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教皇外交録/聖十字と悪魔の盟約  作者: 木山碧人
第十章 マルタ

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第107話 思惑

挿絵(By みてみん)





「この先の兵器庫から。厳密に言えば、紀元前のエジプトからかな」


 ミイラ女が語ったのは、思いもよらない発言。


 交渉の果てに明かされたのは、予期せぬ情報開示だった。


「――それってクレオパトラ系? ――それともアポカリプス系?」


「さぁ、どうでしょう。答える義理はないかなぁ」


「――X-menの系譜なら意思の力の起源だったりして。――もしくは……」


「よく分かんないけどさぁ。一つだけハッキリしてることがあるよ」


 妄想を膨らませていると、ミイラ女は再び緋色の意思を纏う。


 彼女との交渉は終わった。次の行動は、少し考えれば分かるはずだった。


「――っっ」

 

 黒い包帯に両目を覆われ、訪れたのは暗闇。


 後ろ手を縛られた状態で拘束されたのが分かる。


 息つく暇すらなかった。ほんの一瞬の隙を突かれた。


「私は強い。そんじょそこらの悪魔よりかはね」


 ◇◇◇


 私とソラルはミイラ女に捕縛され、連行された。


 場所は引きずられた時間を考えれば恐らく、兵器庫。


「…………」


 私は縛られた後ろ手を動かそうとしながら、状況を考察する。


 考えるべきは何と言っても、拘束力に直結する包帯のことだった。


(――センスは練れるけど、千切れない。――この技、ガチすぎる)


 恐らく、ミイラ女が有する意思能力に違いない。


 邪眼や能力を開示済みだった点を抜きにしても、強力。


 少なくとも、今の私の力だと脱出するのは極めて困難だった。


「ひとまず安心していいよ。あの修道士も含め、気概は加えない」


 黒い包帯で暗転した視界の中、耳元からミイラ女の声が聞こえる。


 耳に入ったのはそれだけじゃなく、私以外の衣擦れ音が混じっている。


「――私たちは人質ってわけね。――砦の職員も含め」


「ご名答。よく分かったね。騒ぎに便乗して、クーデターした次第」


「――人が少なかったのはそのせいか。――それで、目的は?」


大病院長グランドホスピタラーと交渉する。本命は私たちの人権」


「――捕らえられてたの? ――囚人じゃないのに?」


「武器や道具に変えられて兵器庫に保存されてた。だから私たちは別口なんだ」


「――事の発端が大病院長グランドホスピタラー?」


「そういうこと。今風に言うなら、集団訴訟案件みたいなもんかな」


 聞きかじった知識を語るように、ミイラ女は現代用語を用いる。


 世間知らずではあるんだろうけど、世俗を全く知らないわけでもないらしい。


「――誰が代表?」


「当然、私。この中でも最古参だからね」


「――協力すると言ったら?」


「悪いけど、信用できない。これには私たちの人生がかかってる」


 協力を申し出るも、キッパリと突きつけられたのはNO。


 言ってることはもっともだし、同じ立場なら私でもそうする。


 大して時間もかからないだろうし、傾聴するのが無難ではあった。


「――私は悪魔。――交渉の専門家だよ。――雇ってみない?」


 ただ、私は食い下がる。自信をもって自分を売り込む。


 この先のことは分からないし、だまくらかすつもりもない。


 そっちの方が面白そうだから。という興味本位でしかなかった。


「今までの最大実績は?」


「――イギリス国王と友好関係を結んだ」


「成功した時の報酬は何が欲しい?」


「――仲間になって欲しい。――期間は首都の問題が片付くまで」


「目隠しプレイも可能?」


「――舌先三寸あれば十分。――その代わり、経緯は嘘抜きで教えて」


「いいね、採用。じゃあ早速、リットする準備といこうか!」


 トントン拍子で私は、物分かりのいいミイラ女と顧問契約を結ぶ。


 相手は大病院長グランドホスピタラー。いくらキャリアを積もうと、備えあれば憂いなしだった。


 ◇◇◇


 砦の異変に伴い、小生の意思能力は全て解除した。砦内でセンスを封じる神秘や、兵器庫のギミックは一時的に解放された。……どうやら、それに便乗した者がいたらしい。宿舎を一通り見回ったが、誰一人として姿が見えない。狂った住民の仕業とも考えられるが、抜け目がないことから計画的な犯行に思える。


「…………」


 自ずと導かれたのは、砦北西の兵器庫前。この中に恐らく犯人がいる。修道士を人質に取り、立てこもっていることが考えられる。目的は、交渉か復讐のどちらかだろう。兵器長ウェポンマスターの再起動条件を満たせば、兵器化も可能だが、果たして……。


「――――」


 外されてある錠前に視線を落としつつ、小生は両開きの大扉の取っ手を掴む。金属特有の冷たい干渉を感じながら、引いた。錆びか劣化か、蝶番から重々しい音が鳴り響き、扉が開かれると、中の様子が明らかになっていった。


「「……………」」


 立っていたのは二名。一名は予想通りの人物。


 もう一名は予想の候補になかった拘束済みの悪魔がいた。


「名は?」


「――ジュリア・ヴァレンタイン。――肩書きは第三級悪魔」


「目的は?」


「――彼女たちの集団訴訟を弁護する。――いわば、顧問弁護士」


「訴訟内容は?」


「――法制史上、最長の違法拘禁。――最低でも彼女たちの自由は保障させる」


 つらつらと語られるのは、入念に用意したであろう回答。


 大したキャリアを積んでない若輩者の涙ぐましい努力が伺える。


 無碍にする手段は何通りもあるわけだが、今日はすこぶる気分がいい。


「受けて立とう。マルタ騎士団の領地に適用される内部法でな」

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