第二話 「発見の経緯」
軽井沢駅前の観光通り。人々の賑わいの中で、天城家の一行だけが静かに沈んでいた。
「真理亜……大丈夫?」
美佐子が娘の背をさすりながら、声をかける。だが真理亜は泣き崩れたまま、うつろな目で道の石畳を見つめ続けていた。
遼真は、姉と妹の姿を前にして、ただ唇を強く噛みしめていた。
「……姉さん。苑香ちゃんのこと、本当なんだな」
玲子は頷く代わりに、女性刑事へと視線を向けた。
「……発見の経緯を、教えていただけますか」
その声は冷静で、しかし強い決意に満ちていた。
女性刑事は小さく息を整え、周囲を気にしながら言葉を選んだ。
「――遺体が発見されたのは、ここから車で三十分ほどの山中です。林道を整備していた作業員が、地中から出てきた人骨を見つけ、警察に通報しました」
玲子の表情はわずかに険しくなる。
「白骨化ということは……行方不明になってから、少なくとも数年は経過しているでしょうね」
「はい。司法解剖の結果から、おそらく中学三年の夏、つまり数年前に亡くなったものと推定されています。所持品や衣服の一部からも、近衛苑香さん本人と断定されました」
真理亜の喉から、堪えきれない嗚咽がもれた。
「……そんな……やっぱり、あの時に……」
玲子は妹を支えながらも、女性刑事に視線を戻す。
「遺体発見の現場は、観光客の立ち寄るような場所では?」
「いえ、一般の観光客はまず立ち入らない山の奥です。ただ……」
女性刑事は言葉を濁した。
「ただ、埋められていた痕跡が浅い。意図的に隠したというより、急いで処理されたように見えるんです」
玲子の瞳が鋭く光る。
「……つまり、“事件性が高い”と」
「はい」
女性刑事は頷いた。
「本部ではすでに殺人事件として捜査を進めています。ただ、当時の記録は断片的で……失踪届けも曖昧に処理されていた。ご家族の方が必死に訴えていたのですが、何故か進展がなかったようです」
玲子の眉間に皺が寄る。
――また、どこかで“闇”が働いていたのかもしれない。
そう直感する鋭い眼差しで、女性刑事を見据えた。
一方、遼真は女性刑事の話を聞きながら、拳を握ったまま震えていた。
「苑香ちゃん……あの日、俺たちに手を振って……。まさか、あの後……」
その姿を見た美佐子が、そっと遼真の肩に手を置いた。
「遼真……あなたのせいじゃないわ。だけど、もう目を背けられないのよ」
真理亜はまだ涙にくれていたが、姉の腕の中で小さな声を絞り出した。
「玲子姉さん……苑香ちゃんのために……真実を知りたい」
玲子は妹の涙を拭いながら、強く頷いた。
「――ええ。絶対に。この軽井沢で、すべてを明らかにするわ」
その言葉に、女性刑事の表情も引き締まった。
「……本部長、私も協力いたします。ですが、今はまだ周囲には内密に」
玲子は短く答えた。
「承知しています。私たちは、旅行者としてここに来た。ただし……妹の友人の件となれば、私は警察官としても動くしかありません」
高原の風が吹き抜け、木々がざわめいた。
避暑地の軽井沢に漂う穏やかな空気の下で、確かに“過去の罪”が蘇り始めていた。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——
ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!
その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。
読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。
「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!
皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。




