第6話 友の弁護
署内の会議室に現れた青年の姿に、真理亜はぱっと顔を輝かせた。
「優人さん!」
――佐伯優人。
遼真の大学時代の友人であり、現在は司法修習を終えたばかりの弁護士見習い。
天城家とも長く交流があり、何度も家を訪ねては食卓を囲み、家政婦の初枝の手料理を「美味しい」と笑顔で食べてきた人物だった。
しかし彼が家族にとって単なる「友人」ではないことを知っているのは、ごく一部だった。
玲子の婚約者――それが佐伯優人のもうひとつの顔である。
「遼真のこと、僕に任せてください」
優人は毅然とした口調で父・輝政、兄・隆明、そして玲子に頭を下げた。
「僕はまだ見習いの身ですが、法の立場から彼を守ります。彼は犯人じゃありません」
真理亜は嬉しそうに頷いた。
「優人さんなら信じられる!」
だが、玲子は複雑な面持ちでその場を見つめていた。
――彼は遼真の味方であり、自分の婚約者でもある。
職務上は冷徹に弟を追い詰めねばならない立場なのに、心は彼に揺さぶられる。
その夜、署を出たあと。
駐車場の片隅で、玲子と優人はふたりきりになった。
「……来てくれて、ありがとう」
玲子の声は、職務の仮面を外した素の女性のものだった。
優人は優しく微笑み、玲子の肩に手を添えた。
「玲子。僕は君の家族も、そして君自身も守りたいんだ。だから必ず遼真を助ける」
次の瞬間、玲子は抑えきれずに彼の胸に飛び込んでいた。
「……優人……」
抱きしめられた温もりに、彼女の肩が小さく震える。
警察本部長としての冷徹な顔はもうなく、ただ恋するひとりの女性がそこにいた。
優人はそっと彼女の髪を撫で、唇を重ねた。
短いが確かな口づけだった。
「大丈夫。信じてくれ」
「……ええ」
ふたりの秘密は、夜の闇に溶けていった。
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