第7話 疑念の渦
翌朝。
取調室の空気は重苦しかった。
刑事が机に置いたのは、小さな布袋だった。
「これは、事件現場に倒れていた花嫁のものだ」
袋の口から覗いたのは、白い真珠飾りのかんざし。
花嫁が行列の最中に身につけていたはずのものだった。
刑事は続ける。
「驚いたことに、これは君の鞄から発見された。どういうことだ?」
遼真の眉がぴくりと動く。
「僕は知らない……そんなもの、鞄に入れた覚えはない!」
だがその否定の声は、厚い疑念にかき消されていく。
外の廊下。
母・美佐子と妹・真理亜、家政婦の初枝が、不安げに言葉を交わしていた。
「どうして……あの子が……」
「お兄ちゃん、そんなことするはずないのに!」
そこへ、父・輝政が足音も重く現れる。
「証拠がある以上、捜査は進めざるを得ん」
冷徹な言葉に、美佐子の顔は青ざめた。
「あなた……! 遼真はあなたの息子でしょう!」
続いて兄・隆明が低く言う。
「父上の言葉は正しい。立場を超えても、証拠を無視することはできない」
さらに、姉・玲子も現れた。
「……証拠は証拠。感情で覆すわけにはいかない」
だが、その眼差しはほんの僅かに揺れていた。
その様子を見ていた佐伯優人が一歩前へ出る。
「待ってください。証拠はあくまで“出てきた場所”が問題なんです。遼真が入れたと断定できるのですか?」
隆明が鋭い視線を向ける。
「他に誰が遼真の鞄に触れる? 彼自身以外に考えられるか」
優人は怯まずに言い返した。
「彼は無実です。僕は必ず、その証拠が“仕組まれたもの”だと立証してみせます」
しかし警察署内の空気は、すでに遼真を容疑者と決めつける疑念の渦に飲み込まれていた。
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