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教皇外交録/聖十字と悪魔の盟約  作者: 木山碧人
第十章 マルタ
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第12話 対立

挿絵(By みてみん)





「だぁかぁらぁ! 俺は味方だって言ってんだろ!!」


 ドゴッという鈍い音が響き、最後の同僚をノックダウン。


 握った拳を解くと、辺りには数名の看守が地面に倒れ込んでいた。


「んなことより、早く……」


 視線を移し、自然と視界に入ったのは、ラウロの隣の独居房。


 脱獄したのは分かっていたが、気になるものが目に飛び込んできた。


「おいおいおい、待て待て待て――」


 数ある鍵束の中から慌てて一本の鍵を選び、扉の南京錠を外す。


 恐る恐る独居房の中へと踏み入れ、石造りの壁を注意深く見渡した。


 ――刻まれるのは、大量の血文字。


 それも呪術じみた禍々しい様相を呈してやがる。

 

 化けもんや魑魅魍魎は出てこないが、明らかに異常。


 前々から仕込んでいたのか、あの一瞬で書き上げたのか。


 なんにしても――。


「あの野郎、一体なにもんなんだ……」


 ◇◇◇


 聖エルモ砦内、中庭。星型要塞の中央に位置する地点。


 運動場として囚人に開放される場所だが、遊具は何もない。


 殺伐とした空間を突っ切り、兵器庫がある北西方面に向かった。


「ここまでは順調だね。第三級程度なら今の僕たちでもどうにかなる」


 振り返った場所には、十数名の看守が気絶している。


 特に手こずったりすることはなく、意思の力で押し通れた。


「油断は禁物よ。先のことを考えれば、いずれ頭打ちに……」


 並んで走るのは、赤と白のボーダー服を着る長い黒髪の男。大日本帝国からはるばるやってきた、密入国者だった。背は平均より高め、顔や体の輪郭はスラッとしているが、しっかりと鍛えられた筋肉が服越しに見える。目的は聞かされてないが、刀を得れば自ずと明かしてくれるだろう。


「「…………」」


 状況を頭の中で整理していると、足が止まった。


 行く手を遮るのは、赤マントに赤修道服を着た黒髪の男。


 両手には聖骸布と思わしき黒い包帯が巻かれ、鋭い目線を向ける。


「どこに行こうというのだね。貴様たちの住処はあちらだろ?」


 赤いセンスを纏い、人差し指を突き立てている。


 そこには東方面に位置する独居房が見えているはず。


 言ってることはまともだが、今の状況はまともじゃない。


「食後の運動ってやつだよ。付き合ってもらえるかな?」


 ダラリと冷や汗を流しつつ、僕は質問に対し、軽口で答える。


 余裕なんてサラサラないが、まともに会話する気も起きなかった。


 対する大病院長は目くじらを立てることなく、拳を振りかぶり、語る。


「無論だ。原因不明の食あたりには気をつけるがいい!!」


 ◇◇◇

 

 ドゴンと重低音が鳴り響いたのは、中庭方面。


 砦内にいて外の状況が分からないものの、敵は明白。


「いよいよ、大病院長グランドホスピタラーのお出ましですか……」


 私はひとまず東方面にある独居房を目指し、前進。


 まずは、ラウロ様の安否を確認することを最優先とした。


 辺りには取る足らない輩が倒れ、今のところ進行に問題はない。


「――っ」


 しかし、些細な違和感を感じ取り、すぐさま後ろに跳躍。


 同時に左側の壁がバキリと音を立て、元いた場所を圧し潰す。


 辛くも最悪の結果は回避できたものの、何事にも原因はつきもの。


 中庭が丸見えになった穴から現れたのは、銀髪尖耳の若い修道士の姿。


「へぇ、思ったよりも活きがいい。……だが、どこまで持つかな!!」


 彼は両拳を挟み込むと、今度は両壁が迫り来る。


 恐らく、地に起因したものを操ることができる意思能力者。


「あなたの限界がこれなら……どこまでも」


 私は両手の裏拳を左右の迫る壁に放ち、打ち砕く。


 言葉では軽口を叩きながらも、並みの使い手ではない。


 この時点で、苦戦を強いられる可能性が高いのを予感した。

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