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教皇外交録/聖十字と悪魔の盟約  作者: 木山碧人
第十章 マルタ

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第51話 三者三様

挿絵(By みてみん)





 9月9日。午後9時。首都バレッタ南西方面。噴水広場。


 首都の玄関口に位置し、眼前には石造りのゲートが見える。


 中央には三体の男性銅像が巨大なボウルを支える噴水があった。


 トリトン・ファウンテンとも呼ばれ、本来なら観光客で賑わう要所。


 バスターミナルから近く、首都に入るためには必ず目にすることになる。


 ――しかし、出入りは厳しく規制されている。


 マルタ騎士団が生前葬の準備を着々と進め、ここは出発点。


 棺桶の中に納められた夜助、椿と共に列をなして、道路を直進。


 その動線上に位置する聖マルタ大聖堂で本域の葬儀が行われる手筈。


 すでに女性用の黒のフォーマルスーツに着替え、こちら側の準備は万端。


「あと1時間……」


 棺桶と紐づく二つの鎖を握り、ぽつりと独り言をこぼす。


 マルタ共和国に訪れた理由。メインイベントがようやく始まる。


 ◇◇◇


 同時刻。首都バレッタ。別荘ヴィラ・ガーダマンギア。


 一階のリビングでは、どんよりとした空気に満ちていた。


「「「「「「…………」」」」」」


 アルカナ、小十郎、修道騎士、じいや、ルーチオ、ジャコモ。


 聖エルモ砦強襲に関わった面々は、ラウロの死を重く受け止める。


 惨劇を直接見てはいないものの、徒労に終わったのは精神的にきつい。


 一名の犠牲を払い、各々が無理をして、『成果なし』という事実だけが残る。


「顔をお上げください。この展開はラウロ様自身が望まれたこと。喪に服したい気持ちは尊重しますが、過度に落ち込む必要はありません。……それよりも、『遺言』を全うすることが私たちの使命のはず。違いますか?」


 重苦しい空気の中、私は毅然とした態度で声を張る。


 陰鬱とした気分に浸りたい気持ちはあれど、今じゃない。


「生前葬を滞りなく進行させること、だよね。運営母体はマルタ騎士団だから、今度は敵から味方に回る形か……。他の皆はどう思ってるか知らないけど、僕は正直気が進まないな。ラウロの死によって僕たちの悪行が免罪されたのは分かるんだけど、強権的な組織って印象は変わらない。彼の『遺言』だから協力したい気持ちはあるけど、騎士団には協力したくないっていうのが僕の本音かな」


 真っ先に反応を示したのは、アルカナだった。


 恐らく、この場の全員の意見を代弁したような発言。


 私としても少なからず思うことはあり、想定していた回答。

 

 全員が納得するような見解を示さなければ、計画は実行できない。


「勝手に動けばいいまでのこと。結果的に騎士団が得するのであって、必ずしも密接に連携を取る必要はないと思われます。それに、向こうを貶めるつもりはサラサラないため、砦強襲時とは違い、責められる謂れは全くありません」


「独断専行か。騎士団の方針に沿うなら罪には問われないだろうね。……ただ、闘う相手によって事情も難易度もモチベーションも大きく変わる。今回の仮想敵は一体誰なんだい?」


「悪魔を含む白教の派遣団。……場合によってはババを引く恐れもあります」


 ◇◇◇


 同時刻。首都バレッタ内にある某所屋上。


 夜風に吹かれながら、指で円を作り、覗き見る。


 そこにはホテルの窓越しに見える一匹の青色猫がいた。


「ラウちー見~つけた」


 声を発するのは、黒のエージェントスーツを着た緋色髪の女性。


 ファスナーが開き、はだけた胸元からは茶色毛のニワトリが顔を出す。


「……独断で動くなよ。チームと足並みを揃えろ。お前はもう最強じゃあない」


 忠告するのは、同種の服装をした蒼髪の男性。


 左肩には銀色のフクロウを乗せ、不機嫌そうな顔で忠告する。


「はいはい、分かってますよー。……勝負は1時間後。ゴタついてる時に襲撃するのが一番だよね」


 緋色髪の女性ソフィアは返事をし、振り返った先には同志。


 悪魔を含む白教の派遣団が瞳に闘志を滾らせ、その時を待っていた。

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