表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
教皇外交録/聖十字と悪魔の盟約  作者: 木山碧人
第十章 マルタ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

123/149

第123話 終幕

挿絵(By みてみん)





 中庭に響き渡ったのは轟音。私とソラルによって生み出された意思弾が炸裂し、華麗なフィナーレを迎えた。劇場版ならラストの見せ場でも遜色ない光景。仲間を信じて掴んだ勝利だと余韻に浸ってもいい。だけど、私は冷静だった。


「――これ、借りるね」


 私は一言断りを入れて、女騎士から西洋剣を拝借する。付与された術式は恐らく『再生阻害』。この剣で真っ二つにされた甲虫男は戻らないんじゃなく、戻れない。硬い外骨格に通用した切れ味よりも、私は能力に注目した。聞けば確実なんだろうけど、その時間が勿体なかった。


「…………」


 見通しの悪い土煙に包まれた空間に、私は足を踏み入れる。一歩ずつ着実に進み、毅然とした表情を作り、甲虫男がいると思わしき方向に導かれる。


『………素人が剣を振るうか』


『………半端な技量では火傷するぞ』


 そこには、焼け爛れながらも再生を始める一対の甲虫男がいた。左半身と右半身の原型を留め、立ち上がり、私を温かく出迎える。熱い展開はもうやった。劇場版のような派手な展開はいらない。地味にしめやかに個人的な因縁に決着をつける。


「北辰流――【春雨】」


 返事の代わりに放つのは、無数の刺突。


 型にハマった無駄のない動きが繰り出される。


『――――っっ!!』


『――――っっ!!』


 反論の余地もなく、左半身と右半身は直撃。


 至る所から出血し、その傷口が塞がる様子はない。


 これでは決着がつかない。そんなのは予め分かっていた。


「――【村雨】」


 この型は連撃を前提に作られている。


 先ほどよりも勢いを増し、刺突を繰り返す。


 甲虫男の表情に余裕がなくなっていくのが見えた。


『ノウマク・サンマンダ……』


『バザラダ――』


 彼は後方に距離を取り、短い詠唱を開始する。


 完遂すれば、今の私にも通じるカウンターとなるはず。


「――【速鳥】」


 思い通りにさせるわけもなく、私は踏み込み、剣を縦に振るう。


『…………っっっ』


 詠唱中の右半身は竹を割ったように真っ二つとなっている。


 これでもまだ甘い。技は阻止できたけど、三体に分裂しただけだ。


「――【朝霧】」


 すかさず振るうのは、無数の斬撃だった。


 刃が霧状に見えるほど高速化し、敵を斬り刻む。


 右半身だったものに変わり、辺りには肉片が飛び散る。


『待て。俺ならお前の願望を――』


 左半身は俗っぽい台詞を並べ、隙を伺っている。


 返答すれば、何かしらの策を講じるつもりなんだろう。


「――【有明】」


 私は斬撃に意思を乗せ、飛ばし、爆発させる。


 交渉の余地はない。和解で済むフェイズは終わっていた。


『婆栖鳥!!!!』


 ようやくエンジンがかかったのか、右半身は鳶の如き鳥を放つ。


 本体の状態に依存しているのか、姿形は半分に欠け、勢いは感じない。


「――【吹雪】」


 私はそれを突き穿つ。焼き鳥のように串刺しにして、右半身も貫く。


 相手のセンスを媒介に体内の熱と温度を奪って、極低温状態に陥らせる。


『――――ちぃ!!』


 突き刺された刀身を引き抜こうと触れた手は凍り付く。

 

 症状は悪化の一途をたどり、体表面に薄い氷が広がっている。


 そこで死を悟ったのか、甲虫男の動きは止まり、抵抗を諦めていた。


『これで、終わりと思うなよ……。地獄でまた、逢おうぞ……』


 俗っぽい台詞を並べると頭部にまで氷が及ぶ。


 ここで止めることもできたけど、要望には応えたい。

 

 封印という管理体制に依存した状態よりも地獄がお似合い。


「――【霰】」


 私は突き刺さった刀身の先に意思を込め、放つ。


 瞬時に身体は爆発四散して、霰のように飛び交った。


 次第に霧が晴れるように土煙が消え、辺りが見えてくる。


 そばにいたのは、一人。白い調理服を着た男性コックがいた。


 終幕を飾るにふさわしい配役。何を言うべきかは自然と浮かんだ。


「――西洋風冷凍微塵チキンの出来上がり。――感想求む」


『これでお前は終わりです』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ