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4話 赤の瞳と黒の翼

「なにもありませんね」

「うむ。しかし油断はするな」


 進は軽く溜め息をつき父の後ろを歩いている。二人がだいぶ歩くと広い空間が目に入った。そこは、なにかの儀式でもするような空間だった。周りの壁には灯がともっており真ん中には階段。そして、そこを登りきったところに見えるのは大きな羽を広げた鳥の像。二人はその像を見上げている。


「これは…(からす)?」

「そのようだな。そうすれば、ここは【()族】の洞窟か?」

「【烏族】とはなんですか? 父上」


 聞きなれない言葉に戸惑う進。しかし、問いの返答が返ってくることはなかった。それは、なにかの衝撃で二人は左右に吹き飛ばされたからであった。


「な!!」

「くそっ!!」


 ―――刀を…!! しまった! 進に預けていたままだ。


 猛は飛んでいる体を回転させ壁に足をつけ衝撃を緩和した後に着地した。

 一方、進は背中から壁に当たり衝撃を直に喰らいなんとか着地した。しかし、ダメージは残っているため足取りがおぼつかない。


「死ななかったか…。無駄に丈夫な体じゃの」

「!?」


 進は像を見上げた。そこには、背中から黒い翼を広げた母の姿があった。


「……母上?」

「母……か。なんとも嫌な言葉よ」

「恵…。貴様、烏族だったのか…?」

「見てわからぬか? なんとも愚かな…」


 状況を理解できない進だが、猛は理解していた。恵はもともと烏族の人間だったのだ。それを隠し通し神薙家の嫁になった。ということだろう。


「貴様…許さん!!!」


 猛は怒りをあらわにして恵に突っ込む。その眼はもう周りなど見えていなかった。


「ふん。見苦しい…。朽ち果てよ!!」


 恵はそう言うと翼を羽ばたかせ突風を巻き起こす。猛は当然防ぎようがなく後ろへと吹き飛ばされた。そして、恵はその風に乗っているかのような動きで猛との間合いを詰める。


「終わりじゃ…。我が愛した夫よ……」


 彼女はどこからか刀を取り出し猛の心の臓を一突きした。彼の胸からは赤い血が流れ、そして彼は両膝を折り力なく倒れた…。


「父上!!!」


 なんとか体が動くようになった進は急いで猛のもとに向かった。そして、猛の体を起こし必死に叫んだ。


「進か…? よく聞け…」

「もう喋らないで下さい!!」

「お前の中に…ある【鬼の力】は3割程度なのだ…。後の7割はわしが…封印している。自分の命が朽ちるまで…な」


 猛が何を言っているのか進にはわかっていなかった。そして、猛は自分の上着を脱いだ。


「それ…は?」

「これが…封印の術式だ。自分の体に力を入れることで…その力を自分の物にで…きる。だが、わしは【鬼の力】を使…うことができなかっ…ゲホッ!!」


 彼の咳には血が混じっている。もうこの世にいられる時間は少ないだろう…。


「そして、わしが死ぬことで【力】はお前に戻る。そして、鬼を使う際は…」


 進はただ聞くことしかできなかった。父の【最後の言葉】を。


「【望む】ことだ…」


 その言葉を最後に神薙 猛はこの世を去った。進は彼を横にして、静かに寝かせた。


「ふ…馬鹿な男だ。このような息子に何を託したというのだ?」


 恵は高笑いをしている。しかし、その笑いはすぐに消えた。


「お主、その目は…!!」


 彼女は進の目を見て驚いている。彼の双眸は赤く、まるで血のように無気味に光っている。


「俺はあんたを殺す…。力を貸せ【鬼】…」


 驚いたことに彼は目が赤くなっていても、意識が消えていなかった。


「【覚醒者】…」


 恵は翼を広げ上空に飛び上がった。進はただそれを見ているだけではなく、腰にある刀に手を掛けた。


「神薙流剣術 参の太刀 三爪痕(さんそうこん)…」


 彼は刀を振り上げ、遠くにいる恵目掛けて刀を振り下ろした。振り下ろした刀の剣先からは三つの衝撃が出て、恵を襲った。


「なに!? きゃあぁぁァァァァ!!!」


 彼女は悲鳴を上げそのまま地に落ちた。落ちた瞬間、彼女は潰れ血をばら撒いた。

 血の惨劇の場に立っているのはただ一人の鬼だけだった。 

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