4話 絶望
昨日から試験が始まったので更新が遅れます。申し訳ありません
「!! ここって、俺の部屋……? 痛…」
いつの間にか進は自分の部屋のベッドに横たわっていた。そして、腹には包帯が巻かれていた。
「気づきましたか?」
声をかけてきたのは進の母、神薙 恵だ。
「母上…。 もしや、母上が私をここまで?」
「ええ。 治療を施した後に運びました」
ーーーそんな細腕でどうやって?
進は感謝よりも疑問が浮かんだ。
「【符】の力が無ければ私はあなたをそこに置いたままでしたよ」
符という単語を聞き進は納得した。確かに符があれば、彼をここまで運ぶことは可能だ。
「母上は、符は何をお持ちで?」
「私が持っているのは【強】だけですよ」
彼女が言った【強】とは簡潔に言えば強化のこと。足に貼れば足が。腕に貼れば腕が強化される物。つまり恵は、両腕に貼り進を運んだのだ。
「今日はもう寝なさい。 体を休めるのです」
進は彼女の声に従い、静かに目を瞑った。
「おやすみ……。 進」
「ん……。 中途半端な時間に起きちまった……」
彼が起きたのは午前3時だった。
「そりゃ5時に寝たらこうなるわな…」
進は軽く嘆き部屋の外にでた。もちろん家の人は全員寝ている……はずだった。
(ーーーだ)
(ーーかー)
ーーー今の声、父上と母上か?
進は微弱な声を聞き、怪しいと思い1階へ降りていく。音をたてずに……。
「ーーいうことーーー」
ーーー聞こえねぇ。もう少し近づいてみよう。
細心の注意を払い進は話し声のする部屋へ近づく。
「わかったか? あくまで内密にだ。 奴には知られてはならん」
「……わかったわ」
ーーー何の話をしてるんだ?
「鬼はおそらく進を選ぶだろう。 しかし、奴には扱えず【不現者】になるだろう……」
「【覚醒者】にはなれないのですね……。 何故ですか?」
「しいて言うなれば【決意】」
ーーー決意。何の決意だ?
不可思議な会話を進はただ聞いている。ーーー自分に関係している。
「いいか。忘れるな。儂が子を作るのは【一族の衰退を防ぐ】ためでも【一族の繁栄】でもない。ただ【純血の鬼を作る】ためだ」
その言葉を聞き進は絶望した。厳しくても目標だった父。いつも優しく接してくれた母。そのどちらもが偽りだった。ただ純血の鬼を作るため、そしてその鬼を管理するためだったなんて。
「燕奈は女だ。子を作れるから殺しはしない」
「……では進は?」
その時、外で鳴いていた虫の鳴き声も無くなった感じがした。そして、猛の口から出た言葉は…あまりにも残酷だった。
「もし鬼を継いでいなければ……【殺す】」
この時から、進の運命の歯車は少しずつ、しかし確実に狂い始めていた……。
第1章 完