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第1話「灯りの下、二人の誓い」


 都内の喧噪から少し離れた、由緒ある高級ホテル。その佇まいは古き良き洋館を思わせながらも、細部には最新の調度品と静謐な空気が行き渡っていた。

 天城家では祝い事の折に必ず利用してきた、いわば「家族の第二の居間」のような場所である。母・美佐子の誕生日、兄・隆明の昇進祝い、妹・真理亜の音楽コンクールでの受賞――数々の記念日が、このホテルのシャンデリアの下で祝われてきた。


 この夜、フロントに立った支配人は、柔らかな笑みとともに玲子と優人を出迎えた。

「天城様……そして旦那様。ご結婚、誠におめでとうございます」

 深々とした一礼に、玲子は一瞬肩を揺らす。自分の結婚がすでにホテル側に知られていることに頬を赤らめたが、支配人は微笑のまま言葉を重ねた。

「天城家の皆様には長年お世話になっております。どうぞ今宵は、特別な一夜をお過ごしくださいませ」


 案内されたスイートルームは、広々としたリビングと重厚な寝室が続く贅沢な造り。窓からは都心の夜景が瞬き、まるで星々が二人を祝福しているかのように輝いていた。

 玲子は胸の奥が甘く震えるのを抑えられなかった。警視庁本部長という立場では見せることのない、一人の女としての素顔が、ここでは解き放たれてゆく。


 ジャケットを脱ぎ、ネクタイを緩めた優人がゆっくりと近づいてきた。彼の瞳は真っ直ぐで、玲子を映す光は迷いひとつなく、ただ熱を帯びている。

「玲子さん……」

 呼びかけとともに触れられた頬。そこから全身へと熱が広がり、彼女は小さく息を漏らす。

 唇が触れ合う。深く、甘く、そして確かめるように。何度も重ねられる口づけに、玲子は心の奥まで蕩けてゆく。


 やがて寝室の灯りが、優人の手でわずかに強められた。柔らかなシャンデリアの光が、互いの輪郭をくっきりと照らす。

「暗いままじゃなくて……玲子さんを、ちゃんと見たい」

 優人の囁きに、玲子の頬は熱く染まった。

「……恥ずかしいわ」

「綺麗だから。俺の目で、ちゃんと確かめたい」


 言葉とともに、彼の指先がドレスの背をゆっくりと解き、肩へと滑る。白い肌が灯りに晒され、玲子は思わず腕で胸元を隠した。

 しかし優人はその手を優しく取り、指先で撫でながら微笑む。

「触れるたびに思うんだ。玲子さんは、本当に綺麗だ」

 その囁きに、玲子は抗えなくなり、そっと目を伏せた。


 裸の肌と肌が重なり、抱きしめ合う。灯りの下で互いの鼓動を確かめながら、長く、深く、愛を分け合う。

 優人の手が玲子の背をなぞり、唇が首筋を辿る。玲子は声を押し殺しながらも、彼の名を呼び続ける。

「優人……あなただけよ……」

「玲子さん……ずっと、離さない」


 やがて一つになった二人は、幾度も寄せ合い、確かめ合い、夜景に溶けるように身を預けた。

 都心の灯りが窓越しに瞬くなか、二人の世界はただ愛の熱に包まれていた。



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