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教皇外交録/聖十字と悪魔の盟約  作者: 木山碧人
第十章 マルタ

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第55話 熱戦

挿絵(By みてみん)





 辺りに飛び交うのは、無数の青い球弾。


 小規模な結界を反射板にして、軌道は不規則。


 攻めるにせよ、守るにせよ、なかなかにやりづらい。


 待てばいいわけでもなく、反射板内の強化アイテムが厄介。


 様々な種類があり、少年が得れば、色に応じた能力が付与される。


(――分裂した球の数は八個。――モチーフは『アルカノイドⅡ』かな)


 球弾を紙一重で回避し、強化アイテムの動向を追いつつ、考察。


 色と傾向と強化パターンを解析して、あからさまな元ネタに辿り着く。


(――それなら)


 私はピタリと足を止め、隙を晒す。

 

 襲い来るのは、正確無比な八発の球弾。

 

 回避するのが困難な状況に自らを追い込む。


「――黒物質バグマテリア


 必要最低限の詠唱を伴い、私は抵抗する。


 センスを創造可変し、意図的なグリッチを行う。


 迫る球弾に対し、正攻法とは言えない対処法を講じる。


「――っっ!!?」


 少年の表情が強張り、動揺を示している。


 彼の視界に広がるのは、緩やかになった球弾。


 シャボン玉のようにフワフワと浮かび、失速する。


 常軌から逸した光景を前に、続く言葉は決まっていた。


「一体、何を……」


 本来なら答える義理のない損な質問。


 不用意に教えれば、敵に塩を送ることになる。


 ただ、どちらを選ぶにしても、私の優位は揺るがない。


「――アルカノイド用コントローラーで『ベースボール』を遊んだことはある?」


 ◇◇◇


 修道女イブ・グノーシスは詳細不明の存在だ。


 信徒を隅から隅まで把握しているわけではなく、目立った功績を持つ者でなければ、記憶に残らないのが自然。……だが、認識の修正が必要だ。少なくとも、行動を共にする身内の調査は徹底しなければならない。ここまでの大物が無名でいられた白教の隠蔽体質を抜本的に見直さなければならない。


「あなた方が扱うセンスと呼ばれる全ての光は『霊的な知識(グノーシス)』に通じる。起源が二番煎じに劣ることなどありません。ましてや、物質に囚われる意思能力を選んだ愚か者に敗れることなど、あってはならないのです!!」


 飛来させた幾多の黒螺子は、白の極光を前に瓦解する。


 勢い余るままに展開され、物理的な干渉力を持ち、差し迫る。


「――――」


 修道女という檻から解き放たれたのは、神か悪魔か。


 その行く末を見届けられることはなく、私の意識は途絶えた。


 ◇◇◇


「「――――」」


 道路上で鍔迫り合うのは、刀と手甲。


 小十郎と名乗る野郎と開戦し、鎬を削り合う。


 俺目線だと海外だったが、繰り広げられるのは純和風。


 久しく味わうことができなかった上物を前に、昂ぶるのは魂!


「――ぶっ飛べ!!!」


 おもむろに突き出したのは、青の甲冑の右腕。


 紫色のセンスを起爆剤にして、腕部を分離し、発射。


 意表を突いた飛び道具が至近距離にいる敵の懐に飛翔する。


「手ぬるい!!!」


 小十郎は刀を繊細に振るい、右腕部を輪切りにする。


 無力化されたように見えるが、俺のターンはまだ終わってねぇ!


「そして、爆ぜろ!!!」


 端的な命令を送り、切断された腕部は爆発四散。


 密着にいた俺ごと巻き込んで、敵に自爆特攻を試みる。


 躱せる状況じゃあなく、小十郎は直撃を余儀なくされていた。


「「――――」」

 

 生じた煙から左右に分かれるように、俺たちは距離を取る。


 爆発の余波をもろに受け、大なり小なり俺たちは負傷していた。


「…………」 


 俺の損傷は軽度。顔と手甲がない右腕に火傷を負った程度。


 ぶっちゃけ余裕で戦闘続行可能だ。膝を崩してやるにはまだ早い。


「――っっ」

 

 対する小十郎は膝を崩しかけ、刀を杖代わりに持ち堪える。


 全身の軽い火傷に加え、身体の至る所に痛々しい裂傷が見えた。


 解説するまでもねぇ。奴は気付いてる。ヒントは足元に転がってる。


「仕込み刃か……。味な真似を……」


 そこに散らばっているのは、鋭利な突起物。


 現代兵器なら破片手榴弾ってやつと同じ原理だ。


 厄介なのは爆発の方じゃなく、四散する手甲の破片。

 

 中には刃物が仕込まれ、手甲に対処した相手に飛来する。


 本来なら俺も食らうが、刃は意思で制御し、被害は前方のみ。


 爆発を耐え得る甲冑とセンスを纏っていれば、余裕で耐えられる。


 刀を抜く必要がないのは、この二段仕込みで大抵は倒せるからだった。


「投了するか? 武士崩れ。今なら見逃してやらんこともないぜ」


 決着を見送り、後に再戦するのもまた一興。


 消化不良感は拭えないが、好物は残しておきたい。


 ここで食い尽くしてしまうには、惜しい人材な気がした。


「生憎、諦めが悪くてな。ここで倒れるつもりは毛頭ない。……少なくとも、その刀を抜かせるまでは!!」


 小十郎は再び刀を握り、断固とした決意で言い放つ。


 身体はボロボロだが、目は死んでない。心意気は衰えてない。


「――――ッッ!!!!!」 


 もう言葉はいらねぇ。後はこの闘争を心行くまで楽しむだけだった。

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