表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/118

第三話「狙撃犯の影と妹の決意」



夜の出雲。

月明かりが雲間から差し込み、古都の空気をいっそう神秘的にしていた。

しかしその神秘は、血に濡れた事件現場によって不穏に塗り潰されていた。



玲子が事件の資料を確認していると、背後から慌ただしい足音が近づいてきた。

「――玲子姉さん!」

振り返った瞬間、そこに立っていたのは妹の 天城真理亜 だった。


「……真理亜!? どうしてここに……」

玲子は絶句する。出雲にいるはずがないと思っていた妹が、ひとりで夜行列車を乗り継いでやってきたのだ。


その報せを聞きつけた隆明もすぐに駆けつけ、険しい表情で妹を見下ろした。

「……真理亜、お前、一人で来たのか」

「うん」真理亜は小さく頷いた。

「お母さんが倒れかけて、初枝さんが付き添ってるって聞いて……私が行かなくちゃって思ったの。玲子姉さんと遼真兄さんを守るために」


その言葉に隆明の眉が跳ね上がった。

――守る? 妹がそんなことを言い出すとは思いもしなかった。



玲子は真理亜の肩に手を置き、優しく諭すように言った。

「真理亜……ありがとう。でも危ない事件なの。あなたまで巻き込みたくない」

「分かってる。でも……もう家で待ってるだけなんて嫌なの。お母さんが心配で、私も怖かった。でも、兄さんや姉さんを信じたいから……」


真理亜の瞳は強く輝いていた。

幼さを残したその顔には、家族を思う少女の必死の決意が宿っている。


隆明は腕を組み、沈黙した。

妹の真っ直ぐな言葉に心を動かされながらも、刑事局長としての冷徹な判断が揺さぶられていた。


「真理亜……お前はまだ高校生だ。ここは警察庁でも、天城家の家族会議でもない。犯罪現場なんだぞ」

「だからこそ、私は来たの」

真理亜は一歩前に出る。

「玲子姉さんだって、昔から誰よりも強かった。遼真兄さんは優しすぎて危なっかしいくらい。だから私がそばにいなくちゃって思った。……たとえ危険でも、私は天城家の娘だから」


玲子の胸に熱いものが込み上げる。

母・美佐子の優しさと、父・輝政の信念を、真理亜は確かに受け継いでいた。



その瞬間、闇の中で銃声が鳴り響いた。

鋭い破裂音が夜の出雲を切り裂き、境内の石灯籠を粉砕する。

「――っ!?」

三人はとっさに身をかがめた。


狙撃手がいる――。

隆明は冷静に辺りを見渡し、玲子に低く命じた。

「真理亜を守れ。奴はお前を狙っている」


玲子の背筋に冷たい汗が流れる。

銃口は彼女を狙っていた。理由はまだ分からない。だが確かに、天城玲子が標的なのだ。


真理亜は恐怖に震えながらも、必死に声を上げた。

「姉さん、逃げて! 私がいるから!」

その言葉は涙で震えていたが、確かな覚悟が込められていた。


玲子は妹を抱き寄せ、決して離すまいと強く抱きしめた。

「……大丈夫。絶対に、守るから」



闇の中、銃口の光が一瞬きらめいた。

その影――柳瀬透の存在を、まだ誰も知らなかった。


しかし、この狙撃は単なる警告ではない。

執着と過去の因縁が交錯し、天城家をさらに深い闇へと引きずり込もうとしていた。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——


ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!


その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。

読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。


「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!

皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ