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教皇外交録/聖十字と悪魔の盟約  作者: 木山碧人
第十章 マルタ

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第56話 人生万歳

挿絵(By みてみん)





 声と弓が踊る。各々が信じる音を奏でる。

 

 型に縛られない即興的な韻と旋律が衝突する。


 期せずして出会った異なる趣が対立を引き起こす。


「「――――」」


 あらゆる声や音には、固有の周波数が存在している。


 全く同じ周波数をぶつければ、音は増幅されるのが基本。


 音圧が加算されて、協奏曲のような重みのある響きに繋がる。


 リディアの技量であれば、韻と同じ周波数を合わせることは可能。


 ビリーの声を引き立て、聴衆が聞くに足る音色にするのは容易だった。

 

 ――しかし、二人が奏でる音色は『無音』。


 音が増幅し合うことはなく、打ち消し合っている。


 同じ周波数を奏でながらも、逆位相の波形が衝突する。


 二人は互いの音を認識しているものの、第三者に届かない。


 ノイズキャンセリング機能のイヤホンと同じ原理で音楽を殺す。


 ビリーが原因ではなく、周波数が見えるリディア側に問題があった。


 ――彼女は弓で音を切る。


 バイオリンを奏でることなく、相手の音楽を否定する。


 逆位相の音色が半自動的に奏でられ、引けを取ることはない。


 ビリーの能力が韻を聴いた者を標的とするなら、極めて有効な対策。


 ――ただし、それが最適解とは限らない。


「見ざる言わざる聞かざる。臭いものには蓋をする。異なる生き様を否定する。見え透いたのはお前の腐った根性。狭い度量。歪んだ感情。それを否定する俺も同胞? 凡庸? 釈迦に説法? んなわけあるかい、お前は悪逆非道!!」


 刺激したのは、ビリーの敵愾心と反骨精神。


 彼の音楽魂ソウルに通じる不平不満が喉奥から溢れ出す。


 皮肉にもリディアの所業は、彼のセンスを最大化させる。


 ――『人生万歳ビバ・ラ・ビダ


 韻を踏み、否定されることで発動するカウンター型の意思能力。


 相手に依存し、常用不能のリスクを抱えるが、条件を満たせば強い。

 

 平常時では系統や出力的に厳しい大技であろうとも、実現を可能とする。


「…………っっ」


 リディアは目を見開き、息を呑んだ。


 現れたのは、彼と心が通うアーティスト集団。


 暴力に甘んじることはなく、非暴力に全てを割り振る。


 抑圧された感情の解放。各々が自分を表現する術を知っていた。


「「「「「「――――!!!」」」」」」


 彼らは音楽に固執する。サイケデリックロックを奏でる。


 黄金期となる1960年代を呼び起こし、伝説的なバンドは蘇った。

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