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教皇外交録/聖十字と悪魔の盟約  作者: 木山碧人
第十章 マルタ

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第141話 似て非なる者

挿絵(By みてみん)





 ラウラはいつも選択を間違える。マルタ共和国に来てからというもの、悪い意味で期待に応え続けている。彼女の性格を矯正したいという思いに駆られるけど、それは僕のエゴだ。自分にとって都合がいいように動いたか、自分の好みかどうかを基準に他人の人生にケチをつける人間には極力なりたくない。


 そもそも、正しいか間違ってるかなんてのは、人の主観に依存する部分が多い。大きく社会から逸脱した場合は法が適用されるけど、そうじゃない部分はモラルやマナーや社会通念と言った明文化されてないグレーゾーンで人を叩くことになる。自分がマナーを守っているのだから、相手もマナーを守るべきだ。自分が不快に思ったのだから、相手は不快にならないように努めるべきだ。……神様にでもなったつもりなのかな。どんなに権力を持ったとしても、自分本位の理由で相手を捻じ曲げるようなことはあってはならないと僕は思う。相手のためを思って……ってのは結局、自分のことしか考えてない人が多いように感じる。


 だから、間違いは指摘するんじゃなく、ラウラ本人に気付かせるべきだ。法律で裁けないグレーゾーンに留まっている今ならまだ間に合う。取り返しのつかないことが起こる前に、何らかのアクションを起こして、彼女自身が性格を改めたいと思うきっかけを作るべきだ。それでも、騎士団のラインを超えたら、その時は……。


「…………」


 頭突きの衝撃で飛ばされていた僕はようやく停止し、どこかの屋上に着地する。早速、彼女たちを捜そうとすると、遠くに見える建物が崩れ去った。


 ◇◇◇


 僕は口にくわえた黒の大剣を巧みに操り、リビングの天井を斬り裂くと、降ってきたのは、金髪美女と三階だった。半分は想定通りだが、半分は想定外。瓦礫に紛れて、波刃包丁を持った女が襲い来る。建物が崩れれば常人だと致命傷だが、センスを纏うことでタフネスが向上する意思能力者にとっては決定打になりにくい。だからこそ瓦礫は本命じゃねぇ。接近に気付かせないようにするための目くらましだ。


『『…………』』


 先に着地した僕は図らずも、アウロラと背中を預け合い、前と後ろを任せ合う。彼女がどこまで戦えるか分からねぇが、腐っても意思能力者だ。少なくとも、降ってきた瓦礫如きに押し潰される心配はねぇだろう。それよか問題は、金髪美女の戦闘力だ。軽くやり合った感じ、剣術をかじったってレベルじゃない。滅葬志士の棟梁と同じぐらいか、はたまた、それ以上ってところだ。更に意思能力が付随するなら、なんて余計なことを考えても意味ねぇな。今はただ……。


「――」


 思考に踏ん切りをつけた直後、物陰で刃が煌めくと、降り注ぐ瓦礫が更に細切れになった。波刃包丁のギザ刃をノコギリのように機能させたってところか。瓦礫が攻撃力に直結するかはさておいて、死角が増えたのは確かだ。


『――!!』


 僕は力技で押しのける。大剣を袈裟懸けに振るい、センスを飛ばす。力を一点に収束させる意思弾系の技は得意じゃねぇが、大雑把なもんなら可能だ。端的に言うなら、収束じゃなく、拡散。センスは外向きの放射状に飛び散り、流れに沿った瓦礫は四方八方へと押しのけられていった。残すところは金髪美女のみのはずだ。


『ラウラ、あれ!』


 背後にいるアウロラは上空を見つめ、真っ先に脅威に気付く。そこに見えたのは、三階から落ちて来たと思わしき車椅子と、それに座る金髪美女だった。とち狂ってると切り捨ててやりたいところだが、明確な悪意を感じた。恐らく何か裏がある。見れば分かることをアウロラがわざわざ指摘したとは思えず、警戒すべき事柄が別にあるような気がした。続く言葉を待ちたいところだが、後手に回りたくない。


「――!!!」


 大剣の勢いとセンスを維持したまま、僕は大剣を切り上げ、第二射を放つ。ひとまず、吹き飛ばして様子見だ。仮に何らかの策を講じていたとしても、起こった時に考えりゃあいい。


『馬鹿! あれはただの車椅子じゃない!!』


 珍しくアウロラは声を荒げ、今の行いを非難する。その言葉にゾッとした。そこまで言われて分からないほど察しが悪いわけじゃなく、車椅子の用途に想像がついた。ただ、動き出した歯車は止まらない。時間を巻き戻せるわけじゃない。


分裂する一切れトランシュ・ディヴィジオン


 更に金髪美女は状況の悪化に拍車をかける。座っている車椅子から跳躍したと同時にグルリと空中で一回転し、ギザ刃を振りかざす。ザクリと音を立て、車椅子が両断されると左右に分裂し、増殖を始める。どうやら、波刃包丁で切断した対象をコピー&ペーストが出来るらしい。燃費がいいか悪いかはさておいて、僕の意思能力の完全上位互換だった。僕は一度切り取ったものを複製できねぇが、彼女は可能らしい。こっちには貯蔵できるメリットもあるが、似たような能力だけに嫉妬心を隠しきれずにはいられなかった。とはいえ、能力の優劣にうつつを抜かす暇はなく、僕が起こしたセンスの斬撃は放射状に炸裂し、車椅子に付属する物体を刺激した。


「『『――――!!!!!』』」


 大量の酸素ボンベが爆発する。センスが火の代わりを果たし、周囲を吹き飛ばす。詳しい力学や数字は知らねぇが、一つ当たり手榴弾数個分の威力ってところか。それが数十個も起爆したらこうなる。家は消し飛び、数十メートル以内の相手は消し炭になるだろう。死なば諸共ってか……。笑えねぇな。笑えねぇよ。


切り取り(カット)


 僕は爆発を切り取った。水中都市ラグーザを吐き出して、空いたスペースに収納した。コピー&ペーストは便利だが、カット&ペーストとは似て非なるものだ。相手にないものを僕は持っている。それを誇らしく思うね。おかげで敵は油断した。致命的な隙を晒した。僕が直接手を下すまでもねぇ。勝負はもうついている。


北極光ノーザンライツ!!』


 アウロラから迸るのは、緑、赤、青が交じり合ったような光。意思弾のような直線でも、意思斬のような放射でもない。面であり、層。光のカーテンに包み込まれるように金髪美女は捕縛され、プラズマと思わしき火花が弾ける。期待通りというべきか、シンプルイズベストってやつだな。焼け焦げた金髪美女は、奇跡的にも無事に原型を保った車椅子に着地する。見たところ死んではないが、気を失ってる状態。


『ランチにしては高くついたな。まぁ、勉強代ってやつだ』


 どうせ言葉通じねぇだろうが、憂さ晴らしに言い放つ。


 いい感じにも肩慣らしは終わった。残すはラスボス戦だな。

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