表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/118

第4話 家族の葛藤


 事情聴取を終えた遼真は、重い足取りで留置室に移されるのかと覚悟していた。しかしその前に、警察署内の空気を震わせるような光景が繰り広げられていた。


 警視総監である父・輝政、刑事局長の長兄・隆明、地方警察本部長の姉・玲子。警察組織の中枢に立つ三人が、同じ場所に居合わせたのだ。地元署員はただならぬ威圧感に息を呑み、視線を逸らすこともできない。


 だが、その場の空気を最も苦しく感じているのは、母・美佐子と妹・真理亜だった。


 「お父さん……、遼真は絶対に犯人じゃありません」

 真理亜の声は震えていた。普段は明るくおしゃべりな妹が、必死に涙を堪えて父に訴えている。


 「真理亜……」

 輝政は視線を落とした。娘の必死の想いを理解しながらも、その口調は職務に縛られていた。

 「父親としては信じたい。だが警視総監としては、証拠を無視するわけにはいかん」


 その言葉に真理亜は唇を噛み、椅子の背にすがりつく。母・美佐子が肩に手を置き、静かに言った。

 「……あなた。母親の勘、と言われれば軽いかもしれない。でも、私は信じているの。あの子は嘘をつく子じゃない。何より、人を傷つける子じゃないのよ」


 隆明が口を開いた。

 「母さん、その気持ちは分かる。だが、俺たちは家族であると同時に、警察官でもある。弟を庇えば庇うほど、世間は『やはり怪しい』と見るだろう」


 玲子もまた厳しい表情で続ける。

 「兄さんの言うとおりよ。だからこそ、私たちは正しく事件を追うしかないの」


 家族の想いは交差し、苦悩が深まるばかりだった。

 ――愛する息子を信じたい母と妹。

 ――警察として真実を見極めねばならない父と兄、姉。


 美佐子は両手を胸に組み、静かに呟いた。

 「遼真……あなたは一人じゃない。必ず助けてみせるから」


 その言葉は、暗く重い署内に小さな灯火のように響いた。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——


ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!


その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。

読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。


「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!

皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ