表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/118

第八話「闇に揺れる出雲」



出雲署の取調室。

夜の冷気が窓の隙間から入り込み、部屋の空気を重くしていた。


机の前に座るのは遼真。

向かいには二人の地元警察官――刑事課の村上と杉田。

彼らは資料を机に並べ、淡々と質問を投げかけていた。


「――あなたが第一発見者ですね?」

「はい。僕が……」


遼真は落ち着いた声で応じるが、胸の奥ではざわめきが止まらない。

事件の凶器となった銃弾は未だ見つからず、現場に残された指紋の一部が「遼真の持ち物」と一致していると告げられていた。


「どういうことだ……俺は何もしていないのに」



控室でその様子を待つ玲子の胸も、張り裂けそうだった。

まだ正体を明かせない。だが、このままでは遼真が――。


そこへ、隆明が入ってきた。

「玲子。取調べは長引く。だが……落ち着け」

「……兄さん、もう十分じゃないの? 遼真は何もしていない。これ以上疑いをかけられれば、彼は……」


玲子の声は震えた。

隆明は険しい顔のまま、ゆっくりと首を横に振る。

「まだ証拠が揃っていない。だが――お前の言う通りだ。あいつが犯人じゃないことは、俺も分かってる」


隆明の声は、家族にしか見せない“信頼”を帯びていた。



その頃、取調室の外――。

署内の一室で、柳瀬透の妹・由梨が警察に付き添われていた。

兄の消息を探していた彼女は、玲子にだけ打ち明けた言葉が胸に残っていた。


「お兄ちゃんは……玲子さんのことを、ずっと……」


彼女の目は涙に濡れていた。

透が生活安全局長の息子であること、そして彼が出雲に潜んでいる可能性。

それらの事実は、捜査線上に浮かびながらも“裏”に隠され続けていた。



夜も更けた頃――。

署の外で、一発の銃声が響いた。


「……っ!」

玲子と隆明が同時に立ち上がる。


報告に駆け込んできた若い警察官が叫んだ。

「狙撃です! 屋上から、署内を狙って発砲がありました!」


凍りつく空気。

隆明は即座に指示を飛ばす。

「全員配置につけ! 屋上を押さえろ!」


玲子は血の気を失いながらも立ち尽くす。

狙撃――それは透の存在を示すものに他ならなかった。



一方、取調室の遼真は銃声を聞き、目を見開いた。

(まさか……あの人が?)


彼の胸に、数年前の大学祭の夜に透が語った言葉が蘇る。

――「玲子さんは、俺が守る」


遼真は思わず拳を握りしめた。

「……姉さん、危ない」



出雲の夜は、静寂を失った。

狙撃犯の影は確実に近づいている。

玲子が正体を明かすかどうか――その選択の時は、もう目前に迫っていた。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——


ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!


その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。

読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。


「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!

皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ