第9話 真実の糾明
寺の本堂に、関係者全員が集められた。
外は冷たい雨が降りしきり、屋根を打つ音が緊張をさらに煽っている。
天城遼真は、井戸から見つかった木箱と古文書を前に置き、静かに口を開いた。
「この事件の真相を、ここで明らかにします」
人々の視線が集まる。
「まず、藤堂氏。彼は古文書の存在を知り、井戸の封印を解こうとした。だから狙われた。
次に早乙女氏。学者として発掘を望み、木箱に手を伸ばそうとした。だから命を奪われた。
どちらも“祟り”ではなく、“人の手”による犯行です」
沈黙の中で、遼真は井戸の脇に吊るされた布を広げた。
「これが亡霊の正体。光を当てれば鎧武者に見える仕掛け。恐怖を演出し、人々を惑わせるために使われた」
誰もが息を呑む。
「そして、この幻影を仕掛けたのは――川村喜兵衛さん、あなたです」
川村の肩が震えた。
「ち、違う……わしは……」
「違わない。あなたは誰よりも強く“祟り”を口にし、恐怖を煽った。夜ごと井戸を見張っていたのも、仕掛けを整えるためだった」
遼真は畳に置かれた古文書を指さす。
「あなたが守ろうとしたのは、井戸ではなく“藤堂家の不名誉を隠す歴史”。それを暴こうとした二人が邪魔だった。違いますか」
川村の顔から血の気が引いた。
「……わしは、土地を守りたかっただけじゃ……。長年、この村で生きてきた者として……」
その言葉は、雨音にかき消されるほど弱々しかった。
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