!!」


 彼女は木刀を下から切り上げ、体ごと上に跳び攻撃を繋げるように木刀を振り下ろしてくる。進は体を回転させ剣撃を避け、木刀の柄で楓の背中を強打する。


「なかなかやるね!! けどまだまだだよ!!!」


 ―――おかしい…。痛みを感じていない? 仕方ない……。骨を折って楓を止める。


 進の決断は冷酷なものだった。しかし、そうでもしなければ彼女を止めることはできないだろう。


「(神薙流) 一の太刀 逆薙(さかなぎ) 逆一文字(いちもんじ)……」


 彼は木刀を逆手に持ち楓の攻撃を待つ。この攻撃はカウンター主体なのだろう。


「そんなことをしても無駄だよ!!」


 楓は何も知らずに木刀を振り上げ走ってくる。


「悪いな……楓」


             ヒュン・・・        メキ・・・


 空気を切る音が聞こえ次に聞こえたのは鈍い重低音。


「なんで……」


 楓の腕はありえない方向へ曲がっていた。観戦していた生徒のほとんどはただ見ているだけだった。


「すこし眠れ…。 楓」


 彼女は床に倒れた。


 ―――お前はもう【戻れない】のか…。いや、戻れないのは俺か……。

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