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3話 稽古

「ーーーん。ーーちゃん。お兄ちゃん!」


 妹の声を聞き進は驚いたように燕奈の方を見る。


「どうした!?」

「家に着いたよ?」


 燕奈に言われ家を見る進。彼らの家は家とは呼べず【屋敷】と呼んだほうがふさわしいだろう。


「そっか…。 ありがとう」

「なんでお礼を言うの?」

「いや…。 ゴメン……」



 進は何時になく考え事をしていた。それは先刻の出来事のこと。何故燕奈がおかしくなったのか、何故自分が開けることができなかった【開かずの間】に燕奈は入れたのか……。


「【兄様】!しっかりして下さい!」


 高く響く声が進の耳に入り脳内に響きわたる。


「悪い。 疲れてるみたいだ…」

「本当に大丈夫ですか?兄様」

「あぁ。大丈夫。家に入ろう」


 二人は屋敷に入っていく。この屋敷は古いことわりに従っているらしい。そのため何故か言葉遣いも決められている。兄は兄様。父は父上。母は母上と。


「ただ今帰りました」


 進はこの家は嫌いだった。古い理に従うだけの家が。しかし決してそういうことは表に出さず進は自分の部屋に向かい歩く。


「今日は散々だったな。楓と喧嘩して試合して、挙げ句の果てに開かずの間に入っちまうとは」


 独り言を言いながらベッドに横になっていると廊下から足音が聞こえた。


「進。帰ってきたのか……」

「はい」

「では、稽古だ。急いで支度をしろ」

「……はい」


 部屋に入ってきたのは進の父・神薙しんなぎ たけるだ。それと、進と燕奈は普段学校では【金木】(かなぎ)と名乗っているが本来の名字は【神薙】だ。


 進は父がいなくなるのを確認した後、服を着替え道場に向かった。




 道場では猛が竹刀を持ち仁王立ちしている。進は彼が放つ闘気に気圧されながらも前に進み落ちてある竹刀を取った。


「始めるぞ…。構えろ」


 そう言い猛は体の正面に竹刀を構える。しかし、進は腕を下ろし自然体のままだ。


「何故構えぬ?」


 猛は不思議な者でも見るような目で実の息子を見る。


「俺は……

「理を忘れたか」

「私は…自由に生きたいのです」

「ならば100年の歴史を潰してもいいのか……」


 怒りを押し殺しあくまで冷静に話す猛。しかし、そんなことは構わず進は話を続ける。


「歴史は大切ですが、それは【私】ではなく【昔の誰か】……。この家には【俺】が居ないのです。【心】がなく、【動くだけの人形】にはなりたくないのです!」


         ヒュン…………


 空気を切る音が聞こえ進の腹に竹刀が当たる。彼は父の突然の行動に驚く。そして、次の瞬間彼は壁に叩きつけられた。


「ならば、儂を倒してみよ!そうすれば今までの戯れ言は取り消してやろう」

「戯れ言などではありません。私は自由に生きたいだけだ」


          ドスッ……


 鈍い音が響いた。


「いい加減にしろ…。お前は一族を消すつもりなのか」


 猛は竹刀を進の腹に刺している。彼の持っている竹刀の柄を見るとなにやら札が貼られている。そして、竹刀を腹から抜き、竹刀を捨てて父は道場を去った。


              ドシャ……


 血溜まりの床に進は力なく倒れ意識を失った。

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