表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
教皇外交録/聖十字と悪魔の盟約  作者: 木山碧人
第十章 マルタ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

90/145

第90話 逆行

挿絵(By みてみん)





 先日行われた砦強襲の顛末は全部聞いた。一名の修道士が死亡し、手打ちの条件としてラウロの旦那が殺された。結果だけ見れば、痛み分けという形になる。あれだけの戦闘が繰り広げられれば、誰も死なずに終わる方がおかしい。だから、理解はできる。仕方ないと割り切って、いつも通りの仕事を果たすことが職務の一環として求められる。それが『道を修める』ってもんだ。人の生き死にで気を揉んでちゃ、仕事にならねぇ。極悪人が投獄される砦に配属された時点で、こうなることはある程度予想できた。身内が死ぬことも頭の片隅には入れていたはずだ。……だが、ああなるとは思いもしなかった。あんな出来事は、もう二度と繰り返してはならねぇ。能力をコントロールできないことなんざ、言い訳にならねぇ。


 ――だから!


「俺が先陣を切る!! あんたらはサポートを頼む!!!」


 砦南東廊下に声を響かせ、小振りのメイスを握り込み、駆ける。


 目の前には巨大な蛾。チョモスという名称がついたバケモンがいる。


 殴りで倒せるかは不明だが、光化学スモッグに対応できるのは俺だけだ。


「――通常の方法じゃ、たぶん……」


「いや、まずは試そう。後方支援は僕らに任せて!」


 否定と肯定が入り混じるが、方向性は一致する。


 これ以上の意思疎通は不要。背中は任せていいはずだ。


『――――』


 一歩ずつ着実に距離を詰める中、敵に動きがあった。


 チョモスは視線を俺に定め、再び翅から鱗粉を飛ばした。


(相も変わらずスモッグか? いや、あれは……)


 俺は扱う能力の性質上、光の性質変化には敏感だ。


 特に紫外線、可視光線、赤外線は絶対に見分けられる。


 さっきは紫外線の特徴である青紫色だったが、今回は違う。


 赤い霧状の光。知ってか知らずか、俺の専門分野と同じだった。


「悪いがそいつは特許申請済みだ! 異議申し立ては弁護士を通せ!」


 太陽光の届かない場所で、俺の身体とメイスは赤外線化した。


 日に当たるのが条件だったが、首都が狂った今は関係ないらしい。


 なんにせよ、これで敵の赤外線攻撃は躱せる。懐に近付くのは楽勝だ。


「……っ」


 しかし、異変があった。俺の身体とメイスは元の状態に戻った。


 仕組みは分からんが、結果としてそうなった。俺は今、裸も同然だ。


「――問題なし」


「任せてって言ったよね!!」


 背後から頼もしい声が響き、生じるのは守りと攻め。


 緋色の結界が俺の周囲を覆い、意思弾がチョモスを襲う。


 おかげで敵の赤外線で焼け死ぬことはなく、難を逃れていた。


「助かった! だが、こっからはどうする! 俺の能力は効かんぞ!」


 意思弾で周囲に土煙が舞う中、俺は判断を仰いだ。


 体を張るのは得意だが、自分で作戦を考えるのは苦手だ。


 能力だけでどうにかなると思ったが、見通しが甘かったらしい。


「――決まってる」


「アレは最後に取っておこう!」


 その言葉と共に、目の前には平面状の緋色の結界が展開。


 それが何重にも連なり、チョモスとの間に物理的な壁を作る。


 意図は完全に理解した。奴との遭遇は時期尚早だったってわけだ。


「覚えてろよ、害虫! お前を倒すために、一から積み上げてやる!!」


 中指を突き立て、結界から解放された俺は敵に背を向ける。


 砦東に向かうルートは遮断され、俺たちは迂回を余儀なくされた。


 ◇◇◇

 

 バグの起源は蛾だ。その意味と状況を考えれば、チョモスは砦のラスボスだと私は判断した。初エンカウントがラスボスなんてクソゲー過ぎるけど、バグった世界なら妥当だと言える。ただ、異常攻略を好む私にとっては見慣れた景色だったけど、通常攻略を好む人にとっては受け入れにくい結果だったらしい。


「最初の敵がラスボスって展開は熱いけど、蛾ってのはなんだかなぁ……」


 隣を歩くアルカナも例外ではなく、首を傾げて疑問を呈していた。


 さっきは急ぎだったから納得したけど、一息ついて引っかかったっぽい。


「――『悟空伝3』のカセットを斜めに挿した状態で起動させたことある?」

 

「うーんないかな。暗黒魔城のコンガが強すぎて、詰んだ覚えしかない」


「――分かるぅ……じゃなくて、その方法で起動するとエンディングに行く」


「へぇ……。それはそれで味気ない気もするけど、今と何の関係があるの?」


「――恐らく、バグのせいでエンディングから始まって、ラスボスが先に来た」


 私は必要最低限の言葉で、バグの経験則をもとに結論に導く。


 合っているかどうかはさておいて、一応の筋は通したつもりだった。


「ようするに、未来が逆行したってわけか。今の状況ならあり得るな」


 納得を示したのは、ソラルと名乗った修道士だった。


 堅物そうな性格に見えたけど、意外と物分かりはいいらしい。


「…………」


 一方のアルカナは視線を落とし、考え込んでる様子。


 受け入れられないという感情が手に取るように分かった。

 

 まぁ、ここに関しては諸説あるし、意見の一致は求めてない。


 彼が何を考えているにせよ、私たちのやるべきことは一つだった。


「――ひとまず今は、仕様把握と仲間集めだね。――方針はそれでいい?」


「……うん」


「承知した。道案内は俺に任せてくれ!」


 歯切れ悪い返事と、歯切れのいい返事が同時に響く。


 私たちは道端のキノコを採取しつつ、砦南方面に進んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ