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第七話「遠距離の誓い」


 東京に戻る前夜、優人は再び遼真を呼び出し、二人だけで近くの喫茶店に入った。

 「なあ遼真……玲子さん、他の男から声かけられてたりしないよな?」

 唐突な問いに、遼真はカップを持ったまま目を瞬かせた。

 「姉ちゃんに? そんな簡単に近づける人いないよ。家柄もあるし、第一、姉ちゃんは優人さんしか見てない」

 「……そうか」

 優人は胸を撫で下ろすが、同時に不安を完全には拭えなかった。遠距離恋愛が二人の間に試練をもたらすことは、わかりきっているからだ。



 その夜、玲子と優人は人気の少ない川沿いを歩いていた。月明かりが水面に反射し、二人の影を揺らす。

 「玲子」

 「なに?」

 「これからしばらく会えなくなる。けど……俺たちは信じ合おう。俺は絶対に浮気なんかしない。玲子も、俺を信じて待っててくれるか?」

 玲子は少し唇を噛んだ後、ゆっくり頷いた。

 「もちろん。私だって優人しかいないもの。……離れていても、心はずっと一緒」

 「ありがとう」


 二人はそこで指切りをした。子供じみた仕草に思わず笑い合うが、その笑顔の奥には強い決意が宿っていた。



 その後、優人は意を決し、用意していたホテルへと玲子を誘った。

 「……泊まっていかないか? 最後の夜くらい、ふたりでゆっくり過ごしたい」

 玲子の頬が赤く染まる。逡巡したが、やがて小さく頷いた。


 ホテルの一室。柔らかな灯りに包まれ、二人きりの静寂。

 優人は玲子をそっと見つめ、真剣に尋ねた。

 「……キス、してもいい?」

 玲子は驚き、そして小さく微笑んだ。

 「聞かなくても、わかるでしょ……」


 その言葉を合図に、優人は玲子を抱き寄せ、唇を重ねた。

 初めて交わす熱を帯びた口づけは、ぎこちなさと同時に真っ直ぐな想いを含んでいた。玲子は少し震えていたが、その震えさえ愛おしく、優人は彼女をより強く抱きしめる。


 ――遠距離に負けない、永遠の誓いを、この夜ふたりは静かに心に刻んだ。



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