第6章 1話 フタタビ
二ヶ月近くの小説投稿停止を御詫び申し上げます。
話がまったく浮かばないという作者的には未曾有の危機になっております。未だに話は浮かびませんが見守ってやってください。
進が鬼を取り入れてから一週間がたった。
「学校にでも行くかな…」
そんなことをポツリと言い、進は学校へ行く準備をする。彼は鬼を取り入れたことで生き返り、それと同時に【死ねなく】なった。進の左目は血を思わせるような色に変わり鬼の目になっていた。
「燕奈もいないし、見送る人は俺が殺したようなものだし…。……いってきます」
進は誰もいない玄関に挨拶をして家を出た。
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−−−刀は持ってくる必要はないよな…。
人通りのない歩道を歩き学校を目指す進。しかし、彼は突然歩くのを止めた。
−−−殺気だ。今の俺は死なないから関係ないのに…、体が反応しちまう。無視だ…。
一つの答を導き出した進はまた歩き始める。しかし、その行動は間違っていた。彼の背中に浴びせられていた殺気の数はおよそ10数個。この殺気がのちに狂気へと変わるとも知れずに…。
―――――――――――
「!!!」
「進さん…」
教室に入って聞いた第一声は驚きの声だった。当たり前だろう。進は相当な日数学校を休んでいた。休んでいた日は血腥い日が続いていたが…。
「おはよ」
軽く手を上げ挨拶をした後に進は自分の席に向かった。しかし、1人の生徒がそれを止めた。
「進さん。席替えしたんで進さんは窓側の一番後ろですよ」
「そうか。ありがと」
進は感謝の気持ちなどどこにもない感謝をした後、新しい自分の席についた。
−−−周、遅いな…。無理もないか。あいつは…いやあいつ【も】家族を無くしたんだ。
机に突っ伏しながら考え事をしていた進。そんな時、燕奈の友人の花が進の腕を引っ張った。
「ん? 花ちゃんか? どうした?」
「えんなちゃんは?」
「っ!! 燕奈は…か、風邪引いたんだ! だから、今日は休みなんだ」
一瞬、声を詰まらせたが進はいつもと変わらない口調で話す。しかし、花はそれを信じていないのか真偽を確かめようとする。
「ほんとうに?」
「あぁ。ほんと―――」
「よう! 進!!」
今までの会話を掻き消すように周が登校してきた。
「周…」
「すすむさん? えんなちゃんの風邪ってほんと?」
「本当だよ。花ちゃん。こいつの妹の燕奈ちゃんは今寝てるんだ」
周はまるで最初からの会話の内容を聞いていたかに話し出す。進は助かったと思っていた。次に周の口から出た言葉を聞くまでは。
「静かに寝てるんだってさ。【絶対に起きない眠りに】…ね」
その言葉は進の記憶からある映像を呼び起こした。燕奈の身体が赤黒くなるまでに刀で斬り、最後には自分が殺したと告げられずに苦しんだ自分の姿を。
「どういうこと…?」
「簡単だよ花ちゃん。つまり、燕奈ちゃんは―――」
−−−やめろ…言うな…いわないでくれ!!!
進は只願うしかなかった。止めに入ろうと思えば入れただろう。しかし、記憶の映像が脳を占拠し体が動かなかったのだ。
「進が殺したんだから!!」
周はわざと教室中に聞こえるほどの声量で話した。もちろん、教室にいた生徒の全員は進を見た。
「そうだろ? 殺人鬼!! いや、食人鬼。それとも狂鬼か!?」
周はまるで何かを咎めるように進に問いただす。しかし、進はそれを全て聞き流し教室を出た。
「今更何を言われても動じないつもりだったんだけどな…。さすがにキツイ…」
進はいつの間にか【元・開かずの間】に来ていた。思えば、ここから運命が変わったのかもしれない。
燕奈の豹変
白狼との戦闘
両親の死
妹の死
−−−もし、燕奈が学校探検なんかしなきゃ、こんな変なことにはならなかったかも知れない。
ふと、そんな考えが進の脳裏をよぎった。その刹那、周が進の右肩をつかんだ。ここまで追ってきたのだろう。
「よ。【忌まわしき業の塊】」
「周か…なんだ?」
「次の1時間目は自習だってよ。暇だから剣道場行こうぜ」
進は少し考えた。周は砕けた性格だったが、授業中、いや自習中に教室を飛び出すようなことは絶対にしない男だったからだ。
「わかった」
進はあっさりと行くと言った。
「なら今から行こうぜ」
「わかった。先に行っててくれ後から行くよ」
進の返答に納得したのか、周は剣道場に駆けていった。
「行ってくるよ…」
誰もいない開かずの間に話し掛けた進は剣道場に向かった。
―――――――――――
「首尾はいかがですか?」
暗い空間。周りを見渡すとそこは洞窟、いや、儀式でもするような雰囲気すら感じさせる場所に少女は立っていた。その少女に話し掛けている声の主は闇にとけこんでいて姿を確認できない。
「悪くはないわ…傷跡以外はね」
「しかたありません。それは【業】がつけた傷ですので消すのは不可能かと…」
「わかっている。でも、私がまだ生きていたとはね…自分でも驚きだわ」
「いえ…生きているというわけではありません…」
蝋燭の明かりを見つづけていた少女は顔だけを振り返らせ闇を見る。
「どういうことなの?」
「は…。【生きている】のではなく【死んでいない】だけで御座います」
「同じじゃない」
少女はフン。と鼻で笑い明かりに視線をやる。
「同じではございません。あなたは―――」
ザシュ…
闇からの声は聞こえなくなった…。
「同じよ。私は【生きている】わ…力だってあるもの」
−−−いつか、殺してあげるわ。私にこんな傷を負わせた奴!! 【鬼】…神薙 進!!
少女は蝋燭の灯を握りつぶした。