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第5章 1話 鬼と対峙した【人間】

 人間になりたかった 限りある生を生きたい


 人間になれた だけど 声が出ない


 鬼に戻りたくなった 償いのために生きつづけよう




 何もない白い空間。そこに進は立っていた。


「ここどこだ?」


 何のあてもなく彼はただ歩いていた。だいぶ歩いた先には見覚えのある姿があった。


「父上? 母上と…燕奈?」


 三人は俯きながら何かを話しているように見える。進は俯いている三人の目線が合わさる所に視線を向けた。そこにあったものに進は目を見開いた。


「あれって、俺……か?」


 急いで三人の下に駆け寄ろうとする進。しかし、足が動かなかった。それは影から手が生え、自分の足をつかんでいたから。


「離せ!!」


 何かを払うように地面と水平に腕を振った。すると、影の手は切り刻まれ黒い球体が三つ中空に現れた。その球体は話をしていた三人目掛けて飛び掛り取り憑いた。


「……!!!!」


 声を出そうとした進だが声が出なかった。それどころが体全体に違和感があった。まるで水に潜っているような感覚。


 −−−なんだ!? 声が出ない!! それに体が重い…!


 取り憑かれた三人は倒れ、動くことはなかった。そして、倒れると同時に横たわっていた進らしき人間が立ち上がった。


 −−−違う…。あれは俺じゃない!


 進はあれが立ち上がってから気づいた。両手には鋭い爪。右の頬にはそれで引っ掻かれたような三本の傷痕。そして、左目は赤色だったのだ。


「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」


 狂ったように笑い出す【それ】の声は低く大声で叫べば体全体に響き渡りそうな声だ。そして【それ】は進を見て口を開いた。


「我が苗床…いや宿主よ。お主が望んでやまない【人】になれるぞ…」

「……(どういう意味だ!!)」


 進は喋れないものの口を開き口だけを動かす。


「我がおぬしの中より消え去ればお主は【鬼】ではなく【人】になれるのだ。無論、消える代価は払ってもらうがな」

「……(代価? 俺は何を代価として差し出すんだ?)」

「もうわかっておるだろう…【声と身体】だ」


 【声と身体】。進にはその意味が体で理解(わか)っていた。今、自分が感じている異変。無声と筋力低下、それは鬼を体から除去するための対価だったのだ。


「(声と身体。それがお前を身体から取り除くための対価か…。お前は俺の身体から消えたらどこにいるんだ?)」

「どこにいるのか?だと? 我は鬼なのだぞ? 鬼のすべき事はただ一つ…【血】を求めるのみ」


 鬼が血を求めるのは本能、それは進自体がよくわかっているはずなのだがなぜそのようなことを聞いたのか?


「もう夢の時間は終わりだ…。次に会う時、それはお主が我を求めるときだろう。常夜の闇にて待っている…」

「(ま!!)―――」


 彼が待てと言い終えるのを待たずその世界は崩れ落ちた…。

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