5話 鬼の力
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「ふぅ〜……」
進…いや鬼は息を吐き、楓に視点を合わせる。
ーーー来る!!
彼女は攻撃を予測し、白狼に変化する。そして、前を見直すがそこには鬼はいなく、彼女の後ろで右足を振り上げていた。
ーーー速い…!
なんとか前に跳び、避ける楓。そして、鬼がいた方向を振り向くが姿は見えない。鬼はまたしても彼女の後ろにいた。そして、空中にいたため楓は鬼が放った蹴りを避けれず真横に飛んだ。
「くっ…」
なんとか着地した楓は鬼を見る。今度は鬼は移動しておらずそこに立っていた。そして、鬼は信じられないことを口にした。
「まぁ、【2割】の力だな…」
「に…2割!?」
「まさか、あれが本気だと思ったか? 笑えぬ冗談はよせ…。 次は5割だ」
そう言った直後、楓の体が後ろへと飛んだ。そして、飛んでいる彼女の体は前へと跳ねた。彼女はまるで小さい部屋で力いっぱい投げつけたスーパーボールのように体が跳ねている。前へ、後ろへ、横へ、上へ。
「ぐっ! ガッ!!」
鬼はその場から動いていない。いや、実際は動いているのだろう。ただし、有り得ない速さで楓を殴り飛ばしまた同じ場所へ戻る。という行動を繰り返しているのだろう。
鬼の暴虐が終わる頃には白狼の毛は赤く染めあがっていた。
「ゲホッ!!」
ーーーまだ…まだだ。私は…力を……。
楓はいつの間にか人間に戻っていた。どうやら、肉体や精神に危険が生じた場合は強制的に変化が解けるらしい。
鬼はにやりと笑い彼女に近づく。もはや、誰が見ても勝負はついていた。
「血をくれよ」
「おま…えに、や…る血は…ゲホッ!…一滴もない」
「そうか。じゃあ、【飴玉】をもらうぞ」
そう言うと鬼は楓の右目に指を伸ばす。どうやら鬼にとっての【飴玉】とは【眼球】のことらしい。
指が眼に触れる直前、鬼の頭に野球ボールが当たる。それを投げたのは周だった。
「進…。 もうやめろ」
周の言葉に鬼は蛇のような赤い眼を見開いた。
「残念だな。 ここに進という人間はいない。 いるのは……鬼だ!!!」
言い終わるのとほぼ同時に鬼は周めがけて手を前に突き出す。そして、彼は腹に衝撃を喰らい後ろへと吹き飛んだ。
「くだらん…」
そう言うと、鬼は校庭のほぼ真ん中に立ち拳を振り上げた。
「この後の光景を見ていろ…。 これが、鬼の力だ」
そう言い放ち鬼は地面に拳をぶつける。すると、殴られた地面は鳴り響き巨大な(約40m)クレーターが瞬時にできた。
「限界か……」
「ん…」
浅い気絶をしていた周は目を覚ました。そして、目に入ってきた光景に目を丸くした。
「嘘だろ…」
彼が見た光景は、校庭がまるで爆弾でも爆発したのかと思わせるほど巨大なクレーターだった。彼はクレーターに近寄り、中心部をのぞき込む。
すると、中心には仰向けの状態で進が倒れていたのだ。彼は意識がなく危険な状態に見えた周は急いでクレーターの中心部を目指す。
「たく…」
軽くぼやきながら進を背負い、クレーターを上っていく。
そして、校庭に横たわっている楓も背負い保険室を目指した。